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平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第71回
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ヒューマンパフォーマンスシステム管理
機能する組織の設計
Ace Copiers社は実在の会社ですが、本書では名前と製品を若干変更してお話することにします。機能する組織構造を構築するため、Ace社は説明した9ステップのプロセスに従いました。そのプロセスのアウトラインと産物は、次の通りです。
ステップ1:明確な戦略を確立する。Ace Copiers社はオフィス複写機とそのアクセサリを設計し、製造し、配送し、アフターサービスをしています。過去18カ月の間に、それまでの高度成長は鈍る傾向となり、マーケットシェアをかなり失いました。Ace社は3年間でただ2つの新製品を投入しただけでしたが、それは業界平均よりかなり低レベルのものでした。2つの新製品の開発と製造は予算をオーバーし、しかもどちらのコピー機もよく売れませんでした。
これらの問題が、Ace社の経営会議に核心の探求へ駆り立てました。経営会議のメンバーは、山で合宿し包括的な戦略を持って戻りました。 その戦略の主要なものは、次の5年間に毎年2つの新製品を投入するというものでした。
ステップ2:現在(Is)の組織システムを文書にし分析する。図14.3はAce社の元の組織図です。図14.4は元の関係マップとその断絶です。
ステップ3:現在(Is)のプロセスを文書にし分析する。Ace社は、システムの戦略とシステムに潜む断絶を考慮し、Ace社は、最も重要なプロセスとして製品の開発プロセスと投入プロセスを特定しました。組織横断グループは、現在「Is」プロセスマップを展開し、断絶を明確にしました。
ステップ4:あるべき姿“Should”プロセスのフローと評価指標を開発する。図14.5はAce社のチームが製品の開発プロセスと導入プロセスのために展開したあるべき姿“Should”マップの一部です。マップを完成した後に、チームは製品の開発プロセスと投入プロセスのための評価指標一式を新たに作りました。 これらの評価指標は次のような基準に通じます。
新製品は販売量と収入目標を達成する。
新製品は9カ月以内に投入される(新製品の概念設計から市場導入訓練、及び、最初の5,000ユニットの製造まで)。
新製品のコスト単価は予算以内であること。
開発と投入コストは予算以内であること。
これらの最終評価指標と標準から、プロセスの重要な継ぎ目に対する下位の評価指標と基準を作りました。
ステップ5:組織図を設計する。あるべき姿“Should”の製品開発プロセスのステップはプロセスマップの複数の帯(band)に入っていたので、チームメンバーは各機能に責任を割り当てていました。チームメンバーは、今までの製品開発部門を、製品設計部門(製品の概念を決める)と製品技術部門(コピー機の内部及び、外装の構成に責任がある)の2つに分けることに決めました。新しい製品設計部門は、マーケティング部門、販売部門と一緒になって、新しい統合化された業務ユニットの形となりました。
この業務ユニットの組織構造は、Ace社がより速く製品開発を決定し、その実現を迅速に実行することを可能にしました。製造に設置された製品技術部門は、コピー機の部品構成を徹底的に研究し、低コストでコピー機を作ることを可能にしました。
組織図を最終的に決める前に、Ace社は、他の主要プロセスに対して、新組織体制をテストしてみました。Ace社は、製品開発プロセスだけを最適化し、他の主要なプロセスを副次的な最適化に終わらしていないことを確認したかったのです。(部門の孤立をサイロに見立てるならば、プロセスの孤立はトンネルとみることができる。)図14.6は新しいAce社の組織図です。図14.7は新しい関係マップです。
ステップ6:各部門の機能モデルを開発する。新しい部門の責任を明確であることを確実にするために、Ace社のチームは製品開発の役割/責任マトリクスを作りました。このマトリクスの一部が表 14.1です。各部門に割り当てられたプロセス責任に、評価指標と目標が加えられています。これらの責任(アウトプット)と目標は、各部門の機能モデルになりました(第12章参照)。