平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第2回

1.3  ISO9000シリーズ規格と企業組織の関係

品質マニュアルの説明に入るまえに,ISO9000シリーズ規格と企業組織の関係について簡単に触れておく。9001から9003まで3モデルあるISO9000シリーズ規格のなかから,最も広域をカバーし,代表的でもあるISO9001を例にとって,その条項と企業組織との関係をまとめたものが表1.2である。
全20項目中,以下の6項目は企業の全組織が対象となっている。

  • 4.1 “経営者の責任”
  • 4.2 “品質システム”
  • 4.5 “文書管理”
  • 4.17 “内部品質監査”
  • 4.18 “教育・訓練”
  • 4.20 “統計的手法”

一方,残りの14項目はある特定分野の組織を対象として活動を進めていく条項である。すなわち,

  • 4.3 “契約内容の見直し”
    この条項では,営業部門が主管となって他の関係部門(設計部門,技術部門, 品質保証部門)と協働して契約内容の確認をする。社内文書化された各種標準書類と契約内容とが合致しているかどうかを常に見直しをし,記録していく。
  • 4.4 “設計管理”
    設計部門が主管部門であり,設計を顧客の要求に確実に適合させるためになさなければならない各種規定について述べている。開発部門,技術部門,品質保証部門がこれに参加する。
  • 4.6 ”購買”
    購買部門が中心になって行う購買活動の各種規定について述べている。技術部門,生産管理部門,品質保証部門が,この規定に関係して活動する。
  • 4.7 “購入者による支給品”
    購入者(客先)からの支給品がある場合で,営業部門が窓口となり,生産管理部門,物流・倉庫部門,品質保証部門がこれについて規定された活動を行う。
  • 4.8 “製品の識別及びトレーサビリティ”
    企業内の全工程において製品の識別を行えるようにしておかなければならない。技術部門,購買部門,生産管理部門,物流・倉庫部門,製造部門,品質保証部門が関係する。主管部門は企業の組織のあり方による(ここでは品質保証部門とした)。
  • 4.9 “工程管理”
    全工程を管理された状態にするべく,技術部門,生産管理部門,物流・倉庫部門,製造部門,営繕・メンテナンス部門,品質保証部門が協働して活動する。通常は技術部門が主管する。
  • 4.10 “検査及び試験”
    製品の検査,試験について規定した条項で,技術部門,購買部門,生産管理部門,物流・倉庫部門,製造部門,営繕・メンテナンス部門,品質保証部門が関係する。通常,品質保証部門が主管する。
  • 4.11 ”検査,測定及び試験の装置”
    会社内にある検査,測定,試験の装置を管理し,校正し,維持することを規定している。開発部門,設計部門,技術部門,物流・倉庫部門,製造部門,営繕・メンテナンス部門,品質保証部門が関係して活動する。通常,品質保証部門が主管する。
  • 4.12 “検査及び試験の状態”
    製造および据付けの全過程にわたって製品の検査および試験の状態を識別することを規定している。購買部門,生産管理部門,物流・倉庫部門,製造部門,品質保証部門が関係する。通常は品質保証部門が主管する。
  • 4.13 “不適合品の管理”
    不適合品の識別,文書化,評価,隔離,処置などの活動を,購買部門,生産管理部門,物流・倉庫部門,製造部門,営繕・メンテナンス部門,品質保証部門が連携しながら推進する。通常は品質保証部門が主管する。
  • 4.14 “是正処置’’
    不適合品の原因を調査し,再発防止の処置を講ずる活動を全社的に展開する。したがって,企画部門,開発部門を除く全組織が連携をもって活動する。通常は品質保証部門が主管する。
  • 4.15 “取扱い,保管,包装及び引渡し”
    製品の取扱い,保管,包装および引渡しについて規定しており,技術部門,購買部門,生産管理部門,物流・倉庫部門,製造部門,品質保証部門がそれぞれの立場で関係する。通常は技術部門が主管する。
  • 4.16 “品質記録”
    会社内にあるすべての品質記録について規定しており,設計部門,技術部門,物流・倉庫部門,製造部門,営繕・メンテナンス部門,品質保証部門がそれぞれ関係する。通常は品質保証部門が主管する。
  • 4.19 “付帯サービス”
    付帯サービスについて規定した条項で,設計部門,技術部門,品質保証部門が関係する。営業部門が主管する。