●ISO内部監査は自分の普段行っている仕事のことを話せばよいのだ、ということがわかりました(その2)

内部監査で不適合指摘を受けるのが怖い、と心情を吐露した鈴木さんに対する部長の返答が続いています。

「まあ、致し方ないか、1回で理解するには少々難しい話かもしれんな。いずれにせよ、もし今言ったようなことが、君のお客さんの案件で起きたとしたら、君には大いに反省してもらわないといけない。だが会社としては、それを一担当者にすべて任せているのか、という問題も出てくるんだ。つまり仕様変更が起きたときには担当者任せにするのではなく、上席、まあこの場合は課長になるが、その課長がきちんと確認した上での話かどうか、そもそも課長が関与する仕組みがあるのか、帳票がそのような設計になっているのか、というようなことが問題になってくるんだ。それらの仕組みがもしなかったあるいは欠落していたら、担当者任せになっていた、つまりその担当者がミスをしないための組織としての創意工夫が足りていない、ということになる。つまり組織としての仕組み構築力の弱さを内部監査員としては指摘していくことになるんだ。どうかな、わかるかな。ますます難しくなってしまったかな?」
「はい、ますます難しいです」
「う~ん、まあ1回では無理かもしれん。要するに、君がちゃらんぽらんな姿勢、気持ちで仕事をしていてミスをしたのであれば、社会人として責任を取ってもらわないといけない。でも一生懸命やっていたのにミスをした、まあつまりこの場合は不適合指摘を受けた、ということであれば、君には二度とその失敗をしない、という強い意識を持ってもらうことは必要だが、それが今期の成績上、ばってんがつく、ということとは本質論として違うわけだ。だから内部監査の前から心配するな、ということなんだよ」
「は、はい」
「どうだ、異動になって営業部に来てからこれまでの間、一生懸命仕事に取り組んできた、と言えるかな」
「あ、はい、たぶん大丈夫だと思います」
「だぶん・・・、か。まあ、少々心もとないが、大丈夫だ、君が不適合指摘を受けてばってんを食らうようなことには99.99%ならないから。不適合指摘を受けたらどうしよう、なんて心配は今日この段階で終わりにして、それよりも大事なことを覚えておいて欲しい」
「はい、何でしょう」
「それは、内部監査ではありのままの姿を見てもらって、さらなる改善のためにはどのようなことをしていけばよいか、そして考えていけばよいかのヒントを、内部監査員と共に見出す場が内部監査の場である、ということをしっかり理解しておいてほしいんだ。
もちろんわが社もISOに取り組んだ当初のころは、ISO 14001規格にある要求事項への対応で苦労した時期もあった。だがそれから皆で努力していき、ISO規格が求めていることへの対応はここまでくれば問題ないだろう、という自信を持てるようになったんだ。そう5,6年前のことかな。以来、我々はより高いレベルを目指していこう、そのためには改善という意識を強く持っていこう、ということで社長からも号令が下り、内部監査員教育スタイルも変わったという過去の歴史があるんだよ。
ちょっと堅い話をすると、規格の最後の項番のところは「継続的改善」というタイトルになっていてその要求事項という内容の文は「組織は、環境パフォーマンスを向上させるために、環境マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善しなければならない」というものになっているんだ。ここを自分たちの解釈として、環境問題への取り組みの強化により、お客様との信頼関係のさらなる強化、そして世の中への環境負荷低減への貢献、という中期目標を立てるに至ったんだ」
「なるほど、そのような過去からの経緯があったのですね」
「そう。わかっているとは思うが、地球環境問題は、温暖化の話やエネルギーの問題など、どんどん心配なことが増えてきている。わが社1社が何かしたからと言って世の中に大きなインパクトを与えられるわけでは残念ながらないが、SDGsやESGという言葉は聞いたがことがあるかな」
「はい」
「これらの概念への理解、そして取り組みが世界的にどんどん進んでいっている昨今、たとえ当社のような小さな企業規模の会社であっても、知りません、対応していませんとは言えない時代に突入しているんだ。それこそ一昔前であれば再生紙を使うようにしているだけで環境にやさしい会社とみなしてくれるような風潮があったが、もうそんな時代ではなくなっており、どれだけ環境への取り組みをして貢献をしているか、特に上場企業であればその取り組み内容によって株価が動く時代が来た、というわけさ」
「いや、部長、さすが何でもご存じですね」
「こら、ちゃかすな。今言ったことは、鈴木君、君がお客様のところに行った際に自分の言葉で説明できるようにならなければならないレベルの話だぞ。それこそそのような営業トークができないようであれば今期の業務パフォーマンスは「ばってん」がつくぞ」
「えっ、そんな脅しはやめてくださいよ。勉強しますから。でもいきなりは部長のようにはぺらぺらとはいきませんから、少し長い目で見てください。お願いします!」
「まあ、仕方ない、またそうやって鈴木流のはぐらかし術にはまってしまう前に話をもどすと、内部監査は、改善のきっかけを見い出す場、ということを理解することだ。いいかな」
「はい、それは理解できたと思います」
「では仕上げに行くとするぞ。その改善のきっかけを見い出すために必要なことは何だと思う?」
「えっっ、きっかけを見い出すために必要なことですか・・・・・」

(次回に続けます)