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今までISO認証の制度を中心にお話を進めてきました。今回から少し違う話題に転じていきますね。
まずその初回は、組織の方にとってのISOに取り組む価値について考えてみたいと思います。
ISOに取り組む価値は、それこそ取り組む人、組織によって様々なものがありますが、極めて大きなくくり方で整理すると2つに分けられます。
その一つ目は、認証取得をすることによって、会社の対外的アピール力が増す、という点です。これは残念ながら大企業の世界ではすでに過去の話になってしまったと言わざるを得ませんが、中小企業の世界であれば、ISOの認証を取得した、となると取引先の見る目が変わる、あそこの会社はしっかりとした会社なんだな、と思っていただける可能性が今でも大いにあります。
中小企業の経営状態も千差万別ですが、組織としての永続性をしっかり意識した組織運営の仕組みを作ることによって、よい経営を実現させていくことがISOマネジメントシステムの大きな目的の一つですから、少々言葉は悪いですが、行き当たりばったりの経営をしているところであれば認証取得は困難です。そのような意味あいを理解の上、ISO認証を取得できれば、取引先だけでなく、社員の方にとっても一つ大きなハードルをクリアした、という安心感と自信をつけることにもつながります。うちなんてとてもとてもISOなんて無理、とはなからあきらめている経営者がいることもまた事実。たとえ社員数10名未満の会社であってもISOの認証取得は可能です。
要は経営者が自社の将来をどのように思い描くか次第なのです。生まれたばかりの若い会社は創業時の困難な段階を乗り越えて、社員数が増えてきたところで是非ISO認証の取得を目指して、自社の対内・対外両方の信用獲得を目指していただきたいと思っています。
さて一つ目のお話がだいぶ長くなりましたが、もう一つのISOに取り組む価値は、組織の経営レベルのアップにつながる、という点です。もう少し具体的言うと、ISO 9001であれば品質に関するマネジメントシステムであることはもうご理解いただいていると思います。製品やサービスに関する提供しているレベルがISOに取り組むことによって大いに上がる可能性がある、という点を意識してください。もちろん認証取得することによって、いきなり売り上げや利益倍増、と言ったような直接的効果がすぐに表れるケースは少ないでしょう。ですが会社にとって大事な基礎体力の強化につながることは間違いありません。ISO 14001であれば環境に関する自社の取り組み(廃棄物の削減や法規制順守度合いの向上など)強化につながる、ということです。
もう少しそこを掘り下げていきましょう。
例えば最近取り組む人がどんどん増えているマラソンへの挑戦で考えてみましょうか。
マラソン大会に出て完走してみたい、と思う人があなたのまわりにもいらっしゃるのではないでしょうか。ではもしあなた自身がその思いを胸に秘めているとしたら、どのような行動計画を立てるでしょうか。
いきなり、東京マラソンへの応募をするでしょうか。いや、東京マラソンだと例がわるいかもしれませんね。何しろ抽選倍率が高くてなかなか毎年応募していても当たらない人も多いようですので、ホノルルマラソンに替えましょう。これであれば基本皆さん参加できるのだと思いますので。
さて、ホノルルマラソンに出たい、休暇もとれそうだ。航空運賃等の渡航費もボーナスを当てれば何とかなるだろう、と外堀がすべて埋まった状態をまずは思い浮かべてください。
そこまで行くと最後は、本当に自分はフルマラソンを完走できるか、その可能性があるか、という自問自答でしょう。途中棄権してもいいや、観光旅行だと思えばよい、という方ももしかするといらっしゃるかもしれませんが、やはりほぼすべての人がまずは完走、そしてもう少し上のレベルの方であればタイムで何時間何分という具体的な目標タイムを設定されるのではないかと思います。
そうすると次は何を考えるかと言えば、その時までの残された期間はどのくらいか。現在の自分の走力(何キロまで走ったことがあるのか、10㎞であれば何分で走ることができるかなどの力)はどの程度のものかの客観的評価。そして具体的目標(完走なのかタイムなのか)をどう設定するか、といったところでしょう。
例えば、30年前の学生時代は体育会所属で体力には自信があったが最近はおなか周りがずいぶん気になってきてしまったなあ、という方と、運動は昔ははほとんどしていなかったのに、最近走ることがすごく楽しくなり、先日ハーフマラソンを2時間切るタイムで走ったという方であればどちらの方が完走の可能性を感じますか。
要は基礎体力の充実と目標達成に向けての意欲、取り組み姿勢の問題をここでは考えていただきたいのです。
少し話がそれてしまいましたね。
マラソン完走という高い目標を持つ意味、そしてその取り組みに必要なものは何かを考えていただくきっかけを提供したつもりでした(えっ、全然そんなようには受け止められなかったって?それはすみません。是非読者の皆様の想像力で理解してくださいませ。m(__)m)
ISOに取り組む価値は、組織の経営度のアップにつながる、というお話を具体的に品質のISO 9001で考えていきましょう。
ISO 9001は組織の製品・サービスの質の保証そしてその継続維持のための組織の仕組みの在り方を示す規範です。あくまでそこに記載されていることは、品質面を大事に考える際に、組織として取り組むべき最低限のことが書かれています。
最低限のことが書かれているとはいえ、その取り組みは一部の人が行えばよい、というものではなく、組織全員で取り組んでほしいことになります。そうなると、そう簡単には組織に浸透しない可能性があります。もちろんその組織がすでに創業から何年も経って継続しているのであれば、お客様の支持がある状態を作り上げ、維持できているわけですから、品質面に関する組織の経営レベルは既に一定のもの以上のステージにあることは間違いありません。ですが大事なことは、その時点では問題ないとしても、将来にわたって本当に大丈夫か、という点です。
もちろん将来のことはだれも予測がつきません。ですが、リスクを減らして、より確実性を増したうえで、明るい未来を期待したいのが人情であり、すべての経営者の願いです。そのために、可能性を少しでも切り開きたい、リスクを少しでも減らしておきたいわけです。そこにISO 9001に基づく品質マネジメントシステムの構築意義があるのです。
また仕組みを構築するだけでなく、ISOの認証を取得するには、その構築した仕組みに関して自分たち自身の手で状況確認をする内部監査、そして経営者自らが自社の運営状況を確認するマネジメントレビューを行わなければ認証の取得はできません。多少強制的にやらされる、という面は否めませんが、何も制約がなければついつい後回しになったり、だいたいわかっているからいいや、ということどうしてもなってしまう場合があります。認証を取得したり維持したりする場合は、そんな甘えは一切許されませんから、経営者にとっても大事な刺激になるわけです。だからこそ、お金はかかりますが、多くの組織が第三者認証の取得をしているわけです。
以上、3回に分けてお話ししてきました「ISOの認証を取得するといいことあるの?」について、感じ取って頂けましたでしょうか。ISOの認証取得がトランプゲームでいうオールマイティなもの、というわけではありませんが、間違いなく世の中の多くの組織が認証取得をするだけの価値はあります。
経営をどのように行っていけば自社の永続性に自信が持てるようになるか、そのような疑問を持った管理者、経営者の方には必ず触れて欲しい国際社会の中で最も活用されている経営支援ツールがISOマネジメントシステムなのです。