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7.不適合指摘を理解しよう!
IISO9001審査員研修コースに合格修了した後、審査員として活動されるかどうかは人それぞれですが、試験に合格するためには審査員が審査をどのように進めるかを知り、それができるようになる必要があります。審査でもっとも難しいと思われる不適合の指摘について説明したいと思います。
【審査員に求められる役割】
審査は、組織が製品・サービスを契約通り提供できる仕組みを持ち、機能させているか否かを、その組織のお客様に代わって客観的に評価・判定する制度です。したがって審査員は自らの業務の重要性を意識し、組織が基準に沿って活動しているかどうかを公正に判断し、もし不適合と思われる事象を見つけたら、そのときは専門家として正当な注意を払って対応しなければなりません。
【不適合を見つけたらどうするか】
不適合が疑われる事象を見つけたとき、審査員がまず行わなければならないのは、その事実を確認し、検証することです。どういう事象なのか、それが何に対して不適合なのか、客観的な証拠を集めることが必要です。そのために現場へ行き、実際の資料や作業方法を確認し、関係者に話を聞きます。そして、やはり不適合と思われる場合には、なぜそういうことが起きたのか、本質的な原因を探ることが望まれます。
たとえば業務が手順通り実施されていない事象があったとします。もしそれが製品の適合性やマネジメントシステムの有効性に関連する重要な業務であれば、手順通りに実施されなかった理由についてさらに調査をすることが必要です。担当者が手順の改定を知らなかったのであれば、問題は改定時の周知方法にある可能性があります。いつもとは違う人が代行していたならば、代行者の力量訓練や人員手配の手順に問題があるかもしれません。このように掘り下げて調査することで改善に結びつく本質的な指摘になります。
【不適合の区分】
一口に「不適合」といってもその影響は極めて重大なものから些細なものまで千差万別です。そこで影響の大きさに応じ、一般的には「重大な不適合」と「軽微な不適合」に区分して処置を取ることになっています。
「重大な不適合」というのは、放置すると意図した結果が達成できない、即ち今のままでは良品を常に安定して供給できない可能性がある、という状態です。これがある場合は、被審査組織がその不適合の原因を取り除き、再発を防止するための処置をとって、その有効性が確認できるまで、審査員はその組織に認証を与えることはできません。
「軽微な不適合」というのは、意図した結果を達成できるけれどマネジメントシステムの一部に欠陥がある状態をいいます。この場合は、どのように原因を取り除き、かつ再発防止を図るかという回答を被審査組織から受け取って、その処置が妥当と判断できれば審査員は認証を与えることができます。
コース内では、事例を見て被審査組織のどこに不適合があるかを見つけ、どの要求事項に反しているかを説明して、その不適合が「重大」なのか「軽微」なのか判断する練習をします。
【不適合を伝える】
上に述べたように、審査員は不適合を見つけたら、まず事実の確認・検証、原因究明、影響に応じた区分を行います。そして被審査組織に不適合を伝えます。しかし、不適合の内容を説明する際、その根拠として示した証拠が曖昧だったり、どの規格要求事項あるいは手順に対して不適合かを十分説明できなかったりするようであれば、被審査組織に受け入れてもらえません。なぜなら、被審査組織としては不適合を指摘されたらその対策を取らなければならず、それは大変な作業的、心理的負担だからです。納得のいかない説明では反発を受けるのはやむを得ないでしょう。だからこそ、しっかりと客観的証拠を収集し、その不適合を解決するには何が必要か、その条項に要求されていることが問題の解決になるかを考えて指摘する必要があります。
ISO9000審査員研修コースでは、受講される方の審査員としての力量をいろいろな目で判断しますが、この模擬監査における不適合指摘の姿勢は大きな判断材料になります。ぜひ演習資料をよく読み解き、他の受講者と協力して、粘り強くこの課題に取り組んでください。そうすればきっと良い評価につながることでしょう。
(次号へつづく)