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内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。
E:監査における処置
ここでは内部監査の処置段階の質問を扱います。
【質問45】
内部監査の結果について不適合があれば改善をしなければならないと思いますが、改善の仕方について教えてください。
【回答45】
内部監査は「組織の業務を改善することを目的として行う」ことは、これまで繰り返し説明してきました。今回の質問は「改善の仕方」についてですので、内部監査の目的を改善に置いて、どのように改善を実践するのかについて説明します。
結論からいいますと、改善の仕方のポイントは問題の「原因明確化」にあります。改善すべき問題の原因が明確にできれば、その後のアクションは比較的スムーズに軌道に乗ります。
附属書SL箇条「10 改善」には、改善の仕方について次のようにあります。
「・その不適合の原因を除去するための処置をとる必要性を評価する。
-その不適合をレビューする。
-その不適合の原因を明確にする。
-類似の不適合の有無,又はそれが発生する可能性を明確にする。
・必要な処置を実施する。
・とった全ての是正処置の有効性をレビューする。」
附属書SLに書かれている一連の活動の中で、一番重要なものは「その不適合の原因を明確にする」ことです。
多くの場合、問題の原因は一つではありません。次のようないろいろな種類の原因が複数以上絡んでいます。
・発生原因
・見逃し原因
・拡大原因
発生しなければ、見逃しも拡大も起こり得ないので、重要なものは「発生原因」です。
なぜ発生したのかを「なぜ」をキーワードにして、繰り返し問うことで真因にたどり着くことを「なぜなぜ分析」といいます。下記の事例は実際にあった話です。
【例】工作機械の切削効率が落ちた。
・なぜ工作機械の切削効率が落ちたのか?
-刃物が摩耗していた。
・なぜ刃物が摩耗したのか?
-切削油が少なくなっていた。
・なぜ切削油が少なくなったのか?
-切削油の流路にあるフィルターの効率が落ちていた。
・なぜ切削油の流路にあるフィルターの効率が落ちたのか?
-フィルターに金属切削くずが詰まっていた。
・なぜフィルターに金属切削くずが詰まっていたのか?
-1週間作業を続けるとフィルターには金属切削くずが詰まる。
このような分析をした結果、「5日ごとにフィルターを交換する」ことを標準作業に組み入れる、という改善が行われることになりました。
しかし、これには後日談があり、標準作業に組み入れた直後は問題なく過ぎていったが、作業者が変わったら同じ問題が発生したということです。調べてみると、問題点としては同じであり「フィルターに金属切削くずが詰まっていた」のですが、原因は「ルールを守らないこと」にあり、すなわちフィルターを交換しなかったことにありました。以前の問題発生時とは異なる新しい原因が見つかり、その原因への対策を取らなければなりませんでしたが、これが難航したといいます。
人が絡むと「忘れた」、「うっかりした」、「忙しかった」、「休んだ」など、技術的な分析とは異なる分析を迫られることになります。いわゆるヒューマンエラーと呼ばれる一連の問題で、世界で多くの研究が行われていますが、現状では「これで原因を除去できる」という特効薬は見つかっていません。
< JIS Q 19011:2019の該当する部分> 下線は筆者が追加した
6.7 監査のフォローアップの実施
監査の成果には,監査目的によって,修正若しくは是正処置の必要性,又は改善の機会を示すことができる。このような処置は,通常,合意した期間内に被監査者が決めて行う。適切な場合には,被監査者は,これらの処置の状況を,監査プログラムをマネジメントする人及び/又は監査チームに知らせておくことが望ましい。
これらの処置の完了及び有効性は,検証することが望ましい。この検証は,その後の監査の一部としてよい。成果は,監査プログラムをマネジメントする人に報告し,マネジメントレビューのために監査依頼者へ報告することが望ましい。
(つづく)
ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから