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平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第34回
- 5)一般衛生管理プログラム
- HACCPプランの作成には前述のようにGMP(適正製造基準)、GHP/SSOP(衛生作業基準)が必須条件として要求されているが、これらは総称して一般衛生管理プログラムと呼ばれる。
- 一般衛生管理プログラムは、HACCPシステムを効果的に機能させる為の前提となるプログラムである。これはHACCP計画における衛生管理の基礎となるもので施設、設備の構造、衛生状態の維持管理、機械器具の保守点検、従業員の教育訓練、製品の回収プログラム、その他衛生管理に対する一般的事項が対象になる。
- 一般衛生管理プログラム要件
- 用水の管理
- 機械器具の洗浄殺菌
- 従業員の手指の洗浄殺菌
- 従業員の作業服機械器具からの食品への汚染防止
- 飛沫結露等による食品への汚染防止
- 従業員の健康管理
- トイレの清潔維持
- 防虫防鼠
- 交差汚染の防止
- 試験検査機器の保守管理
- 以上、一般衛生管理プログラムでは具体的に10項目を要求しているが、その記載内容についても規定している。
- 一般衛生管理プログラムで規定する内容
- 適用範囲
- 使用する薬剤
- 使用する設備機械
- 作業方法及び注意事項
- 作業時間
- 作業頻度
- 作業の管理項目と点検項目
- 異常時の措置
- 点検結果及び修正内容の記録システム
- この一般衛生管理プログラムの実施は、定められた作業手順書に従って確実に実施しなければならない。HACCPはそれ単独で機能するものではなく、食品の安全衛生を確保するための一部であり、HACCPの本来の機能を効果的にするためには、一般衛生管理プログラムが必要である。
- HACCPの基本的な考えは、重要な危害の発生箇所に重点を絞り、その管理基準を徹底して維持することにある。即ち、的を絞った重点管理方式といえる。しかし、一般衛生管理プログラムが不完全であれば、食品の安全衛生を確保する為には、数多くの管理点が必要になり、HACCP本来の姿である重点管理が不可能になり、HACCP自体が焦点のボケたものになってしまう。
- 従って、一般衛生管理プログラムは言葉をかえれば、重要な管理点の数を減らし、本来の重要危害の発生箇所に集中して管理することを可能にするものである。
- 6)適正製造基準(GMP)について
- 前述のとおりHACCPプランの作成には食品の衛生的な施設基準を含めた衛生的な取扱いがその前提条件になる。先述の一般衛生管理プログラムは施設基準を除いた衛生的取扱に的を絞った基準であるが、このGMPは施設基準と取扱基準を規定している。我が国のGMP基準は1979年に制定された弁当惣菜の衛生規範がそのモデルになっている。少な過ぎる
3.4.3 日本における総合衛生管理製造過程承認制度について
- 3.4.1で述べたように、1995年、厚生省は食品衛生法の下で「総合衛生管理製造過程承認制度」を導入した。対象食品は、①乳類、②乳製品、③食肉製品、④魚肉練り製品、⑤容器包装詰加圧加熱殺菌食品(缶詰、瓶詰め、レトルト食品等)、⑥清涼飲料水の6種類である。
- 翌1996年には食品衛生法が改正され、HACCPをベースとした総合衛生管理製造過程承認制度が厚生省に設置された。
- 1998年、厚生省と農林水産省は「製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(HACCP手法支援法)」の制定に伴い、HACCPの考え方を取り入れた工場の設備導入を資金面で援助することになった。また、食品安全委員会が設置され、消費者の健康保護を最優先に食品の安全に関するリスク評価を行う計画が示された。
- 2003年5月、包括的な食品の安全を確保するための法律として「食品安全基本法」が制定された。以下その概要を示す。
- 1)総合衛生管理製造過程
- 総合衛生管理製造過程は、食品衛生法(昭和22年法律第233号。以下「法」という。)第7条の3において、“製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法について食品衛生上の危害の発生を防止するための措置が総合的に講じられた製造又は加工の工程をいう”と定義されているが、これは、HACCPシステムによる衛生管理及びその前提となる施設設備の衛生管理等を行うことにより、総合的に衛生が管理された食品の製造又は加工の工程を意味している。
- 2)食品の製造等に係る一律の衛生規制と総合衛生管理製造過程の承認による衛生規制
- (1)食品の製造等に係る一律の規制
- ①食品の製造等に係る一律の衛生規制
- ②製造又は加工を衛生的に管理(食品衛生管理者)
- ③営業者がそれを遵守できる事項にポイントを絞った規制
- (2)総合衛生管理製造過程の承認による衛生規制
- 承認時には、工程の各段階の責任者設置、改善措置の明確化、サンプリング検査による検証の実施、必要事項記録の実施等のHACCPシステムによる適切な衛生管理体制が確立されていることを確認する