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本シリーズ「内部監査の実践」では、組織の規定に沿って、具体的にどのように監査するかを、実例を中心に説明しています。その際、適合性だけでなく、有効性の監査も目指したいということで「ナラティブ内部監査」を採用しています。
ナラティブ内部監査は、平林良人の『つなげるツボ』Vol.297
(https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/02/17/vol-297/)から
ナラティブ内部監査は、平林良人の『つなげるツボ』Vol.342
(https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/02/17/vol.342/)まで
を参考にしていただくと良いと思います。
前回より、購買部に対してA社【取引先管理標準 KBJ103】に基づいた実施しているナラティブ内部監査を説明していますが、今回はその3回目です。
【取引先管理標準 KBJ103】には次の記録を取り保管することが規定されています。
- (内部監査員)
【取引先管理標準 KBJ103】に決められている4種類の記録を見せてください。 - (被監査者)
はい、次の4種類の過去3年分の記録を机の上に用意しました。 - ① 新規発注先評価表
- ② 購買先管理台帳
- ③ 2者監査の結果
- ④ 受入検査結果
- (内部監査員)
4種類の記録の説明をお願いします。 - (被監査者)
①~④の記録については次のように説明させていただきます。 - ① 新規発注先評価表
過去3年記録はありません。当社と新規に取引を希望する組織はないのですが、技術部が新規に取引をしたいという組織は、5社ありました。会社経歴、会社概要はファイルに綴じられています。組織を訪問して評価は行っていません。技術部がすでに実地評価していたからです。 - (内部監査員)
過去3年記録はありませんと言われましたが、5社の会社経歴、会社概要はファイルが記録だと思います。また、技術部が実際に新規会社を訪問しているならばそのルポルタージュを記録として保管しておかれることを指摘します。 - (被監査者)
少しむっとして・・・、技術部の訪問記録は技術部に聞いてください。
技術部の活動記録を当部(購買部)の指摘事項にするということには納得がいきません。 - (内部監査員)
まってください、指摘事項ということに納得がいかないならば、取り下げます。ただ、新規取引先を評価、登録するという活動は会社の活動としてなくてはならないものだと思います。新規購買先を評価登録するという活動をする部門は、購買部でも技術部でも会社全体から見ればどちらでもよくて、規定に基づいてきちんと行うことが必要なことであると思いますが如何でしょうか。 - (被監査者)
- すみません、少し感情的になってしまいました。いままで、指摘をもらうことはご法度でしたので・・・
確かに取引先管理規定に沿って業務を行うことは重要なことであると思います。 - (内部監査員)
ご理解いただいてありがとうございます。
ところで、記録は①~④まで残さないと本当にいけないのでしょうか?- ① 新規発注先評価表
- ② 購買先管理台帳
- ③ 2者監査の結果
- ④ 受入検査結果
- (被監査者)
ええっ、記録を取らなくていいというのですか? - (内部監査員)
そうではありません、記録を取るにはそれなりの時間がかかります。取った記録をその後活用するならば良いのですが、活用しないのであれば取っておく価値が本当にあるのか疑問に思っても良いのではないかと思いまして・・・ - (つづく)
【取引先管理標準 KBJ103】
(目的)
- 第1条 この標準は全社の取引先(購買先)の管理に関する業務の進め方を規定し、取引先と互いの便益を増進させることを狙いとする。
- (新規取引の取引先評価)
- 第2条 購買部担当者は、新規取引先との取引開始に当たっては以下の手順で新規取引先の評価を行い、購買部長の許可を得て新規取引を行う。
- ①新規取引申込書
当社と新規に取引を望む会社には「新規取引申込書」に経歴書、会社概要を添付した書類一式の提出を要請する。 - ②新規取引要望書
当社から要望して取引を始める新規取引先に対しては①の書類提出は不要とする。新規取引を望む当社部署に「新規取引要望書」の提出を要請する。 - ③書類審査
- ①、②の書類を審査する。審査項目は次の通りである。
- a. 主要取引先
- b. 会社沿革及び経営者
- c. 財務状況
- d. 社会的評判(必要に応じて信用調査をする)
- ④実地評価
購買担当者は、必要に応じて、技術担当者と新規取引先を訪問し、会社の実態を調査し評価する。 - ⑤最終審査
書類審査と実地評価の結果は「新規発注先評価表」に記入し記録に残す。評価がよければ購買部長に決済を求める。 - (継続取引先の評価)
- 第3条 購買部担当者は毎年2回、原則9月、3月に継続して取引をしている取引先を次の評価基準で評価する。
- ①納入品品質 A,B,C、D 4段階評価
- ②納期 A,B,C、D 4段階評価
- ③コスト A,B,C、D 4段階評価
- 評価結果に一つでもD評価があった場合は、購入している部署の担当者と協議をして、今後の取引について協議をする。
協議の結果は「購買先管理台帳」に記入し記録に残す。 - (評価結果に基づく処置)
- 第4条 購買担当者は、取引先の評価結果に基づき、以下の必要な処置を行う。
- a. 継続取引
- b. 改善要求
- c. 取引停止
- 必要な処置は「購買先管理台帳」に記入し記録に残す。
- (取引先の管理)
- 第5条 取引先は「購買先管理台帳」に登録されている会社とし管理の対象とする。取引先に対する管理の方法及び程度は、その発注する購買品が当社の品質マネジメントシステムのプロセス又は当社の製品(サービス)に及ぼす影響に応じて決定する。
- 2.購買担当者は、当社又は当社の顧客が取引先で2者監査を行う場合には、取引先に受け入れの要請をし、事前に監査の要領を取引先に説明をする。
- 2者監査の結果は記録に残す。
- (受入検査)
- 第6条 購買担当者は、発注した仕入れ品や外注加工品が当社発注仕様書に合致しているかの受入検査を実施する。受入検査は技術部発行の「部品受入検査基準」に基づき行う。
- 員数確認、目視検査以外の計測器類を使っての受入検査は品質保証部で行う。
- 検査の結果は記録に残す。
(付則)
この規程は2020年10月1日から実施する。
この規程の改廃にあたっての立案者は購買部長とする。