044-246-0910
7.8 プロセス管理
ネジメントシステムは、組織全体で活用していってこそ初めて強みを発揮していくものです。ある部門で一生懸命仕事をしても、そのあとの部門がいい加減な仕事をしては前の部門の成果は台無しであると共に、会社としての評判は下がることはあっても上がることは決してありません。会社は複数の人、部署での仕事の結果としてアウトプットがあります。アウトプットは製品であったり自社としての情報発信であったり、法令順守ができていることであったりと、多岐にわたります。あなたの仕事もその観点から見れば、多くの方が社内の誰かから仕事を受け取って、社内の誰かに仕事を引き継いでいきます。
図表7-1に極めて簡単な組織の仕事のつながりを示しました。お客様からある要望を受けてそれを社内でAからGという業務に区分けして担当を割り振って、お客様にモノをお届けする、という流れです。
この時例えばあなたは仕事Cの担当者としましょう。
そのときあなたは自分の仕事Cを一生懸命やって決められて期限までに決められた内容の仕事を成し遂げて仕事Dを担当する人に引き渡せば義務を果たすことになります。
ではこれで十分かどうか、ということです。
入社して日が浅い内はこれで十分です。でも1カ月、2カ月と経ってきた段階であればここからだんだん成長していくことが望まれています。
前後の工程(仕事Bと仕事D)はどのような内容の仕事を何に注意して行っているのだろうか。そもそも仕事Aから仕事Gまではどのように流れているのだろうか。
お客様とは誰で、そのお客様はどのようなことを要望されているのだろうか。以前買ってくださり、リピートオーダーならば、前回の取引では満足いただけたのであろうか、ということに気を配ることができるようになることを期待されています。
このプロセス管理の基本への理解が深まっていくと、社内と色々な人と仕事の話ができるようになります。簡単なこととは言いませんが、組織内での仕事の流れがどのようになっているかをできるだけ早くつかむように心がけてください。
そして実際の仕事は図表7-1のように一直線であらわされるケースはむしろ少ないのが実態です。仕事の流れはあちこちに分かれ関連している状態が一般的です。図表7-2に実際の仕事の流れに近づけたプロセス図を示しておきます。
このような自分の会社の仕事の流れの全体像がつかめるようになるには少々時間を必要とするでしょう。焦ることなく、まずは前述したように自分の足元をしっかり見つめて、自分の仕事を確実にこなすことができるようになる、その過程で自分の仕事の前後の工程(プロセス)への理解を深める。それができるようになったら更にその前後の工程(プロセス)、つまりそれは他の部署の仕事、ということになりますが、そのようにしてどんどん枠組みを広げることができると、会社の中の大きな流れ、動きが掴めるようになってきます。あなたの会社の規模にもよりますが、それがだいぶわかってきたな、と感じられる時期が入社してから1年くらいで訪れてくれれば、順調に仕事、そして会社に馴染んできている、と言ってよいでしょう。社員数が何千人、何万人もいるような大手企業であれば、1年でも社内の業務の全貌を掴むには厳しいでしょう。大企業にお勤めであればそこはあまり焦らず、取り組んでいってください。
さて、いよいよ最後の説明になります。
人間が行う仕事は、一生懸命気をつけたとしても、常に間違うことなく、正しい内容で行うことが100%保証できる、とはなかなかいきません。問題ないというレベルの仕事のであってもバラツキ、というものは必ず存在します。
マネジメントシステムは、人に常に100%完璧を求めるものではなく、人はミスをする可能性がある、ということへの気配りがしっかりできているものでなければなりません。マネジメントシステムの基本的理念は、ミスがお客様に迷惑をかけることがないように、監視測定や検査を行ったり、内部監査やマネジメントレビューを行うことによって、自社の経営の目的を達成することにあります。ミスが起きても誰か特定の人に責任を負わせることがないように考えられたものです。
バックアップがしっかり考えられている、と思って構いません。
とは言えもちろん、あなたが自分の仕事を適当な気持ちで行い、それを誰かが直してくれるだろう、というような気持でいたとしたらそれは論外です。どんなに集中して一生懸命仕事をしたとしても、ミスに気付かずに仕事を次に回してしまう、というリスクを抱えてのが人なのです。
そしてISOマネジメントシステムが定める是正処置、というものは、ミスが起きた場合には、直ちに応急処置を取ると共に、二度とそのミスが起こらないように、仕組みの強化を図りましょう、というものです。
起きてしまったミスは仕方ありません。しっかりとして反省は必要ですが、その反省を特定の個人だけがすればよいわけではなく、二度とそのミスが起きないように周りのバックアップ体制の強化を図ることが組織自身の力量向上につながる、という考え方で、ミスが起きた原因を深掘りしていきます。
これが是正処置に取り組む時の最も大事なポイントです。
なぜミスが起きたのか、その原因を「なぜ?」「なぜ?」とできれば複数の人が集まって検討していくことによって、自分たちの仕組みの弱点が浮き彫りになってくるのです。なぜなぜ分析、という言い方をよく使います。その手法の解説は別な機会に譲りますが、これからあなたはおそらくいろいろなミスを仕事上でしてしまうでしょう。ミスをしてしまったら、まずは真摯にそのミスを認め、上司や迷惑をかけた方に心よりお詫びをする、これが第一です。
その上で、お詫びをしたからこれで一件落着、ではなく、自分はなぜそのミスをしてしまったのか、自分の単なる不注意か、自分の仕事のやり方がわるかったのか、という視点で自分自身を見つめ直し、直すべきところはしっかり直すことが大変重要です。決してここで他人のせいにしてはいけません。
そしてその上で、仕事のやり方を変えることが大抵必要ですが、周りの人を巻き込んで仕事の仕方を変えると、自分だけでなく他の人にとってもミスをする可能性が低くなると思えるようであればぜひ上司に提案しましょう。
「転んでもただでは起きない」という気持ちです。この意識を常に持った上で、どのように改善をしていけば会社に貢献することになるか、その意識を持ち、そして実践もできるようになっていけばもうあなたは立派な一人前の社会人です。社会人になって5年、10年経ってもすべての人がこの実践ができているか、というとそうではないのが実情です。そのような残念な人には決してならない、という決意をここでしてください。
ミスをした後にこそ、その人の真価が問われるのです。より良い仕事をしていくためにもミスをしてしまった際には、くよくよすることなく二度と同じ過ちはしない、という信念のもと、ミスで会社に迷惑をかけた何倍もの貢献を会社に対してしていこう、という気持ちで日々の仕事に取り組みましょう。
*****************************
この冊子の本当に最後の締めくくりになりますが、仕事の成果はなかなか簡単には目に見えるようなものにはなりません。
倦まず弛まず(うまずたゆまず)努力を続けていき、長い年月を重ねることによっていつか大輪の花を咲かせる、という気持ちで日々の仕事に向きっていきましょう。それがある程度の年齢になって自分が歩んできた人生を振りかえったときに、自分で自分を誉めることができるようになる最も近道です。決して他者との比較ではなく、あなたらしい大輪を咲かせてください。
きのう、先月、去年よりも少しでも成長した自分を感じられるようになれればあなたの社会人人生は成功者の人生になります。
ご活躍、ご検討を心より願っております。