9.筆記試験対策はあるか?

筆記試験は受験者が審査員としての力量を備えているか、JRCAが判断するために行われます。JRCAが問題を作成し採点することになっており、テクノファをはじめとするJRCAから承認を受けた研修機関はその運営や試験監督を委託されています。研修機関では試験内容の詳細は把握できないのですが、コースを担当する講師はベテランになるほど、筆記試験でどういったことが問われるか想像がつくようになります。したがってコース中は講師の説明を良く聞きましょう。

【筆記試験の内容】

筆記試験に合格する近道は、まずどのような試験なのか知ることでしょう。それはJRCAが定める「マネジメントシステム審査員の筆記試験実施要領」(https://www.jrca-jsa.or.jp/datas/media/10000/md_4923.pdf)にある程度書かれていますので、一読することをお勧めします。すべて読むのが大変という方のために一部抜粋してお伝えします。

まず、試験時間は実施要領の5.3.1に書かれているように120分です。記入は鉛筆やシャープペンシルなど書き直しができるものなので安心してください。

次に、実施要領の付属書4「JRCA筆記試験実施の注意事項」には、筆記試験に持ち込み可能な資料が掲載されています。それは、JIS規格(9000、9001、19011、17021-1)、研修テキスト、演習資料、研修中の自筆ノートです。これらは試験中に見ても構いません。つまり、規格条項の文言や研修中に得た知識をすべて覚える必要は無いのです。ただし120分という限られた時間内に必要な項目を探し出すのはなかなか困難なので、研修内容を理解し資料のどこに何が書いてあるか、ある程度把握しておくことは必要です。すべての問題でテキストや規格を開いて確認していると、確実に時間不足に陥ります。

実施要領の付属書1-1「QMS筆記試験の構成」には、Section1~4に分けて配点と解答方法が載っています。大項目で4題(択一的設問、空欄補充設問、小記述設問、総合記述設問)であり、出題範囲はJIS Q 9001、9000、19011、17021-1の各規格です。落ち着いて、わかるものから解答してください。

100点満点でSectionごとの点数(科目不合格あり)と総合点による評価になります。Section1と2は60%以上合格、Section3と4は50%以上合格、かつ総合点70%以上で筆記試験は合格となります。

科目 方式 配点 科目不合格
Section1 択一的設問 30点 17点以下
Section2 空欄補充設問 30点 17点以下
Section3 小記述設問 20点 9点以下
Section4 総合記述設問 20点 9点以下
合計 100点  

 

【Section別の内容と合格のポイント】

① Section1(30点、5肢から正解を一つ選択)
出題範囲の文書の内容について正しいものを選択します。
合格のポイント:問われている項目がどこに書かれているか、規格やテキストの内容をよく理解していれば早く見つけられます。持ち込み資料の重要と思える箇所に付箋を貼って、素早く見つけられるようにしておきましょう。

② Section2(30点、用語空欄補充)
出題範囲の文書の内容(審査員として理解しておいてほしい箇所)を示し、空欄部分を欄外に示した用語で埋める問題です。
合格のポイント:ここまでは設問の文章が書かれている箇所を見つけるスピード勝負です。講師が力点を置いて説明していたところは要注意です。

③ Section3(20点、品質マネジメントシステム上の懸念事項の特定と記述) 組織のQMS(品質マネジメントシステム)の状況やヒヤリング情報等をもとに、審査員の視点から懸念事項を記述したり関連要求事項の項番を示したりする問題です。
合格のポイント:審査の実施方法をよく理解しておくことがポイントです。

④ Section4(20点、不適合報告、改善の機会の記述)
Section3の場面設定などをもとに不適合報告、改善の機会を記述する問題です。
合格のポイント:③と④は4日目のケーススタディでやったことをよく思い返し、問題の状況において、どの部分がどの項番に適合していないかを答えます。なお記述にあたっては、一から構成を考えて作文するのではなく、コース中に行う演習の解答を一つのパターンとして、該当規格に合うようアレンジを加えればまとまった文章になるでしょう。
事前に、日常携わっている業務で不適合がある場合を想定し、こういう場合はどのように是正処置報告書を書けば良いだろう、とシミュレーションするのは非常に良い練習になります。なお、記述問題はある程度の分量を書く必要があるので、普段から文章を書くのに慣れておくと良いかもしれません。120分間の試験時間のうち、記述になるべく多くの時間を割けるよう時間配分をすると焦らずに解答できるでしょう。

【試験結果について】

試験結果の通知は約1ヶ月後です。研修コース合格者には「研修コース合格修了証」が送られます。なお、研修コースに合格するためには、このシリーズの別稿「3.ISO9001審査員に求められる力量とは」に記載した通り、①知識、②技能、③人間性の3つが必要であり、本稿はその①についての記載になりますのでご注意ください。

(次号へつづく)

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