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平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第14回
このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。
条項 4.14 Corrective and preventive action(是正処置及び予防処置)
条項 4.14.3 Preventive action(予防処置)
- 【ポイント】
- ① 不適合の潜在的原因を分析し,何が予防処置として有効かを決める。
- ② とられた予防処置については,それが本当に効果的であったかどうかを確認する。
- 【背景】
- ① 不適合を予測して事前に処置をとることは経験と知識がなくてはできない。従来発生した不適合の一覧を基に予防処置をとることが最も一般的に行われている。
- ② 繰り返し発生するタイプの不適合と,突発的に発生するタイプの不適合とではその予防処置は異なる。前者のタイプは今までの経験で予防処置をとることが可能であるが,後者のタイプは設計を含めた深い調査と分析,洞察が必要である。
- 【企業内実施例】
- ① 過去の不適合発生の原因が調査され,一覧表になっている。
- ② 品質記録,サービス報告,顧客の苦情のような適切な情報源が決まっている。
- ③ 予防処置をとる手順が文書化されている。
- ④ 予防処置の効果の確認と変更処置の手順が文書化されている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 予防処置は何に基づいて実施していますか?
- ② 予防処置をとる手順を説明してください。
- ③ 予防処置の効果はどのようにして確認していますか?
- ④ とられた処置は経営者の見直しにフィードバックしていますか?
- 【不適合】
- ① 予防処置がとられていない。→予防処置をとった記録がない。
- ② 予防処置をとる手順が基準化されていない(文書化されていない)。
条項 4.15 Handling, storage, packaging, preservation and delivery
(取扱い,保管,包装,保存及び引渡し)
条項 4.15.1 General(一般)
- 【ポイント】
- ① 製品の取扱い,保管,包装,保存,引渡しについての手順を基準化する。
- 【背景】
- ① 品質問題で意外に多いのが破損,汚れなどの取扱いにかかわる問題である。またアクセッサリー,取扱いマニュアルなど同梱品の欠品も,よくあるクレームである。
- ② 顧客が消費者の場合は,一番身近な問題であるために,メーカー(供給者)に対してのイメージが製品そのものの機能よりも,これらの破損,欠品などの評価で決まってしまうことさえある。
- 【企業内実施例】
- ① 製品の取扱いから引渡しまでの一連の手順(取扱い,損傷防止,劣化防止などの)が文書化されている。
- 〔例〕
- 先入れ・先出しの原則が定めてある。
- 静電気についての対策,防御方法が定められている。
- 担当者の教育を実施している。
- 保管期間が定められている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 製品の取扱いから引渡しまでの一連の手順を説明してください。
- ② 倉庫を見せてください。
- 【不適合】
- ① 製品の取扱いから引渡しまでの業務の基準化がなされていない,または不十分である。
- ② 倉庫を中心に現場の状態がひどい。たとえば5Sや安全対策など。
(審査員は,ひどいと判断するレベルをあらかじめ決めておく)
条項 4.15 Handling, storage, packaging, preservation and delivery
(取扱い,保管,包装,保存及び引渡し)
条項 4.15.2 Handling(取扱い)
- 【ポイント】
- ① 製品の損傷,劣化を防ぐ方法を基準化する。
- 【背景】
- ① 多くの製品は段ボールに入れられ,木製のパレットの上に載せられるか特性の容器(コンテナー)に入れられて取り扱われる。
- ② したがって,ダンボール,パレット,容器などが破損していないか? 積み上げの段数は適当か? 逆に(天地反対)積み上げていないか?など現場での管理の仕方を具体的に文書化しておく必要がある。
- ③ 倉庫にある搬送機器(フォークリフト,ハンドリフトなど)の整備,保守に対しても配慮がほしい。
- 【企業内実施例】
- ① 製品の保管,搬出から顧客への引き渡しまでの取り扱いの仕方について定めた基準がある。
- ② 製品の保管,搬出から顧客への引き渡しまでの取り扱いが,基準に従って実施されている。
- 【審査時の質問事項】
- ① 製品の倉庫における取扱いの仕方を説明してください。
- ② 取扱いについてのマニュアルはありますか?
- あればその内容を教えてください。
- ③ 製品の移動はどのような方法で行っていますか?
- →現場へ連れて行ってください。
- 【不適合】
- ① 取扱いの基準がない,またはあっても不十分である。
- ② 基準やマニュアルと,現場のやり方に不一致がある。
条項 4.15 Handling, storage, packaging, preservation and delivery
(取扱い,保管,包装,保存及び引渡し)
条項 4.15.3 Storage(保管)
- 【ポイント】
- ① 出荷待ちの製品に保管区域,貯蔵室を設ける。
- ② 保管区域への搬入,搬出を承認する仕組みを定める。
- ③ 劣化検出のために,保管中の製品を期間ごとに評価する方法を基準化する。
- 【背景】
- ① 完成した製品はいわゆる倉庫で保管するが,その環境(塵挨,整理整頓,温度・湿度)を製品に適するように整備することが大切である。
- ② 倉庫は環境維持の面と保安・保全の面から通常は独立した区域となっており,関係者以外立入り禁止になっているのが普通である。
- ③ 製品によっては保管期間が重要管理ポイントになっており,期間中に定期的に劣化を検出することが基準化されている。
- 【企業内実施例】
- ① 製品保管中の損傷,劣化を防ぐ条件(温度や湿度など)を定めた基準がある。
- ② 基準に合致した条件下で製品が保管されている。
- ③ 製品の搬入・搬出の責任者が定められ,実行する基準がある。
- ④ 製品の搬入・搬出を先入れ・先出しの原則で実行する基準がある。
- ⑤ 保管中の結果を検出する期間,評価方法を定めた基準がある。
- 【審査時の質問事項】
- ① 製品保管中の損傷,劣化を防ぐための基準を説明してください。
- ② 搬入・搬出の責任者は誰ですか?それはどのように規定化されていますか?
- ③ 製品の搬入・搬出の先入れ・先出しの仕方を教えてください。
- ④ 製品保管中の劣化を検出するための方法を定めた基準を説明してください。
- 【不適合】
- ① 製品保管中の損傷,劣化を防ぐための基準がない。
- ② 製品保管中の劣化を検出する期間が定められていない,または基準がない。
- ③ 定められた期間内に製品の評価をしていない。その記録がない。
条項 4.15 Handling, storage, packaging, preservation and delivery
(取扱い,保管,包装,保存及び引渡し)
条項 4.15.4 Packaging(包装)
- 【ポイント】
- ① 製品の包装,包装への表示を包装材料も含めて管理する。
- 【背景】
- ① 製品の包装仕様は,設計あるいは技術部門が,ユーザーの国民性,使われる場所,国,地域によって決める。
- ② 包装仕様の決定にあたっては,輸出仕様の場合,温度,湿度などの環境ストレスも無視することはできない。
- ③ またダンボールの強度も,出荷から客先への全搬路で製品を保護することを保証するものでなくてはならない。
- ④ 製品の外装箱には,仕様で制定されたロゴ,製品名などが印刷されている。
- 【企業内実施例】
- ① 製品品質を保持するため包装,マーキングの方法などを定めた基準がある。
- ② 製品の包装,マーキングなどが基準通りに実施されている。
- ③ 製品が客先に渡るまで(供給者の責任が終わるまで)の製品保護の方法を定めた基準がある。
- ④ 包装材料の管理について定めた基準がある。
- 【審査時の質問事項】
- ① 包装,マーキングの方法などの仕方を定めた基準がありますか?
- ② 製品が客先に渡るまでの製品保護の方法を定めた基準がありますか?
- あればその基準を説明してください。
- 【不適合】
- ① 包装,マーキングの方法などが基準で定められていない。あるいは基準通りに実施されていない。
- ② 包装材料の管理方法が基準に定められていない。あるいは基準通りに実施されていない。
条項 4.15 Handling, storage, packaging, preservation and delivery
(取扱い,保管,包装,保存及び引渡し)
条項 4.15.5 Preservation(保存)
- 【ポイント】
- ① 製品の保存と隔離を適切な方法で実施する。ここでいう保存とは「初期の状態のまま,あるいは現状のままに維持すること」をいい,具体的には化学品,生鮮品などの管理を対 象にしている。
- 【背景】
- ① 4.15.3項の保管は「損傷したり破損しないよう管理すること」をいい,本項の保存とは区別している。
- ② 保存は取り扱っている製品によってかなり違いがあるが,原料から半完成品,完成品まで,あらゆる工程において配慮を必要とする場合がある。
- 【企業内実施例】
- ① 製品の保存と隔離について,その適用と手順を文書化している。
- ② 製品の保存と隔離を定められた通りに実施している。
- 【審査時の質問事項】
- ① どんな製品について保存と隔離の手順を定めていますか?
- ② 保存と隔離の手順書を見せてください。
- ③ 製品の保存がされている場所に連れていってください。
- 【不適合】
- ① 製品の保存と隔離が“適切に”行われていない。
- 〔注〕“適切に”の解釈であるが,レベルの判断としては保存場所の5Sがある。