平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第41回

プロジェクトの明確化と計画

ステップ1:プロジェクトの明確化。このステップで、Larryは事業部門担当の副社長にインタビューします。目的は、Larry の今回の課題を喚起させた重要経営問題(CBI)を明確にすることです。支払請求マニュアルの最新化は、明確に、副社長が手をつけてほしいと思う問題への解決策のひとつです。Larryが有能な診断医たろうとすれば、問題を理解する必要があります。インタビューの間に、彼は、副社長の関心は請求に対する過度の支払いであることを見つけます。PCI社が支払請求に応じて支払っている平均総額は、高過ぎて、会社の利幅の足を引っ張っています。
プロジェクトの明確化の間に、Larryは次のようなことを行います。

問題が組織にもたらしている具体的な財政的影響の調査
期待支払い総額に基づいたプロジェクト目標の確立
プロジェクトの範囲の明確化
課題の依頼人、Larry及び他のキーパーソンが分析で果たす役割の明確化
制約事項、成功の見込み、及び、プロジェクトの価値に関する見通し

プロジェクトが理解され、3レベルのアプローチが依頼人に受け入れられたと想定して、Larryはステップ2に進むことにします。

ステップ2:プロジェクト計画の作成。このステップでは、Larryはプロジェクトのためのイベントと日取りを計画します。彼は、3レベルの各々の分析に必要なデータとデータの出所を慎重に提示します。

組織改善

ステップ3:組織のシステムの明確化。副社長の提案した「解決法」が問題を解決するかを確かめ、又、支払請求に影響する他の要素を特定するために、Larryは組織レベルに対する分析を始めます。第一歩はPCI社の関係マップを作りあげることです。マップが示す機能(部門)、インプット、及びアウトプットが、いかにプロジェクトを全体像の中に位置づけ、分析すべき領域を明確にすることに役立つかをLarryは知っています。図9.2はLarryの作成したマップです。

図9.2  PCI社の関係マップ(略)

ステップ4:組織のパフォーマンス改善の機会の特定。ステップ4では、Larryは、特に組織レベルの重要な問題を特定したいと望んでいます。彼は、副社長から提示されたテーマを中心に始めますが、他の改善の機会も見逃さないよう注意を払います。分析の間に、2番目に強い影響を与えるものとして支払請求処理費用を発見しました。

ステップ5:組織改善処置の特定。データ収集によって、Larryは、組織レベルに原因がある重要な問題をいくつか特定しました。これらの原因は組織レベルで取り扱うことができるとわかっているので、プロセスレベルと業務/遂行者レベルの徹底的な分析を行なわず、組織レベルにおける組織の目標、設計、及びマネジメントの3つのパフォーマンスニーズを基礎とした一連の活動提案を作成します。例えば、Larryは組織の目標と設計には問題を発見しないが、組織マネジネントでは、再保険部門と支払請求裁定部門がしばしば商品開発部門から出て来る保険商品を理解していないことを知ります。このフィードバックを商品開発部門に行い、顧客と商品開発部門とのより強い関係を確立するための手段を提案します。これらの組織レベルでの推奨事項は、Larryがプロセスレベルと業務/遂行者レベルで進めようとしているものに追加されます。

ステップ6:決められた実績報酬に伴うプロセス。プロセスレベルへの橋渡しをするため、Larryは支払額に影響する3つのPCI社のプロセスを分析します。彼は再保険プロセスと新製品開発プロセスを調査します。これら2つのプロセスに改善の余地があることも確かだが、Larryはプロジェクトの目標に最も大きい影響を与えるのは支払請求取り扱いプロセスだと特定します。この時点で、Larryはプロセスレベルで採用するステップを提示しながら彼の計画を最新化します。表9.1は、ステップ4、5及び6 でLarryが行なった作業の要約を示しています。

表9.1  PCI社組織分析及び改善ワークシート(略)