3.ISO9001審査員に求められる力量とは

ISO9001審査員にはどのような能力が求められるのでしょうか。頭が良いこと?他人の悩みを聞き出すのが上手なこと?細かいところによく気がつくこと?審査員に求められる力量を、JIS Q 19011(マネジメントシステム監査のための指針)に沿ってお伝えします。

【どういう人が審査員にふさわしい?】

その内容を大きくまとめると、①知識、②技能、③人間性の3つになります。“知識や技能についてはわかるけどなぜ人間性が求められるの?”と疑問を感じるかもしれませんが、審査員の言葉にはそれだけの重みがあるからです。審査を受ける側は審査員の指摘に何らかの対応をしなければなりません。もし審査員が他人の話を聞かず自分の意見を押し付けてきたり、平気で約束の期日を違えたりするような人だったらどうでしょう。審査を受ける側は余計な作業負担、心理負担を強いられることになり、大変不幸だと思いませんか?そこで審査員を目指す人がその資格にふさわしい人間性を備えているか、コースを通じて評価しています。
なおJIS Q 19011には審査員として備えるべき要件として書かれていますが、ここでは審査員コースの中でどういう評価を受けるのか、どうすれば審査員にふさわしい力量があるとみなされるか、ということを書きたいと思います。

① 知識
マネジメントシステムの規格や審査の進め方をよく知っていることを言います。どのぐらいの知識があるかを見るために、ISO9000審査員研修コースでは最後に筆記試験を行います。そこで100点満点中70点以上の得点で合格と判定、その知識があると認められます。

② 技能
審査をきちんと進められることを言います。それができるかどうか、実際の組織で判定することはできないので、模擬審査を始めとした演習を通じて判断します。模擬審査は審査員コースの4日目に行いますが、そこで審査の専門家として、毅然とした態度で、被審査組織からのプレッシャーに負けず、証拠に基づいた指摘をしっかりとできるかどうかを見ています。この他にも、審査の重点がずれていないか、十分な調査を行っているか、正確に報告しているかなど、JIS Q 19011 4項(監査の原則)の観点で評価しています。

③ 人間性
JIS Q 19011 7.2.2項(個人の行動)に次の13項目が定められています。倫理的/心が広い/外交的/観察力/知覚が鋭い/適応性/粘り強い/決断力/自立的/不屈の精神/改善に前向き/文化に敏感/協力的。これらの要素が備わっているか、研修中の姿勢で判断されます。

【受講中はどういうところが評価されるの?】

テクノファの審査員研修コースは上記を満たすことをコース修了の条件としています。

①の筆記試験はJRCA統一試験のため、JRCAから提供を受け、終了後JRCAで採点します。②の技能(実技)評価や③の人間性評価は、講義を行う講師がその場で公正に判断して点数をつけます。なお、講師も常に監視測定を行って力量を判定しており、すべての講師は適切な判断をする力量を備えています。

②の技能(実技)評価はJIS Q 19011の4項(監査の原則)に基づき、以下の4項目について、A~Dで評価することになっています。

・公正な報告
・専門家としての正当な注意
・独立性
・証拠に基づくアプローチ

4項目中Dが一つもなく、かつCが2つ以上ないというのが合格基準です。たとえば模擬監査のときに、思い込みによる審査をしていないか、持論を押し付けず被審査組織(コース中は講師が担当します)の言うことをしっかり聞いているか、被審査組織の圧力に屈していないか、客観的な証拠をきちんと示して説明できているか、といった点を見られます。
③の人間性評価は、継続的観察評価として13項目につきA~Dで評価し、13項目中Dが一つもなく、かつCが4つ以上ないというのが合格基準です。コース全体を通じて評価、判定されます。たとえば、講師の話をしっかり聞いているか、グループで課題に取り組むとき他人の意見を尊重できているか、状況に合わせ柔軟な対応ができるか、積極的に取り組んでいるか、あきらめず責任感を持って行動しているか、といった点を評価されます。

以上のように合格基準が定められていますが、“審査員になるって大変!”と思った方がいるかもしれません。規格を十分理解するだけでなく人間性も優れていなければならず、“果たして合格できるのか”と不安になった方もいるでしょう。しかし、規格の理解についてはしっかりした準備をして臨み、コース内で積極性を持って、真剣に講師の話を聞けば大丈夫です。人間性については多くの方が普段から会社の中で行っている通り、誠実に公正に行動していただければ問題はありません。ただ、優れた審査員になるためには、合格後もすべての面で努力を怠らないことが求められるといえるでしょう。

(次号へつづく)

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