8.是正対応の理解を深めよう!

組織の品質マネジメントシステムにおいて不適合があった場合、審査員は被審査組織に対して「是正処置」(下記参照)を要求します。被審査組織側は指摘された不適合を是正するためにどのような処置をとるか、すべて自分たちで責任をもって決めなければなりません。審査員は是正の方法を教えたり、審査のときに誘導するような提案をしたりしてはいけないことになっています。「是正処置」とはどういう処置のことか理解しておくと良いでしょう。

【是正処置とは】

「是正処置」とは「不適合の原因を除去し、再発を防止するための処置」です。不適合を除去(解消)することをISOの用語では「修正」といいますが、普段私たちが用いている言葉で言えば応急処置と考えてください。この応急処置と再発防止処置を併せて「是正処置」といいます。
たとえば間違った製品を出荷してしまったので、お詫びして正しい製品を送り直したという場合を考えてみましょう。これはもちろん必要なことですが、また同じようなことが起きる可能性を残しています。つまりこれは応急処置をしただけであり、「是正処置」をとったことにはなりません。更に根本的な原因を探り二度と起きないように対処することが必要です。もしその原因が、製品の外観が似ていたとか担当者が不慣れだったということであれば、製品の形や包装を変えるとか担当者の教育内容を見直すといった処置が考えられます。更に似たようなミスが他で起きる可能性がないか水平展開を考えて対策すればミスの予防につながります。これら一連の処置をISOの用語では「是正処置」と呼んでいます。

【それは本当に是正処置?】

審査の場で不適合指摘を受けた被審査組織は「是正処置」を検討し、是正処置報告書を作成します。審査員はその内容をよく見て、その処置が本当に有効なのかどうか検証します。単なる「修正」に終わっていないか、真の原因が特定できていてそれが具体的な対策につながっているか、原因を「人」に限定していないか、原因と処置が整合しているか、などの観点でよく考えることが必要です。実際の審査では、その処置が不適合の持つ影響に見合ったものかどうかということも考える必要があります。軽微な不適合に対して、それが二度と起きないよう作業を大幅に煩雑なものにしてしまうと、それは別の不適合を引き起こす可能性につながるからです。
コース内では是正処置実施報告につき、その内容が受理できるかどうか判断するケーススタディを行います。被審査組織が真の原因と対策を見きわめているか、本当にその対策が有効かどうか判断するためには、日ごろの業務への取り組み方やこれまでの社会経験がものを言います。普段から問題が起きたときに、“なぜそれが起きたのか”を深掘りして考え、真の原因を探り出して対策の効果を検証する作業(なぜなぜ分析)を行っている人は有効性を判断しやすいでしょう。
是正処置は、新しい資料を作成したり手順を変えたり、面倒で煩わしい作業が発生する場合もあります。しかしそれが組織の品質マネジメントシステムを改善し顧客満足の向上につながるのです。積極的に取り組むべきものであり、そのきっかけが審査員の不適合指摘です。審査員が果たすべき役割の重要さを噛みしめてください。

(次号へつづく)

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