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●ISO内部監査で答える側を務めることになりました
私、営業部の鈴木一郎です。
前回、営業部に来て半年、ついにISO内部監査でのお役目を頂戴することになったわけですが、何せ未体験ゾーンなので部の会議でも宇宙人対応をしてしまい、部長から居残りを命じられたところまでお話をしました。
今日はそこから再開します。
部長もできた人で、思ったことを深く考えもせずに言ってしまった私をその場では叱責することもせずに、居残り、という形で諭してくれたわけです。
居残り会議では、きついお灸をすえられるのか、と少々身構えていたのですが、開口一番
「ISO内部監査のこと実はお前は何にも知らないのか?」
と単刀直入に聞かれ、「はい」と答えると
「仕方がないな、面倒でしょうがないが、まあここできちんと理解しておけば大丈夫だから30分だけの特別講義をしてやるぞ!」
とちょっと恩着せがましかったのですが言ってもらえて、初めてISO、そしてISOの内部監査についてのレクチャーを聞くことができました。
今日は恥ずかしい限りですが、その特別講義の内容を覚えている限りここに再現しますね。お付き合いよろしくお願いします。
「さあ、鈴木さん、まずこれはさすがに大丈夫だと思うが、当社がISOの認証を取得しているということはわかっているよね」
「はい、大丈夫です。環境に関する認証取得をしています」
「うん、よかった。ではその認証を取得しているISOは何番だったかな?」
「えっ、ISOの番号ですか?」
「そう、ISO●●という番号。名刺にも刷り込んであるんだけどね・・・」
「えっ、名刺にも刷り込んである???」
早速鈴木さん、部長に攻め込まれて旗色悪しです。
部長も困り顔で、
「なあ、鈴木、営業マンは商品のことをわかって、いろいろお客様に提案していくことが大事な仕事なんだが、自分の会社のことも理解しておかないと、大事な営業の時にこけるもんだぞ。名刺にISO何番認証取得、と刷り込んであるのは知っているよな」
「はい、それは毎回名刺を使う時にも見ていますので・・・」
「見ていても頭に入っていないんじゃ、見ていないのと同じってわかるかな・・・」
「はい・・・・・」
「確かにわが社は環境に関するISO規格の認証を受けている。これはその通り。もう何年もたつだろうけど、君が受けているはずの新入社員研修の時から教わっているじゃなかったかな。番号自体を覚えることはそれほど重要なことではないんだけれど、この環境の規格というのはISO 14001という番号が付けられているんだよ。それ以外では、わが社では認証は取得していないけれど、品質に関するISO規格があるのは聞いたことがあるかな」
「はい、番号は・・・・・思い出せませんが、品質のISO規格があることは聞いたことがあります」
「うん、ならまあいいだろう。因みに品質はISO 9001番だ。このISO規格が当社においてどのような意味を持つのか、ううん、この言い方じゃあ、わからないかな。まずわが社ではISO 14001の認証を取得している。そこは良しとして、そのことがどのような意味を持つことなのか。お客様に「なんでISO 14001の認証を取得されているのですか」と聞かれたらどのように答えるつもりかな。意地悪だが、今まで担当してもらっているお客さんは長年お付き合いのある所ばかりだから、今更ISO 14001の話なんか持ち出してこない、ということだよなあ。だから君は今までISOについて知らないことがたくさんあるのに無事やってこれた、というわけなんだよな」
「そうなんですね・・・」
「まあ、そういうことだ。おっと、話を戻してわが社がISO 14001の認証を取得している意味、何か思いつくことあるかい?」
「はい、環境にやさしい会社ということです」
「まあ、大きな言い方をすればそうだな、ではもう少し具体的に言うと・・・」
「えっ、もっと具体的にですか・・・」
「ほう、もうここでお手上げに近いか。まあいいだろう。環境にやさしい会社ということは間違ってはいないが、もう少し踏み込んで言えば、わが社が事業推進していく上で、地球環境を健全な状態に守ること、そして将来につなげていく上で有用と思える具体的な目標を定めて、その目標達成のために全社一丸となって努力していくことを会社の仕組みに取り込んで日々の業務活動を行っている、ということなんだなあ。環境破壊につながるような有害物質を出さない、とか、当社では紙を大量に扱うわけで、その紙についても焼却廃棄にならないようにリサイクルを徹底していくなどのことで環境への配慮をした事業活動をしていく、ということだ。わかるか」
「なるほど、さすが部長。大変よく解りました」
「さすが、とはなんだ、上司に向かって。こんなレベルのことは管理職でなくてもわかっていないと新入社員と変わらなくなってしまうぞ」
「はい、すみません」
「話を戻すぞ。わが社では大量に紙を扱うわけで、そのリサイクルについては当然昔から強く意識していたんだ。君が生まれたくらいのころかな、日本でもエコブームというのがとても盛り上がって紙はそれまでは白い紙でなければ紙ではないというくらいの感覚でとらえる人がいたのに、白い紙は漂白をしているから環境に良くない、だから多少色がついてしまっていても再生紙を使わないとダメだ、という風潮が一気に広まって、値段が高くても再生紙を買ってくださるお客様が続出した、という過去の歴史があるんだ」
「その話は新入社員研修の時に聞きました」
「そうか、それを覚えているくらいなら、まあいいだろう」
「再生紙の話は一例だか、多くの企業が環境問題への対処、取り組みを始めていく上で、ちょうど発行されたISOの環境に関する規格、ISO 14001が注目を集めたわけだ。そしてそのISO 14001の認証を取得している企業はそのまま環境への積極的な取り組みをしている企業とみなされる機運がどんどん高まったこともあって、わが社もISO 14001の認証を取得するに至ったというのが過去の歴史ということになる」
「なるほど」
「そしてそれから早いもので10数年。今や君のように、入社した時からISOは会社の中に存在していた、という社員が増えてきたことによって、なんでISO 14001なのか、なんでISOの認証を取得し、維持しているのか、ということが分からなくなってしまっている若手社員が多いのかもしれないな。どうだ、同期のみんなとISOの話をしたことあるか」
「いや、ほとんど記憶にないです」
「ほとんど・・・・、ということは少し話したことあるってことか?」
「いやっ・・・、新入社員研修の時に教わって以降、同期の連中と話した記憶は・・・」
「なんだ、やっぱりなし、ということか」
「あっ、はい、そうです」
「まあ仕方ない、それが今のわが社の現状だろう。今度部長会議の時に話題に出しておこう。自慢できる話ではないが、今この段階でカバーしておけば何とかまだ予防的対処という位置づけで動けるだろう。さて、話を進めるぞ。内部監査の件だ」
「あっ、はい、お願いします」
ようやくこれで本題の話に入っていく私たちでした。 (次回に続く)