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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第17回
組織レベルの理解及び運営管理
もし経営幹部が組織レベルのパフォーマンスを運営管理しないなら、彼らが期待できることはせいぜいささやかなパフォーマンス改善です。最悪の場合、その他のレベルの活動に対しては逆効果になります。我々は品質改善を主題として推進している多くの会社を観察しました。彼らは統計的なプロセス管理ツール(SPC)、ジャストインタイムテクニック(JIT)、製造資源計画システム(MRP Ⅱ)及び従業員への権限委譲の実践を採用しています。彼らは、なぜもっと劇的な品質向上がでないかと不思議に思っています。それは次の理由により明らかです。
多くの品質活動は、明示された組織戦略によって動かされていません。戦略は、ビジネスにおける品質の役割、競争優位性となる品質のタイプ及び全社レベルで顧客視点に立った品質評価指標を定義するべきです。
組織は最高の品質をサポートするようには設計されていません。教育訓練、ツール、システム及び手順における崇高な活動の影響は、組織構成と部門間の関係によって制限されています。
組織は品質を駆動力として、経営管理されていません。品質は戦術目標、パフォーマンスの追跡とフィードバック、問題解決又は資源配分の中には組み込まれていません。品質は典型的に部門毎に作り出されています(設計品質プログラム、エンジニアリング品質プログラム、製造品質プログラムなどにより)。組織図の「空白」に存在する物凄い脅威と機会は、無視されています。
これらの満足できない状況の各々は、組織レベルのパフォーマンス3変数の内の1つの変数の運営管理の失敗を示しています。我々はマネージャーが、組織目標、組織設計及び組織マネジメントを理解し、それらのレバーを操作することにより、「もっと上手く活動することができる」(本章の始めに引用された顧客、供給者、株主及び従業員の声)と信じています。
組織レベルを理解するニーズは、マネージャーに限っているわけではありません。アナリスト(人材スペシャリスト、システムアナリスト、IE担当者)は、組織レベルの特性と力学についても理解する必要があります。これを理解した情況において、彼らは組織パフォーマンスに最大の好影響を与える改善を適切に計画することができます。
組織レベルにおけるパフォーマンス変数
組織目標。組織レベルの目標は戦略です。良い戦略は、組織の次の項目を明確にします。
製品とサービス
顧客グループ(市場)
競争優位性
製品と市場の優先順位(強化分野)
その結果、組織目標は製品とサービスが、提供される様々な市場でどのように受け入れられることが期待されるかに関して述べられています。効果的な組織目標は、次のものを含みます:
組織の価値
顧客要求事項
財務面と非財務面の期待
各製品ファミリー及び市場に関する目標
確立され、増強されるべき競争優位性とそれぞれに対する期待
したがって、組織目標は以下でなければならない:
その会社が属する業界の重要成功要因に基づいている。
競合相手及び環境の詳細調査情報から導かれている。
ベンチマーク情報(見本となる組織のシステム及び部門のパフォーマンスに関する知識情報)から導かれている。
可能な限り定量化できる。
それを理解し、それによって導かれるべき全ての人に明瞭である。
第2章で紹介したComputec社の組織目標として、次のものが考えられます。
品質を短期収益のために決して犠牲にしない。
会社の顧客満足格付けを年末までに98%まで改善する。
2年以内に新しいソフトウェア製品を3つ、及び新システム統合サービスを2つ導入する。
3年以内に航空宇宙プロジェクトマネジメント市場の60%を占める。
年末までにComputec社をその競合相手と差別する新しい顧客サービスを2つ導入する。
来年の末までにソフトウェアパッケージの納品サイクルタイムを平均値で72時間まで減らす。
来年の末までに100%の正確さで注文に応える。
来年は収入で3億ドル、利益で3500万ドル、及び経済的付加価値(EVA)で1600万ドルを生み出して、その次の2年はこれらの財務指標の各々を毎年12%ずつ成長させる。
これらの組織目標は定量的で、顧客志向で、競争優位駆動型で、理解が容易です。これらと他の目標のもとでComputec社は、品質、生産性、サイクルタイム及びコスト管理の領域でパフォーマンス改善活動を始めることができます。これらの組織目標は、活動の高水準な成功手段として役立ちます。
最も重要な点として、Computec社の組織目標がその戦略から明確に導かれていることがあげられます。製品とサービス、市場、競争優位性及び優先事項に関する経営者の厳しい選択を反映しています。(これらの厳しい選択を特定する手助けをするために、我々は戦略開発と実施にシステム的見方、及び3レベルのパフォーマンスを適用する際に答える必要がある詳細な質問を開発し、第7章に示しています)