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2019年にJIS Q 19011が発行されましたが、認証審査においてはこのJIS Q 19011に沿って内部監査を行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。なお、以下の文中ではJIS Q 19011:2019をISO 19011:2018と表記しているところがあります(JIS Q 19011:2019はISO 19011:2018の翻訳規格)。
C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。
【質問13】
ISO 19011には「個人的な行動」についての要求があるそうですが、それについて教えてください。
【回答13】
前回質問の後半についてお答えします。質問はJIS Q 19011:2019の箇条7.2.2 「個人の行動」に書かれていることだと思います。
「監査員は,箇条 4 に示す監査の原則に従って活動するために必要な特質を備えていることが望ましい。 監査員は,監査活動を実施している間,専門家としての行動を示すことが望ましい。望ましい専門家としての行動には,次の事項を含む。」 として、a.からm.まで13項目の個人の行動を上げています。
a) 倫理的である。
b) 心が広い。
c) 外交的である。
d) 観察力がある。
e) 知覚が鋭い。
f) 適応性がある。
g) 粘り強い。
h) 決断力がある。
i) 自立的である。
j) 不屈の精神をもって活動できる。
k) 改善に対して前向きである。
l) 文化に対して敏感である。
m) 協力的である。
この個人の行動は、7.2.2 「個人の行動」本文中に書かれているように「望ましい」ものであり、13項目どおり行動しなければならないという強い要求ではありません。
ただ、ISO19011:2002(初版)の該当するタイトルは「資質」というタイトルでした。資質の言語は“attributes”であり、英語のattributesには生まれながらに持っているというニュアンスがあります。初版(2002年)では、きちんとした監査はa)~m)のような性格の人でないと務まらない、すなわち客観的で、公平で、事実に即した監査結果は導き出せないと考えられていました。確かに公的な、例えば税務署の監査は文字通りそうだろうと思います。
ただ、QMSの内部監査員にそこまでの性格の人でないといけないとは、とても言えないということで、2011年版からは資質ではなく個人的な行動とタイトルが変更されました。
回答のまとめです。
JIS Q 19011:2019箇条7.2.2「個人の行動」のa)~m)に書かれていることは、監査員に対しての推奨であり、望ましいこととして書かれています。監査員はa)~m)のような行動をとることが理想的ですが、a)~m)については一般的な表現で書かれており、どの程度までの行動を期待するかは書かれていません。
「JIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋、赤字は筆者追加)
7.2.2 個人の行動
監査員は,箇条 4 に示す監査の原則に従って活動するために必要な特質を備えていることが望ましい。 監査員は,監査活動を実施している間,専門家としての行動を示すことが望ましい。望ましい専門家としての行動には,次の事項を含む。
a) 倫理的である。すなわち,公正である,信用できる,誠実である,正直である,そして分別がある。
b) 心が広い。すなわち,別の考え方又は視点を進んで考慮する。
c) 外交的である。すなわち,目的を達成するように人と上手に接する。
d) 観察力がある。すなわち,物理的な周囲の状況及び活動を積極的に観察する。
e) 知覚が鋭い。すなわち,状況を認知し,理解できる。
f) 適応性がある。すなわち,異なる状況に容易に合わせることができる。
g) 粘り強い。すなわち,根気があり,目的の達成に集中する。
h) 決断力がある。すなわち,論理的な理由付け及び分析に基づいて,時宜を得た結論に到達することが できる。
i) 自立的である。すなわち,他の人々と有効なやりとりをしながらも独立して活動し,役割を果たすことができる。
j) 不屈の精神をもって活動できる。すなわち,その活動が,ときには受け入れられず,意見の相違又は 対立をもたらすことがあっても,責任をもち,倫理的に活動することができる。
k) 改善に対して前向きである。すなわち,進んで状況から学ぶ。
l) 文化に対して敏感である。すなわち,被監査者の文化を観察し,尊重する。
m) 協力的である。すなわち,監査チームメンバー及び被監査者の要員を含む他の人々とともに有効に活動する。
(次号へつづく)
ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから