平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第31回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

4.1.1 品質方針
会社の品質方針を述べ,社長がサインをしている。
われわれは,全従業員が一丸となって,顧客および消費者の全員に喜ばれ,愛される製品作りを目指すため,社内に品質保証システムを構築し,4M,すなわち人,機械,方法,材料の管理を徹底することで,ISO 9002の規定要求事項を遵守していることを,ここに声明する。

  1. 顧客第一主義の徹底
    われわれは,顧客とは何かを自問しながら,常に顧客のニーズを把握し,その要求に適合する製品作りをするためのシステムを確立し,維持する。
  2. システムの遵守
    何人といえども,会社の製品品質に関与する者は,会社の品質システムに規定されている事項を遵守しなければならない。
    外部協力工場を含め,定期的に,ここに定めるシステムが有効に働いているかどうかをチェックする。
  3. ボトムアップ
    製品の品質を支えているものは,上記2.で述べた,製品品質に関与する者全員の力である。大多数の人々の働くこの現場にこそ,品質の各要素を育てていく芽が存在することを,経営者は常に意識していく。

この声明を全従業員に徹底させるため,各部門の責任者は,その周知を確実に行うと同時に,各部門ごとに掲示する。

社長名
サイン

4.1.2.1 責任及び権限
組織図に掲載した役職の責任と権限を次のように規定している。

  1. 社長
    • ① 会社経営方針の策定と実行に全責任を負う。
    • ② 会社の年度事業計画の設定と実施に全責任を負う。
    • ③ 安全の確保と品質の向上のために経営会議メンバーを管理する。
    • ④ 市場における顧客からのコストと納期の要求に対して対応をはかる。
  2. 人事・総務部長
    • ① 地域社会貢献委員会の委員長を務める。
    • ② 組織・人事・労務管理に責任を持つ。
    • ③ 教育・訓練,社員の啓蒙活動を進める。
    • ④ 雇用・採用活動に責任を持つ。
    • ⑤ 組合との窓口である。
    • ⑥ 副資材品の購入を管理する。
    • ⑦ 建物の営繕に責任を持つ。
  3. 経理部長
    • ① 年間予算を立案し,その実行管理に責任を持つ。
    • ② 従業員の給与・支払管理をする。
    • ③ 売上金回収に責任を有する。
    • ④ 原価管理と予算・実績差管理を推進する。
  4. 購買部長
    • ① 外注評価と市場調査および外注開拓を進める。
    • ② 単価調整と注文書の発行に責任を持つ。
    • ③ 外注活動の監視と指導に責任を持つ。
    • ④ コスト低減活動を進める。
  5. 生産管理部長
    • ① 顧客注文を生産計画にタイミングよく置換する。
    • ② 営業と販売のバランスを監視し,製造工場の能力を管理する。
    • ③ 生産進捗を管理し,緊急注文への対応のための生産計画変更を行う。
    • ④ 生産の納期確保に責任を有する。
    • ⑤ 材料・部品の工場への供給に責任を持つ。
    • ⑥ コンピュータ生産管理システムの構築と運用に責任を持つ。
    • ⑦ 倉庫内の安全と作業環境に責任を持つ
  6. 品質保証部長
    • ① 品質システムの管理責任者である(品質システムの確立と運営に責任を持つ)。
    • ② 経営者による品質システム見直し活動の事務局となる。
    • ③ 不適合対応のための是正処置の推進に責任を有する。
    • ④ 要求されるすべての検査・試験が規定通り実施されるかを管理する。
    • ⑤ 外注メーカー一覧に記載されているすべてのメーカーの品質監査を実施する。
    • ⑥ 経営会議に定期的に品質状況レポートを提出する。
    • ⑦ 品質保証部門の全従業員の教育・訓練に責任を持つ。
  7. 技術部長
    • ① 部門の手順書の編集とその維持に責任を持つ。
    • ② 全社の技術的サポートの要求に応じる責任を有する。
    • ③ 経営会議に定期的に技術活動状況レポートを提出する。
    • ④ 工場の手順書をして顧客の要求事項に合致せしめる責任を有する。
    • ⑤ 技術部門の従業員全員の教育・訓練に責任を持つ。
    • ⑥ すべての部門の従業員の安全と作業環境に責任を持つ。
    • ⑦ 技術部門の活動諸経費を効率的にする。
    • ⑧ コスト低減活動の技術分野の推進に責任を有する。
  8. 工場長(第1工場,第2工場)
    • ① 就業規則に規定されている従業員遵守事項を守らせる。
    • ② 効率とコストを考慮しながら,製造要求に見合う人員の雇用に責任を持つ。
    • ③ 製造活動レポートを定期的に経営会議に提出する。
    • ④ 工場内の安全と作業環境に責任を持つ。
    • ⑤ 従業員自主活動(QCサークル活動,5S,提案活動)の援助と育成をする。
    • ⑥ 工程内の品質と生産出来高に責任を持つ。
    • 〔注〕 条項4.1.2.3の“管理責任者”については,6.の“品質保証部長”のなかの①にう他われている。

4.1.2.2 経営資源

  1. 会社は,検証の手段として,内部品質監査と検査,試験を掲げる。
  2. 品質保証部長は,内部品質監査と検査,試験に関する手帳を標準書として定める。
  3. 会社は,検証業務には,十分に訓練された人材をあてる。

4.1.3 マネジメント・レビュー(経営者による見直し)
会社品質システムの総合的な見直しについて述べている。

  1. 会社の品質システムは,この品質マニュアルでその責任と権限を定められた経営者,管理者によって1回/月,見直しされる。
  2. 見直しにあたっては,内部監査報告,月度品質状況報告,新製品推進状況などが討論され,課題については次回の見直し会議までに是正活動が行われる。
  3. 見直しのすべての記録は,正しく保管される。

会社の品質システムの拠るべき規格がISO 9002であることを明確に示している。

4.2.1 一般

  1. 会社は,ISO 9002;1994,JIS Z 9902;1994に準拠した,文書化した品質システムを運営する(条項4.5“文書及びデータの管理”を参照)。
    この文書化した品質システムは,製品の品質に影響を及ぼすであろうすべての活動購買,サービス,製造,出荷などの運営方法とその責任の所在を明確に規定する。
  2. 書化した品質システムは,この品質マニュアルの中にその概要が記述されている

4.2.2 品質システムの手順

  1. 品質保証部は,この規格の要求する事項を他部門の協力を得て,標準書,手順書に文書化する。
  2. 会社は,業務が文書化された通りに実行されることを全部門に要求する。

4.2.3 品質計画

  1. 会社は,今までに実績のない新要素を含んだプロジェクト,新製品を起こすときには,品質問題を未然に防ぐために品質企画を立てる。
  2. 新たに品質企画を立てるか否かは,品質保証部長が決定する。
  3. 品質保証部長は,品質企画を立てると決めたプロジェクト,新製品について,次の事項の推進を行う。
    • 1)品質計画書の作成。
    • 2)工程,検査装置,その他製造資源の明確化。
    • 3)新技術の明確化。
    • 4)検証活動の規定。
    • 5)受入・出荷検査規格の制定。

顧客との契約について,その中身の確認について述べている。
4.3.1 一般
生産管理部は,顧客との契約の中身を事前に関係部門において審査,見直しをする手順を規定する。

4.3.2 内容の確認

  1. 会社は,新規顧客との接触の最初から,顧客要求事項の明確化に責任を持つ。
  2. 顧客のニーズがどこにあるのか,顧客からもたらされる諸情報を,仕様書,注文書などの文書類で的確に把握する。
  3. 顧客の要求を正しく把握するために,ときどき顧客要求の定義付けの見直しを実行する。この顧客要求見直しの活動は,多くの場合,新規顧客の現れたときに実施される。
  4. 顧客の要求事項を明確にした後,その要求事項が会社の現有能力で対応可能かどうか,または新たな手段を必要とするかどうかの検証を行う。

4.3.3 契約内容の修正
生産管理部は,顧客から契約変更の申し出があった場合,当社が契約変更の申込みをした場合は,手順書に定められた手続きに従って対応をする。

4.3.4 記録
生産管理部は,以上の業務の経過を記録にとり,契約内容の見直しとして定められた期間,記録の保管をする。

会社の文書管理について詳しく説明し,会社の文書体系を具体的に示している。
4.5.1 一般

  1. 品質保証部長は,文書化された品質システムを確立し,維持していくために,下記の文書体系を構築する。
    この文書体系に組み込まれる社内の文書類には,次のものがある。
    品質マニュアル
    部門マニュアル
    手順書・作業指示書
    品質計画書
    仕様書
    図面
  2. 文書体系
  3. 1次文書 2次文書 3次文書 4次文書
    全 社 部 門 マニュアル 手順書 データ類
    品質マニュアル 品質保証部 DQA DQAI 記録
    技術部 DTE DTEI 仕様書
    購買部 DPR DPRI 日程表
    生産管理部 DPC DPCI 日程表
    人事・総務部 DHA DHAI 帳票
    第1工場 DP-1 DP-1-I 記録
    第2工場 DP-2 DP-2-I 記録
  4. 品質保証部長は,1次文書の責任者であり,他のすべての文書がこの品質マニュアルに適合しているかどうかをチェックする権限を有している。

4.5.2 文書及びデータの承認及び発行

  1. 会社は,文書の制定および改訂の責任者をはっきりと定めている。
    文書発行の責任者は,改訂後不要になった文書の廃棄についても責任を有している。
    すべての文書改訂の記録は,文書化されるか,またはマスター文書に記録される。
  2. それぞれの部門の担当部長は,次の文書の発行について責任を有する。
部 門 管理文書記号
品質保証部 DQA
技術部 DTE
購買部 DPR
生産管理部 DPC
人事・総務部 DHA
第1工場 DP-1
第2工場 DP-2

4.5.3 文書及びデータの変更

  1. 文書の発行部門は,文書の改訂を変更手順に従って実施する。
  2. 文書の発行部門は,文書の変更配布に際して旧文書廃棄の仕方を指示する。
  3. 技術部は,すべての部品図と組立図に識別番号を付し,台帳にて管理をする。
    これらの部品図と組立図の変更は,技術部門によって実施され,すべての技術的変更点は,所定の期日から変更が実施できるよう関係する部門に連絡がされる。

会社の購買方針を述べ,そのポイントを挙げている。
会社の購買はすべて,認定された会社のみに対して行われることを明記している。