内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。

【質問23】
監査員の分野固有の知識、ISO9001品質マネジメント監査をするときの知識について教えてください。

【回答23】
ISO9001品質マネジメントシステムを監査するときの知識には次のものがあります。
1、ISO 9001規格
ISO 9001規格のことを知っている必要があります。ISO 9001規格は1987年に制定されましたが、この規格はマネジメントシステム規格としての最初の規格です。その後、ISO14001規格をはじめ多くのマネジメントシステム規格が制定されていますが、最初に制定されたという意味で多くのマネジメントシステム規格のベースとなっています。

2.TQM(Total Quality Management)の知識
組織の品質マネジメントシステムを監査する上で必要な知識は品質管理に関する知識(TQMの知識)です。かって、JAB(日本適合性認定協会)が品質マネジメントシステム審査員の資格を付与する際に「品質管理5日間」の研修を義務付けていた時期がありました。

日科技連から出版されている「TQMの基本」(中條武志・山田秀編著)から、必要な事項を拾ってみると次のような項目が上がります。

 ・TQMのフレームワークと基本原則
 ・品質保証のための活動要素
   -品質保証がTQMにおいて果たす役割
   -新製品開発管理
   -プロセス保証
 ・変革・改善のための活動要素
   -方針管理
   -小集団改善活動
   -品質管理教育
 ・維持・安定化のための活動要素
   -標準化
   -日常管理
 ・TQMのツールボックス
   -QC7つ道具
   -新QC7つ道具
   -基本統計量とグラフ
   -工程能力指数
   -検定・推定
   -相関分析
   -回帰分析
   -実験計画法
   -田口メッソド
   -多変量解析
 ・品質・信頼性手法
   -品質機能展開
   -FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)
   -FTA(Fault Tree Analysis)
  -エラープルーフ化
 ・プロセス標準化手法
   -プロセスフローチャート
   -QC工程表
   -管理項目一覧表
   -作業標準書
   -能力・技能評価シート
   -5S
 ・改善の手順

TQMの知識の知識は上記のように多岐に渡りますので、すべての知識を保有することは困難な場合が多いかもしれません。しかし、時間がかかっても、あるいは深く知らなくても概要を知っていることは内部監査員(品質分野)にとって必要な事であると思料します。

3.プロセスアプローチの知識
上記2.TQM(Total Quality Management)の知識の最後に「プロセス標準化手法
-プロセスフローチャート」が書かれていますが、プロセスフローチャート(PFC :Process Flow Chart)を作成するには、プロセスアプローチの知識が必要です。ISO9001規格の知識と重複しますが、ISO9001:2015箇条4.4に規定されていることをまず理解します。

そして、要求事項に書かれている「必要なプロセス」を個人或いはグループが管理できる大きさにまでプロセス(業務活動)を分解する知識が必要です。
 市場調査、商品企画、設計、生産技術、購買、製造、品証、アフターサービスなどの上位のプロセスは、3,4回位分解しないと個人が管理する大きさになりません。

(次号へつづく)

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