第10回

「私とマネジメントシステムそしてISO」の第10回目です。第5回に述べたTQC特徴6項目について話が進んでいます。
TQC特徴6項目とは、第5回目でお話しした次の6項目です

5.1 全員参加の品質管理
5.2 品質管理の教育・訓練
5.3 QCサークル活動
5.4 QC診断
5.5 統計的方法の活用
5.6 国家的品質管理推進活動

5.1については、

(1)PDCAサークル
(2)班別研究会
(3)方針管理
(4)機能別管理
(5)品質保証

まで、お話は済みましたので、今回は(5)「品質保証その2」をお話しします。

1) 品質は工程で作り込む
品質保証は、歴史的に検査によって実施すること、検査体制を構築することから出発しました。しかし、製品には検査だけではチェックできない多くの項目があります。複雑な製品になればなるほど、複雑な検査装置が必要になるし、破壊検査、性能検査、信頼性検査等検査だけでは品質保証することは不可能でかつ不経済です。検査に頼ると結局は検査員の数が増加し、不良を発見すれば手直しの要員が必要になり、コストが上がり経営を圧迫する要因を作ることになります。
日本では戦後TQCが始まって直ぐにこの検査による品質保証の不合理に気付き、工程能力を分析、向上させることで、工程を流れる全製品を良品とする研究に力を注ぎました。この考え方が、「品質は工程で作り込む」という日本式TQCの合言葉となっていきました。

2) 源流管理
やがてこの「品質は工程で作り込む」という製造部門の力だけでは、顧客ニーズに合致させるには限界があることが分かってきました。不良品や手直し品を作らないためには、製造工程の力もさることながら、開発プロセス、設計プロセスでの品質保証を強化することが必要であることに視点が広がっていきました。新製品開発、設計、試作、試験といった業務フローの川上での品質保証活動が重要視されるようになっていきました。 組織の市場でのクレームを分析してみると、どこの工程が原因となったかが分かります。クレームには顧客への弁償が付きものですが、金額の大きなクレームは、開発、設計が起因となっているものが多くあります。源流管理では、大きく影響を与えることになる開発、設計工程で問題を出さないようにすることが効果的であるとして焦点が当てられるようになりました。

3) 再発防止
品質保証で大切なことは同じ問題を2度起こさないことです。市場からのクレームに対策を取ったつもりが、しばらく時間をおいてまた同じ問題を起こしてしまう、というケースがよくあります。日本式TQCでは次の3段階を再発防止策と考えています。
①出た現象を除去する。
②原因を除去する。
③根本原因を除去する。

①は別名、応急処置と呼ばれるもので取りあえずクレームに対して間に合わせ的な手を打つことをいいます。②はなぜそのクレームが起きたかの原因を調査し、その原因を除去します。普通はそこまで実施すればよいのではないかと考えますが、③はもう一歩深く原因を追求して根本的な原因までに手を打つことを主張しています。このことをもって、「なぜ、なぜ、は5回繰り返せ」といわれたものです。ISO9001:2015の箇条10の要求事項と全く同じことが45年も前に日本では取り上げられているのです。

4) 重点志向
 QC7つ道具にパレート図というものがあります。統計的方法の活用の一つで、要は項目別に頻度を数えてグラフにしたものです。例えば、クレーム対策を推進する上で何から取り組むのかというと、当然のこととして一番頻度の高い項目から取り組んでいくのが常識です。つまり多くある軽微なもの(trivial many)より、少数の重要なもの(critical few)を選んで対策を打つことを「重点志向」といいます。 目の前にあるものを総て取り上げてみても、エネルギーをかけただけの効果は得られないでしょう。パレート図を作成してみて、一番頻度の大きいもの、すなわち重点的に取り組むべきものを優先的に取り上げて、それから処置していく考え方を重点志向と呼んでいます。

5) 次工程はお客様
 最終商品が消費者に満足してもらうためには、その製品に関係するすべての職場、すべての人の協力が必要です。自分の作り出したものの受け手は、例えその人が社内の人(次工程)であってもお客様と考えて、その人に喜んでもらえるように自分の仕事をきちんと品質保証しようという考え方です。同時に、社内の次工程であるお客様は、前工程に対してデータ、事実に基づいた合理的な要求をすること、も忘れてはならないことです。 この概念は後年、ISO9000の「顧客は、組織の内部又は外部のいずれでもあり得る」という考え方に繫がりますが、久米均は2004年8月の「標準化と品質管理」で、ISO9001審査登録を巡っての品質不祥事について次のように述べています。
「“次工程はお客様”というのは“次工程もお客様”ということであって、“次工程だけがお客様”といっているのではない。本社を顧客とする内部顧客の考え方は企業内部の論理として通用するかもしれないが、その企業の外にいる本来の購入者から見れば、顧客を無視した企業の勝手な論理である。ISO9000では顧客をどのように定めるべきかの規定はない。しかし、だからといって本来の顧客を無視し自分たちの都合に合わせて顧客を定めていることは、企業として真剣に品質マネジメントシステムの構築を目指しているとはいえないであろう。」

以上