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内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。
C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。
【質問41】
ISO19011の附属書Aは、プロセスアプローチについて触れていますが、プロセスアプローチについて教えてください。
【回答41】
ISOは、2012年、共通テキスト(附属書SL)を定め、規格制定するすべての技術専門委員会(ISO/TC)に共通テキストの使用を義務付けました。
共通テキスト箇条4.4には次のようにあります。
「組織は,この規格の要求事項に従って,必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む,XXX マネジメントシステムを確立し,実施し,維持し,かつ,継続的に改善しなければならない。」
この規定の中にある「・・・必要なプロセス及びそれらの相互作用・・・」に焦点を当てることをプロセスアプローチと呼んでいます。ISO19001附属書Aでは、内部監査においても監査の対象としているマネジメントシステムがこの考え方(プロセスアプローチ)で構築され、運用、維持、改善されていることを確認することを推奨しています。
特に、品質マネジメントシステムの内部監査では、ISO9001が次のような要求をしていますので、箇条4.4.1に沿って監査することをお勧めします。
「4.4.1 組織は,この規格の要求事項に従って,必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む,品質マネジメントシステムを確立し,実施し,維持し,かつ,継続的に改善しなければならない。
組織は,品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの組織全体にわたる適用を決定しなければならない。また,次の事項を実施しなければならない。
a) これらのプロセスに必要なインプット,及びこれらのプロセスから期待されるアウトプットを明確にする。
b) これらのプロセスの順序及び相互作用を明確にする。
c) これらのプロセスの効果的な運用及び管理を確実にするために必要な判断基準及び方法(監視,測定及び関連する
パフォーマンス指標を含む。)を決定し,適用する。
d) これらのプロセスに必要な資源を明確にし,及びそれが利用できることを確実にする。
e) これらのプロセスに関する責任及び権限を割り当てる。
f) 1 の要求事項に従って決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。
g) これらのプロセスを評価し,これらのプロセスの意図した結果の達成を確実にするために必要な変更を実施する。
h) これらのプロセス及び品質マネジメントシステムを改善する。
4.4.2 組織は,必要な程度まで,次の事項を行わなければならない。
a) プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持する。
b) プロセスが計画どおりに実施されたと確信するための文書化した情報を保持する。」
このように、監査を「組織のプロセス」に沿って行うことをISO19011附属書A.2では推奨しています。
< JIS Q 19011:2019の該当する部分> 下線は筆者が追加した。
ISO19001附属書Aは、規格の最後に(参考)として付されている、「監査を計画及び実施する監査員に対する追加の手引」のことです。全部で18項目の手引きが書かれています。
質問にあるプロセスアプローチに関する記述はA2にあります。
A.2 監査に対するプロセスアプローチ
“プロセスアプローチ”の利用は,ISO/IEC 専門業務用指針第1 部の附属書SL に従う,全てのISO マネジメントシステム規格における要求事項である。マネジメントシステム監査とは,一つ又は複数のマネジメントシステム規格に関係する組織のプロセス及びそれらの相互作用を監査することであることを,監査員は理解することが望ましい。一貫して予測可能な結果を,より有効にかつ効率的に達成するのは,マネジメントシステムの活動を,首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連したプロセスとして理解し,マネジメントするときである。
7.2.3.2 マネジメントシステム監査員の共通的な知識及び技能
監査員は,次に概要を示す領域の知識及び技能を備えていることが望ましい。
a) 監査の原則,プロセス及び方法:この領域の知識及び技能によって,監査員は,一貫性のある体系的な監査の実施を確実にすることが可能となる。
監査員は,次の事項ができることが望ましい。
- 監査実施に付随するリスク及び機会のタイプ並びに監査実施へのリスクに基づくアプローチの原則を理解する。
- 有効に作業を計画し,必要な手配をする。
- 合意したタイムスケジュール内で監査を行う。
- 重要事項を優先し,重点的に取り組む。
- 口頭及び書面で有効にコミュニケーションを取る(自身で,又は通訳の利用を通じて)。
- 有効なインタビュー,聞き取り,観察,並びに記録及びデータを含む文書化した情報のレビューによって,情報を収集する。
- 監査のためにサンプリング技法を使用することの適切性及びそれによる結果を理解する。
- 技術専門家の意見を理解し,考慮する。
- 該当する場合,他のプロセス及び異なる機能との相互関係を含めて,プロセスを最初から最後まで監査する。
- マネジメントシステムのプロセス間の関係及び相互作用
- 複数の規格又は基準文書の重要性及び優先順位の理解
- 様々な監査の位置づけへの規格又は基準文書の適用
(つづく)
ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから