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平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第8回
このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。
条項 4.4 Design control(設計管理)
条項 4.4.1 General(一般)
- 【ポイント】
- ① 製品の設計を管理し,確認する手段を設定し,文書化して,実行する。
- 【背景】
- ① 設計は,製品製造の全体の流れのなかでは上位に位置し,そこでの行為は下位の部門に多大の影響を及ぼす。
- ② 川上で流されたものは,何らかのアクションがないかぎりは,そのまま川下に流れていく。
- ③ 顧客から求められている製品およびサービスを仕様書として表現する手段は,図面,計算式,試作品などであり,これら手段に求められている要求事項をすべて盛り込む。
- 【企業内実施例】
- ① 製品受注後の設計の進め方を定めた基準がある。
- ② 設計の基準通りに実行されている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 計画,設計,確認の業務ステップを説明してください。
- ② 設計の進め方を教えてください。
- 【不適合】
- ① 業務ステップが明確にされていない,基準がない。
条項 4.4 Design control(設計管理)
条項 4.4.2 Design and development planning(設計及び開発の計画)
- 【ポイント】
- ① 製品の設計推進における責任を明確にする計画書を作る。
- ② この推進計画書は状況に応じて計画変更する。
- ③ 設計の活動を,適切な手段を与えられた有資格者に割り当てる。
- 【背景】
- ① 誰が,いつまでに設計の仕事を終了するかは,品質と納期とコストの確保に大きな影響を与える。
- ② 設計業務は知的集約労働であるだけに,開始当初に投入時間を精度よく見積もり,完成納期を予測することは困難である。したがって,推進の状況に応じて計画を変更していくことを,関係部門と連携をとりつつ進めていくことが重要になる。
- ③ 設計という仕事はノウハウの塊であり,個人の能力がそのまま結果に反映する。したがって,設計に従事する人は,単に業務負荷から割り当てられるのではなく,経験・資格・能力から割り振られるべきである。
- 【企業内実施例】
- ① 設計の計画書(大日程計画)作成の方法,計画変更の方法,責任部門,関係部門などを定めた基準がある。
- ② 基準に従って計画書が作成され,責任分担,日程などが明確になり,徹底されている。
- ③ 大日程計画の推進状況がチェックされ,状況に応じて大日程計画を修正,徹底がなされている。
- ④ 設計業務を担当する人の職務・等級・格付けなどの基準がある。
- ⑤ 基準に則って負荷の割り当てがなされている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 計画推進時の関係部門はどこですか?
- ② 設計大日程計画を見せてください。
- ③ どのようなときに大日程計画を変更するのですか?
- ④ 設計の経験,資格は何で判断していますか?
- ⑤ その判断基準を説明してください。
- ⑥ 設計者の割当表を見せてください。
- 【不適合】
- ① 設計推進の基準がない,不十分である。
- ② 計画変更するときの基準がない,不十分である。
- ③ 基準に達していない人が設計を行っている。
- 〔注〕活動の割当てについては会社ごとに何らかの資格制度があるので,その制度が明確になっており,実行されていればよい。
条項 4.4 Design control(設計管理)
条項 4.4.3 Organizational and technical interfaces
(組織上及び技術上のインタフェース)
- 【ポイント】
- ① 設計を推進するためにインタフェース(相互関連)を明確にしておく。ここでいうインタフェースとは,製品検討会議,手配会議,評価(審査)会議などの事をいう。
- ② それらインタフェース活用の仕方を文書化し,記録に残し,やり方を定期的に見直す。
- 【背景】
- ① 設計は設計部門だけでできることではない。良い設計とは,仕様書に記述されたものを完成させるのに,社内の現有技術を見定め,かつ時代の先端の技術を,無理のない範囲で取り入れるような設計のことである。
- ② 加工技術の選択,加工順序,公差の設定,材料,計測など,関係部門との検討課題は数多くある。
- 【企業内実施例】
- ① 設計推進上,関係部門と情報のやりとりをする会議などが決まっている。
- ② 基準通りに会議などが行われている。
- ③ 工程ごとの品質達成度,課題の明確化などを定めた基準がある。
- 【審査時の質問事項】
- ① 設計推進のための会議などについて説明してください。
- ② その会議の基準を見せてください。
- ③ その会議はいつ,どのように,誰が参加して行われるのですか?
- ④ 会議録を見せてください。
- 【不適合】
- ① インタフェースが明確になっていない。
- ② 基準の見直しが行われておらず,現状との乖離が大きい。
条項 4.4 Design control(設計管理)
条項 4.4.4 Design input(設計へのインプット)
- 【ポイント】
- ① 設計にインプットする事項を明確にし,文書化する。
- ② 不明確または矛盾する事項は,インプット事項作成責任者とともに事前に解決をしておく。また,あらゆる契約内容の確認結果を考慮にいれる。
- ③ 適用される法律や規制上の要求事項を文書化する。
- 【背景】
- ① ここでは,設計業務を推進するのに最も基本となる仕様の検討において不完全,不明確事項を解決し,具体的インプット事項を明確化(文書化)することを求めている。日常の設計業務において,設計者が無意識のうちにインプットして実施していることでも文書に書き表してみると,意外と品質問題の事前予防につながるものである。
- 【企業内実施例】
- ① 顧客の要求事項,安全・環境条件,製造工程能力などの基準が文書化されている。
- ② 基準通りにインプット事項が設計に反映されている。
- ③ 不完全・不明確事項が関係者のあいだで検討され,明確にされている。
- ④ 法的規制の要求事項を網羅する仕組みができている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 設計へのインプット事項は何ですか?また,そのなかで法的規制にはどんなものがありますか?
- ② インプット事項を文書化したものを見せてください。
- ③ 顧客の要求仕様のなかで不明確であった事項にどんなものがありましたか?
- ④ その不明確事項をどのように解決しましたか?
- ⑤ その記録を見せてください。
- 【不適合】
- ① 設計へのインプット事項が明確にされていない。文書化されていない。
- ② 不完全・不明確事項の検討がなされていない。その記録がない。
- 〔注〕設計へのインプット事項としては,たとえば次のものがある。性能特性,官能特性,据付特性,法的規制など。
条項 4.4 Design control(設計管理)
条項 4.4.5 Design output(設計からのアウトプット)
- 【ポイント】
- ① 設計のアウトプットは文書化し,インプットした事項を満たしている。
- ② 設計のアウトプットは合否判断基準を含んでおり,製品の安全性およびその機能を決定づける設計上の特性を明確にしている。
- ③ 発行前に設計のアウトプット文書を再確認する。
- 【背景】
- ① 設計のアウトプットとして何が期待されているかを明確にし,設計にインプットされた要求事項が文書化されたアウトプットと一致するかを確認することが要求されている。
- ② ISO 9000シリーズ規格では,確認において技術的内容を問題にするのではなく,あくまでも確認のための管理システムをチェックするのであり,また実際にそのシステムが実行されていることを実証する。
- 【企業内実施例】
- ① 設計のアウトプット(図面,計算書,試作品など)の保管方法,管理方法を明確にした基準がある。
- ② 基準通りにアウトプットが保管,管理されている。
- ③ 設計のアウトプットなどで製品の安全性,致命的な部分が明確にされている。
- ④ インプットとアウトプットとの合致性を確認する方法,内容,サンプルなどを定めた基準がある。
- 【審査時の質問事項】
- ① 設計のアウトプットとしてはどんなものがありますか?
- ② 設計のインプットとアウトプットの合致性を確認する仕方を説明してください。
- ③ 設計のアウトプットを発行前にチェックする方法を教えてください。
- 【不適合】
- ① 設計のアウトプットが明確でない。定められた通りに実行されていない。
- ② 設計のインプットとアウトプットが一致していない。
- 〔注〕 設計へのアウトプットとしては具体的には次のようなものになる。製品仕様書,設計図面,設計計算書,試作品など。
条項 4.4 Design control(設計管理)
条項 4.4.6 Design review(デザイン・レビュー=設計審査)
- 【ポイント】
- ① 設計審査のやり方を文書化し,計画し,実施する。
- ② 設計審査に参加する者を基準に基づいて決める。
- ③ 設計審査の記録を作成,保管する。
- 【背景】
- ① 設計の質は以降のステップに多大の影響を与えるため次のステップに移る前に設計審査(Design review)を行うことが多くの企業で実施されている。
- ② 設計審査は,設計における各段階で行われることが普通であり,通常,次の段階で実施されることが多い。
- DR1 : 構想設計が終了した段階で行う。
- DR2 : 試作設計に基づき試作品が完成した段階で行う。
- DR3 : 量産試作設計に基づき量産試作品が完成した段階で行う。
- DR4 : 量産設計が終了した段階で行う。
- 【企業内実施例】
- ① 各段階での設計審査のやり方が文書化されている。
- ② 設計審査を行う人の能力,資格が明確になっている。
- ③ 設計審査が基準通りに行われ,その実施記録が残っている。
- ④ 設計審査の結果のフォローが確実に行われている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 設計審査基準を見せてください。
- ② 設計審査を行う人の能力,資格は何ですか?
- ③ 設計審査の記録を見せてください。
- 【不適合】
- ① 設計審査基準がない,またはあっても不十分である。
- ② 基準通りに設計審査が行われていない,または記録がない。