内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

E:監査における処置
 ここでは内部監査の処置段階の質問を扱います。
【質問46】
改善は「不適合の原因を無くし2度と起きないようにする」ことと、「不適合ではないがより効果的、効率的に仕事を進める」ことの2つがあると思っていますが、2つとも改善と考えて良いでしょうか。
【回答46】

内部監査では、要求事項を満たしていないこと、標準、規則などに従っていない作業などを「不適合」と称してその是正を求めています。また、不適合ではないがパフォーマンス向上につながることを「観察事項」と称しその実施を薦めています。質問の前者は、「不適合」の是正であり、後者は「観察事項」の実施であると位置づけることができます。

この質問は改善の定義に関するものですので、改善の定義を当たってみましょう。
1.附属書SLの(継続的)改善の定義は「測定可能な結果(パフォーマンス)を向上するために行われる活動」となっています。
2.JISQ9024マネジメントシステムのパフォーマンス改善-継続的改善の手順及び技法の指針における改善の定義は「問題又は
  課題を特定し、問題解決又は課題達成を行う活動」となっています。
3.JSQC(品質管理学会)の用語集では、「製品・サービス、プロセス、システムなどについて、目標を現状より高い水準に設定
  して、問題及び課題を特定し、問題解決又は課題達成を行う活動」と定義しています。

3種類の定義を掲げましたが、いずれも現状よりも向上した状態にすることを改善と言っております。
質問の前者「不適合の原因を無くし2度と起きないようにする」ことは、一般には是正処置と呼ばれています。是正処置を改善と見なすかについては議論のあるところです。是正処置は、あるべき姿から何らかの原因で外れてしまったこと(不適合)を元の姿に戻そうとする活動ですから、いってみれば「原状復帰」であり、現状より高い水準に持っていこうとする改善とは区別することが良いというのが一つの考えです。
一方、附属書SLでは、「10.改善」の下に「10.1 不適合及び是正処置」が位置付けられており、より大きく判断して是正処置も改善の内に入るとしています。私はこの考えでよいと思っています。
質問の後者は、まさしく改善の概念であり、内部監査員が「観察事項」という名前ではありますが、より効果的、効率的に仕事を進めるための活動を提案しています。

< JIS Q 19011:2019の該当する部分> 下線は筆者が追加した
6.7 監査のフォローアップの実施
監査の成果には,監査目的によって,修正若しくは是正処置の必要性,又は改善の機会を示すことができる。このような処置は,通常,合意した期間内に被監査者が決めて行う。適切な場合には,被監査者は,これらの処置の状況を,監査プログラムをマネジメントする人及び/又は監査チームに知らせておくことが望ましい。
これらの処置の完了及び有効性は,検証することが望ましい。この検証は,その後の監査の一部としてよい。成果は,監査プログラムをマネジメントする人に報告し,マネジメントレビューのために監査依頼者へ報告することが望ましい。

(つづく)

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