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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第22回
表5.1 ビジネスプロセスに関する例
一般的な主要プロセス |
ビジネス生成 |
製品/サービス開発と導入 |
製造 |
配送 |
請求書作成 |
オーダー遂行 |
顧客サービス |
保証管理 |
産業特有の主要プロセス |
ローン処理(銀行) |
保険金支払請求裁定(保険) |
補助金配分(政府) |
商品返品(小売) |
食品調理(レストラン) |
手荷物取り扱い(航空業) |
オペレータサービス(電気通信) |
ユーザマニュアル作成(コンピュータ) |
予約取り扱い(ホテル) |
一般的な補助プロセス |
正式な戦略及び戦術の計画立案 |
予算編成 |
新規採用 |
教育訓練 |
設備管理 |
購買 |
情報管理 |
一般的なマネジメントプロセス |
戦略及び戦術の計画立案 |
目標設定 |
資源配分 |
ヒューマンパフォーマンスマネジメント |
運用のレビュー/パフォーマンスの監視 |
自動車の出荷の例を続けると、販売員はオーダー用紙を完璧に記入し、そしてデータ入力する事務員は、正確に情報を入力し、そして倉庫のクルーは効率的に車をトラックに積み込みます。しかし、各要員のパフォーマンス改善の範囲は、受注、生産計画及び配送のサブプロセスで構成される論理的な出荷プロセス全体で制限されています。
各プロセスの要員は、彼らが貢献するプロセスの有効性と効率に確かに影響を及ぼしています。しかしながら、個人やチームの問題解決が、プロセス改善に殆んど焦点を当てていないことに気付きました。その上、多くの場合、1つの組織単位中で講じられる処置は、第2章で述べた部門サイロとシステムの部分最適化の補強に通じています。言いたいことは、優秀な要員でも弱いプロセスを補うことができなかったということです。あまりにも頻繁に、経営者は基本的な欠陥のあるプロセスに打ち勝つために、個人かチームの英雄的行為を当てにし過ぎます。なぜプロセスを修復して、競合相手に対する戦いで英雄の力を発揮させないのでしょうか?
最終的に、プロセスの有効性と効率が多数のビジネス上の決定を左右するという意味で、プロセスレベルは重要です。例えば組織の再構成は、それがプロセスパフォーマンスを改善しないなら意味をなしません。業務は、要員がプロセスのアウトプットに最もよく貢献することができるように設計されるべきです。不合理なプロセスを定着させる様な自動化は、お金の無駄です。組織パフォーマンスと個人パフォーマンスの間のきわめて重要な連携は、プロセスレベルの3つの変数、プロセス目標、プロセス設計及びプロセスマネジネントを通してのみ確立されます。
プロセスレベルにおけるパフォーマンス変数
プロセス目標。各主要プロセスと各補助プロセスは、1つ又は複数の組織目標に貢献するために存在します。したがって各プロセスは、1つ又は複数の組織目標に対する貢献を反映するプロセス目標に対して、評価されるべきです。我々の経験で言えば、ほとんどのプロセスは目標を持っていません。通常、機能(部門)には目標がある一方、ほとんどの主要なプロセスが部門の境界を横切っています。請求書作成が主要なプロセスである組織で働いているとして、プロセスの目標を聞くと、通常返ってくる返答は「部門の目標のことを聞いているのですね」というものです。我々が、請求書作成部門以外の部門で行われるステップを含んだ真の請求書作成プロセスの目標のことだと答えると、何のことを聞かれたか分からない困惑の表情を見ることになります。
我々は、評価が目標と或いはゴールに関連して行われる時、最も効果的であると信じます。プロセス目標は、組織目標、顧客要求事項及びベンチマーキング情報という3つの情報源を基に決められます。プロセスを超一流組織の同じプロセスと比較するプロセスベンチマーキングは、特に役に立ちます。特定のプロセスで世界最高レベルの組織は、競合相手ではないことが多く、調査するのは比較的簡単です。L. L. Bean社のオーダー処理と出荷プロセス、Wal-Mart社の在庫管理プロセス、3M社の製品開発プロセス、及びAmerican Express社の顧客サービスをベンチマーキングすることによって大くを学ぶことができます。
ソフトウェアとシステムエンジニアリング会社であるComputec社の組織目標の1つ(第4章参照)は、2年以内に3つの新しいソフトウェア製品と2つの新しいシステム統合サービスを導入することでした。当然のことながらComputec社の製品開発及び製品導入プロセスは、その戦略の成功の鍵となります。このプロセスに対して確立すべき目標には次のものを含みます。
最初の新ソフトウェア製品を9ヶ月以内、2番目を18ヶ月以内、及び3番目を24ヶ月以内に導入する。
12ヶ月以内に2つの新しいシステム統合サービスを導入する。
5つの新製品とサービスは、導入後の初年度に収入で440万ドルと収益で660,000ドルを産み出す。
航空宇宙産業の新しい製品又はサービスに対するニーズを最新の市場調査によって、把握する。
新しい製品とサービスは航空宇宙産業以外にも適用する。
新しい製品とサービスは、独自のものであり競合相手の提供するものより(顧客の目から見て)優れている。
新しい製品とサービスには、既存の販売と配送システムを活用する。
これらのプロセス目標は、組織目標と顧客要求事項に連係しています。それは単に製品開発部の目標ではないことに注目してください。これらのプロセス目標は、製品開発と導入のプロセスにおける製品開発部門のパートナーであるマーケティング部門、販売部門、製造部門及び市場サービス部門に期待されるパフォーマンスを反映しています。これらの目標を達成することによってプロセスは、会社の戦略ビジョンの実現に大きく貢献をします。