2019年にJIS Q 19011が発行されましたが、認証審査においてはこのJIS Q 19011に沿って内部監査を行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。なお、以下の文中ではJIS Q 19011:2019をISO19011:2018と表記しているところがあります(JIS Q 19011:2019はISO19011:2018の翻訳規格)。

B:内部監査の計画
ここでは内部監査の計画段階の質問を扱います。

【質問5】
「監査基準」の定義には次のように書かれています。
「 客観的証拠と比較する基準として用いる一連の要求事項。」
客観的証拠とは何でしょうか?

【回答5】
客観的証拠とは、内部監査員が確認したいろいろな事項の裏づけになるものを言います。内部監査員が問題視したことは、そのまま指摘事項にはなりません。内部監査員にも思い込みや、事実誤認や、要求事項の間違った解釈もあり得ますので、あくまでも問題視しただけであって、それが客観的なことであることを立証するには証拠が必要になります。内部監査の最終場面では、内部監査員が問題視したことを被監査部署の責任者に説明し、責任者から同意を得なければなりませんが、その時に客観的証拠が明確になっていることが内部監査を効果的なものにします。

客観的証拠には、①監査員が確認した被監査部署の記録 ②監査員がインタビューで得た責任ある人の説明 ③監査員が見聞した現場の状況などがあります。
① は、内部監査員と被監査部署とが比較的容易に同意し易い客観的証拠です。
② は、これも被監査部署とは比較的容易に同意し易い客観的証拠ですが、説明者の責任レベルによっては同意に至らない場合もあります。また、言った言わないというあいまいさもあります。
③ は、現実に行われていた事実ですから客観的証拠としては強いものです。

内部監査員が問題視したことは、被監査部署の同意をもってして指摘事項(不適合と呼ばれる場合もある)となります。内部監査における不適合を構成するものには、2つの要素があります。1つ目の要素は、おかしいと思い問題視したことの事実を裏付けるもの、すなわち客観性証拠です。2つ目の要素は、客観的証拠が問題であると判断できる基準(監査基準となる要求事項)です。内部監査では、この2つが明確であることが重要で、特に監査の後に続く改善活動においては、監査基準にどんなことが要求されているのかが改善の足掛かりになることから最重要項目であるといえます。

今回の回答のまとめです。
内部監査員が「おかしい」と問題視したということは、そこに何らかの問題が横たわっている可能性が高いとみることが総じて適切です。被監査部署と問題であると同意する際の裏付けになるものが「客観的な証拠」です。

JIS Q 19011:2019の該当する部分(抜粋、赤字は筆者追加)
箇条3.8
あるものの存在又は真実を裏付けるデータ。 注記 1 客観的証拠は,観察,測定,試験又はその他の手段によって得ることができる。
注記 2 監査のための客観的証拠は,一般に,監査基準に関連し,かつ,検証できる,

記録,事実の記述又はその他の情報から成る。
(出典:JIS Q 9000:2015 の 3.8.3)
A.8 組織の状況の監査
これを確認するために,監査員は,次の事項に関係する客観的証拠を考慮することが望ましい。

a) 使用したプロセス(群)又は方法(類)
b) 使用したプロセス(群)に寄与している個々人の適切性及び力量
c) 使用したプロセス(群)の諸結果
d) マネジメントシステムの適用範囲及び策定を決定するための,使用したプロセス(群)の諸結果の適用
e) 必要な場合,組織の状況の定期的レビュー

A.10 リスク及び機会の監査
監査員は,次の ステップに従って活動し,次の事項のような客観的証拠を集めることが望ましい。

a) 組織がそのリスク及び機会を決定するために用いるインプット。
これには,次の事項を含めてよい。

- 外部及び内部の課題の分析
- 組織の戦略的方向性
- 組織の分野固有のマネジメントシステムに関係する利害関係者,及びそれらの利害関係者の要求事項
- 潜在的なリスク源,例えば環境側面及び安全ハザードなど

b) リスク及び機会を評価する方法,
これは分野及び業種の間で異なり得る。 組織のリスク及び機会に関する対応は,組織が受容することを望むリスクのレベル,及びそれをどのように管理するかを含め,監査員による専門的な判断の適用を必要とする。

(次号へつづく)

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