本シリーズ「内部監査の実践」では、「ナラティブ内部監査」を採用しています。

ナラティブ内部監査は、平林良人の『つなげるツボ』Vol.297
https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/02/17/vol-297/) から
ナラティブ内部監査は、平林良人の『つなげるツボ』Vol.342
https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2022/01/12/vol-342/) まで
を参考にしていただくとよいと思います。

今回から、A社【計測器類管理標準 KQM117】に基づいたナラティブ内部監査の実践を説明していきます。ナラティブ内部監査のポイントは、上記「平林良人の『つなげるツボ』」に詳しいのですが、その中から「二八(にっぱち)監査」※を採用した例を説明していきます。

※ 二八(にっぱち)監査:ナラティブ内部監査の一方式で、内部監査員は2割の時間を使って聞く、被監査者は8割の時間を使って答える監査方式。正式には「被監査者による適合証明監査」と呼び、被監査者が「自分の仕事がルールに適合していることをエビデンスによって証明する」監査方式をいう。二八とは、内部監査員は2割くらいの時間しか質問に使わず、残り8割の時間は被監査者が適合性証明のために使うことからこう呼んでいる。

今回のナラティブ内部監査は「品質保証部」における内部監査です。
まずA社の規定である【計測器類管理標準 KQM117】を紹介します。

計測器類管理標準 KQM117

  • (目的)
  • 第1条 この標準は、定められた要求事項に対する製品の適合性を実証するために必要とされる測定器類の管理を目的とする。管理する計測器類を明確にし、「測定器管理台帳」に登録し、製品の適合性を実証するために必要とされる監視及び測定を行う。
  • (測定器の管理)
  • 第2条 「測定器管理台帳」に登録されている担当者は、測定値の精度を保証するために、以下の手順に沿って計測器類の管理を確実に行う。
    • (1)構成若しくは検証
      • ①担当者は、定められた間隔又は使用前に、国際又は国家計量標準にトレサーブルな計量標準に照らして校正若しくは検証又はその両方を行う。
      • ②各測定器の校正(頻度及び方法)及び検証の手順は、「側的管理台帳」に規定する。
      • ③国際又は国家計量標準にトレサーブルな計量標準がない測定器の場合には、校正又は検証に用いた基準を「測定器管理台帳」に記載する。
      • ④担当者は、校正及び検証の結果を記録する。
    • (2) 計測器類の調整
    • 担当者は、各測定器の「取り扱いマニュアル」や測定器のメーカから提供された「計測器調整手順書」に基づき、計測器類を調整し、又は必要に応じて再調整する。
    • (3)校正の識別及び測定器の保護
      • ①担当者は、各測定器の校正の状態を明確にするために、識別(管理ナンバー)、最終校正(検証)日、校正(検証)有効期間を記載する。
      • ②担当者は、測定した結果が無効になるような操作が出来ないように、また損傷及び劣化しないように、各測定器の取り扱いに注意を払う。
  • (校正はずれの措置)
  • 第3条 「測定器管理台帳」に登録されている担当者は、測定器が要求事項に適合していないこと(校正はずれ)が判明した場合には、以下に関する手順を確実に行う。
    • ①担当者は、その測定器でそれまでに測定した結果の妥当性を評価し記録する。
    • ②担当者は、その測定器で測定に影響を受けたと思われる製品すべてを特定し、製品に対して、次の適切な処置をとる。
      • ・製品が社内にある場合には正しい計測器で再測定する。
      • ・製品が既に客先に納入されている場合には客先に報告し客先と調整をする。
  • (監視及び測定にコンピューターソフトウェアを使う場合)
  • 第4条 担当者は、ソフトウエアの入った計測器を最初に使用するときには正しく計測できるか確認をする。確認は次の方法で行う。
    正しく測定されたサンプルを用意し、そのサンプルの測定結果が以前の測定結果と一致するかを確認する。
    また、「測定器管理台帳」に登録されている頻度で使用前の確認を行う。確認の仕方は上述の方法と同様とする。
  • (付則)
    1. この規程は2020年4月1日から実施する。
    2. この規程の改廃にあたっての立案者は品質保証部長とする。

次回は、技術部において、この「計測器類管理標準」に沿って業務が適切に進められているかを「二八(にっぱち)監査」方式で内部監査をしていきます。

(つづく)