平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第42回

プロセス改善

ステップ7:プロセスの明確化。このステップでLarryは、支払請求の窓口及び監督者と共に、支払請求取扱のあるべき流れを示すプロセスマップを構築します。(大抵、このようなグールプでは、「あるべき」工程を作成する背景として、まず「現在の」工程を文書化する必要があります。)プロセスマップは図9.3に示します。

ステップ8:プロセスパフォーマンス改善の機会の明確化。支払請求取扱プロセスを文書化したのを受けて、Larryは各プロセスの望ましいパフォーマンス、現実のパフォーマンス、両者のギャップと、これらギャップの影響度を明確にします。彼は「支払請求の評価」と「支払請求の割り当て」のプロセスステップで顕著なギャップを明確にします。

ステップ9:プロセス改善処置の特定。ステップ9では、Larryはステップ8で明らかにしたギャップの原因とギャップを埋めるプロセスの改善処置を特定します。彼は、業務/遂行者レベルでの分析をせずに、プロセスレベルで対処できるものに提案事項を限定します。Larryはパフォーマンスに対する期待とフィードバックの提供を必要とする原因群を見いだします。

ステップ10:パフォーマンスに影響を与える業務の明確化。改善プロセスにおける最後のステップとして、また業務改善への掛け橋として、Larryはギャップがあるプロセスステップに携わっている仕事を特定します。分析によると、支払請求裁定担当監督者(支払請求窓口ではなく)が業務改善の段階では最も注意すべき業務であることが分かりました。表9.2は、ステップ8、9、及び10で行なったLarryの活動の要約です。

図9.3  PCI支払請求取り扱いのプロセス(略)

表9.2 PCI経過分析と改善ワークシート(略)

仕事の改善

ステップ11:業務の詳細の明確化。ステップ11では、Larry、及び、支払請求監督者とそのマネージャーのグループは、「望ましい」プロセスが必要とする支払請求監督者のアウトプットと業務基準を明確にします。表9.3はグループが支払請求監督者のために作成した業務モデルの一部をあらわしています。

ステップ12:業務のパフォーマンス改善の機会の特定。ステップ11で作成された業務モデルは、支払請求監督者が発揮すべきパフォーマンスについて説明しています。ステップ12では、Larryは、現在のパフォーマンスを業務モデルの基準と比較し、ギャップ、ギャップの影響度、及びギャップの原因を特定します。ギャップの原因を特定するのに、ヒューマンパフォーマンスシステム(第6章参照)を活用します。最も重大な発見の1つは、支払請求監督者が、支払請求を認定する時は、その時点の75%の回収率を特定すべきであるということです。現在はたったの18%しかこの作業を行なっていません。Larryの分析では、監督者は回収の可能性の確認に関して調査されたり、評価されたり又は教育訓練されたりすることがないことを指摘しています。表9.4は、監督者業務の分析をまとめたものです。

ステップ13:業務改善処置の特定。各ギャップに、Larryは、ギャップを埋めるための処置の提案を作成します。よく効く薬は病気に合うものであるという事実をふまえて、彼の処置活動計画の開作成は、ギャップの原因に焦点を合わせています。Larryのステップ13の一部分が表 9.5にあります。

表9.3  PCI 支払請求監督者の業務モデル(略)

表9.4 PCI職務分析ワークシート(略)

表9.5 PCIパフォーマンスシステム設計ワークシート(略)

実施

ステップ14:パフォーマンス改善処置の実施と評価。このプロセス最終段階では、Larryは、3レベルすべてに関する彼の分析を基に、提案事項をまとめます。彼は、提案事項が、3レベル全てに付いてのパフォーマンス要求を網羅していることを確実にするため、9つのパフォーマンス変数(第3章、表 3.2)に関連している質問をチェックリストとして使用します。彼は、提案事項に関しコスト便益分析を行い、高度な実施計画案を開発します。最後に、彼は彼と事業部門の副社長がプロジェクト定義と計画ステップの間に同意したプロセスに沿って、推奨パッケージの確認をします。

要約

一見、このプロセスは業務役割に関し過剰な要求に写るかもしれません。結局、Larryは、マニュアルの更新だけをするようにただ頼まれました。しかしながら彼は、その要求の元にある問題を発見するためにその仕事を引き受けました。3レベルのパフォーマンス改善プロセスを通して、より良い請求処理マニュアルで実現するよりもよりはるかに重要な回収をもたらす対応処置を特定しました。
確かに、このプロセスはLarryの時間の20日間を占領することになりました。しかしながら、我々はその20日の分析のアウトプットを調査し、20日間のマニュアル作成のアウトプットと比較しなければなりません。また、我々はLarryが3レベルのアプローチの一貫性を確保した近道を使用して、活動時間と経過時間を大幅に短縮できたであろうことを認めなければなりません。
Larryは効果的な「パフォーマンスの医師」です。彼は具体的な方法で病気を正確に指摘しました。彼は組織、プロセス及び業務/遂行者レベルで患者を徹底的に診断し、そして彼の診断に基づいた処理を提案しました。彼は、ラインパフォーマンスの分析と改善という模範的なスタッフサービスを提供しました。