平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第7回

バランススコアカード(BSC)

活用方法

要素 コメント
ISO 9001との関連 MR RM PR M&A Imp
活用範囲 あらゆるタイプの組織
製造とサービスの両方
機能、部門及び/又は組織
システムにおける変化の度合い 評価基準が決まっていない場合は大きい
人々に関する変化の度合い 評価基準が決まっていない場合は大きい
評価基準の変更は人々の行動を容易に変える
利益レベル
参加レベル スコアカードを広く展開する場合、通常推進母体としてである
成熟レベル 誰でも
時間尺度 3か月未満、しかし評価基準がない場合には長くなる
投資レベル 安い
実施方法 プロジェクト

背景

このアプローチは、1990年に実施された、将来パフォーマンス測定の1年に渡る研究プロジェクトに起源を発します。当時の課題は、パフォーマンス測定そのものが本質的には財務的なものであり、これでは将来の経済価値を創造する組織能力を妨げてしまうというものでした。

David Norton(Nolan Norton社の最高経営責任者)は研究リーダーとしての役割を、Robert Kaplanは学識経験者として諮問的な役割を果たしました。この調査研究は、革新的なパフォーマンス測定システムとして考えられ、1992年1~2月のハーバードビジネスレビュー誌に「バランススコアカード、評価基準とパフォーマンス原動力」という記事によって発表されました。1996年にも彼らは、書籍(バランススコアカード)を発行しています。最近のKaplanとNortonの書籍「戦略重視の組織(2001年)」では、組織戦略を伝えるためにバランススコアカードを活用することを強調しています。

バランススコアカードは民間組織を調査して開発されましたが、バランススコアカード原則は公的機関、任意組織にも等しく適用可能であることを忘れてはなりません。多くの事例がこのことを強く示しています。

原則

バランススコアカードの背景にある主要な原則は、伝統的な財務評価(過去の話)で現在を語ることは、不十分であるということです。工業化時代には、将来能力と顧客関係は成功のためにそう重要ではありませんでした。今日の情報化時代では、組織は顧客、供給者、従業員、プロセス、技術、及び革新等への投資によって将来価値を創造しようとしますが、その品質旅行の方向付けと基準を測定する必要があります。

バランススコアカードは、過去の業績評価である財務指標と、将来業績の推進力指標とを結合しています。これは次の4つの視点に繋がります。

  1. 財務の視点:組織は財務的にどのようにやっているか?
  2. 顧客の視点:顧客は誰で、我々についてどう思っているか?
  3. 内部/事業プロセスの視点:どのくらい顧客満足向上と財務目標を達成しているか?
  4. 学習と成長の視点:長期的にどのような能力を身につけなくてはいけないのか?

「バランス」の概念は、視点はお互いに関連していることを認識し、それぞれの視点に関して代表的指標を持つ必要があることから来ています。

アプローチ

バランススコアカードの展開で最初に実施することは、組織のビジョンと戦略の作成です。これが一旦確立されると、それぞれの視点に1つの質問、合計4つの質問が投げかけられます。

  1. 財務:我々が株主からどのように見えたら財務的に成功したことになるか?
  2. 顧客:顧客からどのように見えたらビジョンが達成されたことになるか?
  3. 内部/事業プロセス:株主、顧客を満足させるには、どの事業プロセスにおいて優れているべきか?
  4. 学習と成長:ビジョンを達成するために、変化し改善する能力をどのように持続するのか?(出所:Kaplan及びNorton、1996年)

通常は、多くの潜在的なスコアカードの評価指標を特定します。このアプローチを有効的に活用する鍵は、この評価指標がビジョン達成と戦略達成に関連して最終的に選ばれ、すべての視点が「バランス」を保って含まれていることです。

評価指標の選択のための要素をいくつか記します。

  • 明確な目的
  • 評価指標の定義
  • 達成目標
  • 達成目標到達に役立つ関連するすべての主導力

さらに、組織のスコアカードは、部門のスコアカードにより支援され、次に課のスコアカードにより支援されるというように、組織を通じてスコアカードが滝のように、上から下に流れていくことが一般的です。