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ISOフォーカス: 持続可能な消費の基準を上げることについての説明をお願いしたい?
事務局長:ISO20400は、私達が商品及び資源を生産及び消費する方法を変え、持続可能な消費を実現しやすくするのにどのように役立つのだろう。会社は製品を売る事業を営んでおり、それらの製品の消費者は金額に見合う最高の価値を望むが、このことは、すでに枯渇させられていた天然資源及びサプライ・チェーンの透明性に負担をかける。さらに繁栄し、回復力の早い世界のための国連(UN)の青写真(詳細な計画)である持続可能な開発目標(SDGs)は国際社会には大いに必要とされている。二酸化炭素排出量,石炭火力発電所による汚染、海洋を塞ぎ、海産(海洋)動物を殺すプラスチック廃棄物、森林破壊、溶ける北極の氷、気候変動、都市化等、例を挙げればきりがないが、それらが環境に計り知れないほどの被害であることもあれば、壊滅的な被害をもたらす可能性があることに気付いていない人はほとんどいない。これらの問題は環境だけでなく経済に関する問題であり、将来の私たちの幸福に大きな脅威となる。世界経済フォーラムのグローバルリスクリポート2018によると、経済的背景が改善されたにもかかわらず、世界的成長を「促す」兆しが最近見えているため、自己満足(安心)している余地はない。その報告書は、特に第4次産業革命の新しいテクノロジーの経済への影響への懸念、及び環境保護において進歩がないことへの懸念を浮かび上がらせている。
ISOフォーカス: SDGの経済モデルについてはどう考えますか。
事務局長:国連の持続可能な開発目標の目標12は、持続可能な消費・生産パターンを確保することである。国連の言葉では、「「目標12を達成するには、危険[有害]な化学薬品及び危険[有害]廃棄物の管理に関する国際的な基準[規範]の順守とともに、国のセクター別計画、持続可能なビジネスプラクティス及び消費者行動に組み込む持続可能な消費・生産の強固な国の枠組が必要である。」と述べられている。
国際貿易組合連合(ITUC)の書記長であるSharan Burrow氏はこの考えを強めた。彼女は、今年の1月ダボスで、多くの企業のCEO達がSDGs及びパリ協定に関与しているにもかかわらず浸透している経済モデルが全世界の従業員の役に立っていないと警告した。ユニリーバは、その活動の中核に持続可能性を据えるグローバルな消費財会社であるが、そのCEOであるPaul Polman氏は、ガーディアンのリポートにおいて、SDGsは「絶好の(一生に1度の)経済的機会(ビジネス・チャンス)」を提供し、企業(事業)目標の中核をなし、投資決定において中心的役割を果たすにちがいないと述べた。ユニリーバの「持続可能な生活」ブランド(持続可能性をブランドの目的と製品に組み込んでいるブランドとユニリーバが定義する)は、「それ以外より30%速く」成長していると彼は言う。
ISOフォーカス:中小企業は開発目標、特にSDG12を、市民だけでなく会社自身にも価値を提供する持続可能性戦略にどのように統合できますか?
事務局長:ISO20400は持続可能な調達のために開発された世界的なガイダンス規格である。ISO20400はISO26000と整合しているが、それは社会的責任の7つの中心分野(組織のガバナンス;人権;労働のプラクティス;環境;公正な経営のプラクティス;消費者問題;地域社会参加及び地域開発)に言及してSDGsに関連した450の提案をしている。他の分野にも進歩があった。あなたの家の近くの通りに直販店があるアメリカのファーストフード会社であるマクドナルド社は、イギリスで使い捨てのプラスチックストロー(BBCによると、イギリスだけで年850万本を使う)を減らす計画を発表し、代わりに紙のストローを使うことを考えている。イギリスではまた、JD Wetherspoonのパブのチェーン店が今年の初めにプラスチックストローを使うのをやめた。
しかし、最終収益を監視している中小企業(SMEs)は、どうやって地球のみならず収益をも守るのか?
ISOフォーカス:ISO20400の中小企業にもたらす利益をどう考えますか?
事務局長:これをじかに経験したのはA2 Consultingの創立者でありCEOであるJacques Schramm氏である。A2 Consultingは、従業員約100人で主にフランスで業務を行っているSMEであり、組織の変革が専門である。Schramm氏は4年間、ISOプロジェクトの議長の任務についていた。それを彼は「小さい組織のための大きな努力」と言う。彼はそれがフランス市場での評判の点でA2コンサルティングに役立ち、クライアント獲得を容易にしていると思っている。Schramm 氏は言っている。「私達は、フランス市場で新規格を促進することに非常に積極的で、どのくらいの数の官民の大企業がISO20400を知っているか、それらがどのくらいISO20400のガイドラインを適用しているか、ISO20400の会社の社会的責任が社会にどんな影響を与えるかを毎年測る(判断する)ためのフランスのISO20400の指標バロメーターを作った。」
さらに彼は、ISO20400はSDG 12だけでなくISO26000とも整合していると説明する。こうした理由から、ISO20400は世界中に責任のある消費及び生産をイギリスで促進する責任を担っている組織である国連環境計画(UNEP)から全面的な支援及び作業グループへの参加を受けた。
ISOフォーカス:ISO 20400がもたらす利益についてもう少し教えてください。
事務局長:ISO20400、持続可能な調達-ガイダンスは、サプライ・チェーン全体にわたって倫理行動の原則を定義し、社会的責任に関するISO26000のセクタ(業界)別の適用に役立つ。当規格は;
- ・サプライ・チェーンのセキュリティ(すなわち、製品の回収または供給者の失敗)を保証する。
- ・金融、環境、及び評判のリスクを防止する。
- ・投資者と消費者の信頼を助長する。
- ・従業員の快適な暮らしを促進する。
- ・製品とサービスの新市場の開拓に貢献する。
ことで、社会に貢献する。
ISOフォーカス:ISO20400は変革をすることでリスクを持ちませんか?
事務局長:UNEPはISO20400を大規模な購買組織のための貴重なツールとみなしている。組織のビジネス状況及び背景からSDG 12の目的を含むことを優先させることができるのであれば、ISO20400は、購買組織がSDG 12の目的を含めた適切な購入方針を確立する助けとなる。それにうまく取り組めば、購入の再設計、ライフサイクル分析、廃棄物リサイクル、及びビジネス・モデル変換を通じてリスクを機会に変えることになり得る。従って、この問題を組織の戦略の柱と考えている先進組織もある。
SDGsは、2001年に各国政府の合意を得たミレニアム開発目標(MDGs)を受け継ぎ、それに基づいている。イギリスはMDGsを「史上最大級の成功を収めた貧困絶滅運動(活動)」と呼んだ。しかしながら、SDGsの達成に関して取り組むのが遅くなってきていると主張する人もおり、昨年のガーディアンのリポートでは、専門家が経済機会(ビジネス・チャンス)を指摘しているにもかかわらず、SDGsの採択から一年、大部分の会社は取り組んでいなかった。
ISO20400が本当に有益であるためには、世界中で実行して、世界中のますます複雑化する組織に組み込まれなければならない。規格の利用を効果的に推進することが、特に国家の状況からみると、この課題に対処する最善の方法である。
国際協力及び世界各国の経験を共有することが規格を促進する鍵でもある。ISO20400の開発においてイギリス及びオーストラリアの代表団を指導した、持続可能な調達が専門の小さなコンサルタント会社 Action Sustainabilityの取締役McCarthy氏は、「コストの削減、 より多くの仕事の獲得、株主の信頼の向上、よりよい顧客との関係、及びリスクの低減 」などの大きな恩恵の報告をクライアントから受けていると話す。
ISOフォーカス:ISO20400のガイダンスを用いた行動計画の開発を支援しますか?
事務局長:世界中のほとんどの組織は、サプライ・チェーンを通じて配送するものの大半を配送する。従って、サプライ・チェーンが役に立たなければ、SDG 12、または多くの他のSDGsを実現することは不可能である。その上、ISO20400は、組織に持続可能な調達を確立するための構造も与える。短期的には、 組織には明確な目標がなく、組織の方針をサプライ・チェーンが応じることができる言語に翻訳できる能力もない。組織は、サプライ・チェーンにとって有意義な方法でそれらを優先することもできないが、ISO20400は、組織の目的につながる“golden thread”「貴重な道筋」を提供する。
ISOフォーカス:ISO20400は質の高いガイダンスといわれていますが?
事務局長:力量を保証し、サプライ・チェーンの競争力を維持するために、長期的にはサプライ・チェーンの能力を開発(強化)する必要がある。これに投資できなければ競争は減って、価格は上がる。つまり持続可能性にはそれ以上かかるはずはないが、悪い調達にはかかる。ISO20400はこの分野の質の高いガイダンスを提供する。私たちは供給者に無意味なアンケートを浴びせるだけでなく、供給者が実際に配送するものを測る必要がある。。ISO20400のパフォーマンス測定に関するガイダンスは、これを達成しようとしている組織には非常に役に立つ。調達規格の助けを借りれば、小さい組織が大きな影響を及ぼすことができることは明らかであり、より持続可能な未来に望みがもてる。
ISOフォーカス: ISOフォーカス最新版(2018年10月)では持続可能な開発の世界的目標を取り上げていますが?
事務局長:クリーンな水及び衛生(SDG 6)、手ごろな価格でクリーンなエネルギー(SDG 7)、適正な労働及び経済成長(SDG 8)、産業、革新及びインフラ(SDG 9)、持続可能な都市及び地域社会(SDG 11)、信頼できる消費及び生産(SDG 12)及び気候行動(SDG 13)などの極めて重要なSDGsを見る(考える)が、それらすべてが最終的にISO規格に対する需要を浮き彫りにしている。
SDGsが早く達成できるように、ユーザーやステークホルダーが国際規格をどのように用いているかの具体的な例が提示されている。
この特別版の記事は、変化をもたらす規格の力(能力)だけでなく今日私達の世界に直面している重要な問題のいくつかに取り組むための多数のレンズを与えてくれる。独立した非政府組織としてISOは、革新を支える役に立つ規格を定義する重要な役割を果たす。これは結果を早く出すための基本となる。
貧困を撲滅し、地球を保護し、すべての人々が平和と繁栄を享受するための世界的実施要請である別名グローバル目標として知られている持続可能な開発目標(SDGs)の達成にISOの規格が役に立つことができる。持続可能な開発のための2030アジェンダを実現する役に立つ国際規格の広範囲に及ぶ使用を支持する。
次回に続けます。