平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第19回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

5.経営者の責任
社長は,経営戦略会議を通して品質マネジメントの8原則を基本とする下記内容を実施することによって,QMSの構築,実行及びその有効性の継続的改善に最終的な責任を持つ。

  1. 顧客要求事項及び法令・規制項目(酒税法等)を満たすことがいかに重要かを組織に伝える。(詳細はbr /5.2参照)
  2. 品質方針を設定する。(詳細は5.3参照)
  3. 各部に品質方針に基づいた品質目標の設定をするよう指示し,設定したかのチェックをする。(詳細は5.4.1参照)
  4. マネジメントレビューを実施する。(詳細は8.6参照)
  5. QMSの改善及び顧客要求事項を満たすため,必要な経営資源(要員計画,教育訓練計画,設備改善計画等)を使えるようにする。(詳細は5.4.2参照)
    経営戦略会議の推進の仕方は方針管理要領書に規定する。

5.2 顧客重視

  1. 当社は下記内容を基本的な顧客要求事項とする。
    • ①:味のいいビール“のどごしのいいビール”
    • ②:供給の安定性
  2. 社長は,上記内容を具体的要求事項へ変換するよう各部長へ指示する。
    (例)
  3. 担当部 内容
    営業部 月間販売量の設定,顧客調査
    製造部 製造体制の確立
    技術部 原料,製造プロセスの確立
  4. 社長は,上記内容が顧客満足向上に寄与しているかを経営戦略会議で確認する。
  5. 詳細は,7.2.1「製品に関連する要求事項の明確化」,8.2.1「顧客満足」に規定する。

5.3 品質方針

  • 〔経営理念(組織の目的)〕
    • ① 社員の一致団結のもとに高収益体質を構築する。
    • ② 組織の繁栄を継続的に続けることにより社会貢献する。
  • 〔品質方針〕
    • ① 当社は,顧客要求事項への適合とQMSの有効性について継続的な改善を推進する。
    • ② 当社は,顧客満足向上として市場の好みを的確にとらえ,お客様に愛される製品を提供する。
    • ③ 高品位ビール「ノドごしのいいビール」新製品シリーズを強化し,取引先との共存関係を増強していく。

平成13年2月1日
テクノビール株式会社
代表取締役
品質勝男㊞

  1. 品質方針を組織内に伝達し常に理解されるように努める。
  2. 品質方針を毎年4月に見なおし,適切性を維持する。
  3. 品質管理部長は,品質方針に関わる文書をまとめて品質方針文書とする。

品質方針 ― 方針展開 ― 各部の品質目標 ― 各部の品質マネジメントシステム計画
(社長)  (管理責任者) (各部長)     (各部長)

5.4 計画
5.4.1 品質目標

  1. 社長は,品質方針に基づき,各部長へ成果が把握できる品質目標の設定を指示する。
  2. 各部長は,各部内で検討した結果を部の品質目標と定め,社長へ提出する。
  3. 社長は,各部の品質目標と品質方針との整合性を確認し,承認する.問題のある場合,再設定を指示する。
  4. 詳細は方針管理要領書に規定する。
  5. 個別のプロジェクトに関する品質目標は,7.1「製品実現の計画」に規定する。

(例)品質目標

担当部 内容
営業部 月別販売量の設定,精度向上
購買部 競争力のある原料調達先の確立
技術部 新製造プロセスの確立,市場クレームの半減
製造部 クレーム及び不良率半減
品質管理部 味の制度向上のための必要な検査体制の確立
総務・経理部 特約店も含めた輸送方法の見直し

5.4.2 品質マネジメントシステムの計画

  1. 社長は,品質目標の達成及びQMSの適合性のために,必要な経営資源をプロセスごとに決めることを部長に指示し,各部長は具体的な計画書を作成する。
  2. 部長は計画書に各プロセスの改善内容,必要な経営資源及び経営資源変更時の対応等を記載する。
  3. 社長は,各部にて設定された計画書を承認する。
  4. QMSの完整性の詳細は,方針管理要領書に規定する。

(例)品質マネジメントシステムの計画(品質目標の達成計画)

内容
該当プロセス
内容 必要な経営資源 必要経費
(要因も含む)
経営資源変更時の対応 担当部署
契約プロセス 市場調査方法の確立 要員増強 市場調査 +○人 スケジュール,方法等 営業部
設計プロセス 新製品の企画調査 要員教育 企画設計要員 スケジュール,方法等 技術部
購買プロセス 原料調達先の見直し 要員教育 海外調査 ○○○万円 スケジュール,方法等 購買部
製造プロセス 重大クレーム半減対策 設備見直し ろ過設備 ○○○万円 スケジュール,方法等 製造部
重大クレーム半減対策 設備見直し 検査設備 ○○○万円 スケジュール,方法等 製造部
不良率○○%低減対策 設備見直し ろ過設備 ○○○万円 スケジュール,方法等 製造部
検査プロセス 味精度向上のための検査体制の整備 要員教育 官能検査 スケジュール,方法等 品質管理部
内部監査の改善 要員教育 内部監査研修 ○○○万円 スケジュール,方法等 品質管理部
サービス(輸送)プロセス 特約店も含めた輸送増強 設備見直し 輸送トラック増強 ○○○万円 スケジュール,方法等 総務部・経理部

5.5 責任,権限及びコミュニケーション
5.5.1責任及び権限

  1. 次頁に当社の組織図及び各部の主要業務内容を示す.管理責任者は,社長直轄の位置づけとする。
  2. 各部の責任と権限は部長とする.但し,代行者については,部長が部の責任者を任命する。
  3. 付図-2にJISQ9001/ISO9001:2000規格の要求条項ごとの主管部署及び関連部署を定め,組織の責任と相互関係を明確にする。
  4. 社長は,上記内容1.~3.を通達文書にて各部長へ周知徹底する。

5.5.2 管理責任者

  1. 社長は,品質管理部長を管理責任者として任命する。
  2. 管理責任者の責任権限(社長代行として)
    • ① 品質情報会議を通してQMSのプロセスを確立し維持すると共に,顧客要求事項に対する認識を全社員へ深めさせる。
    • ② 方針展開書を通して,社長の品質方針を部門に徹底させる。
    • ③ 経営戦略会議を通してQMSの実施状況(改善,見直し含む)及び重大な是正処置,予防処置(クレームも含む)の社長への報告をする。
    • ④ QMSに関して審査機関との調整をする。

5.5.3 内部コミュニケーション

  1. 社長は,QMSの有効性に関して情報交換が行われるために,管理責任者及び各部長に対して適切な会議及び文書通達方法を確立するよう指示する。
  2. 管理責任者及び各部長は,社長の指示を受け,次頁表記内容の会議及び文書による伝達を定期的に実施する。
手段 項目 内容 期間 主催者/起案者
(関連部署及び階層)
会議 経営戦略会議
(市場調査,クレーム,QMS改善)
M.R.アウトプットのフォロー及び品質方針の決定 1回/年 管理責任者
(社長,管理責任者,各部長)
プロジェクト会議(新製品開発関係) 工程設計(開発)のレビュー(製造プロセス,原料,生産量等決定) 随時 技術部長
(管理責任者,各部長)
品質情報会議 各種データ分析結果の報告(プロセス,製品,顧客情報)上記データに基づく是正処置,予防処置の決定 6回/年 管理責任者(各部長)
会議 部内会議 ・各部での情報連絡(品質目標等)
・各部での実績報告(データ分析結果等)
・各部での改善内容(是正処置,予防処置等)
随時 各部長
(各部責任者,担当)
文書 品質方針(1)
(品質方針)
品質方針の提示 1回/年 社長
(管理責任者,担当)
品質方針書(2)(品質目標,品質マネジメントシステム計画) 部の品質目標,経営資源の提示 1回/年 各部長
(社長,管理責任者)
是正処置報告書 重大な問題について(QMS不具合,クレーム等) 随時 管理責任者
(該当部長)
予防処置報告書 重大な問題について
(顧客関係,製品特性のバラツキ等)
随時 管理責任者
(該当部長)

6.資源の運用管理
6.1資源の提供

  1. 担当部長は,マネジメントレビューのアウトプット及び品質マネジメントシステムの計画書に応じて,下記事項に関する必要な経営資源(人的要員,インフラストラクチャー,作業環境)を決定し,社長に具申する.社長は,報告を受け必要な経営資源を供給する。
    • ① QMSの実行,維持,またその有効性の継続的改善。
    • ② 顧客要求事項を満たすことによって顧客満足を高める。
  2. 上記内容の進め方の詳細については,企画要領書に規定する。

6.2 人的資源
6.2.1 一般
担当部長は,下記内容の品質に影響を及ぼす特定業務に関しては,要員の割り当てにおいて次の力量を確認する。

担当部 業務内容 力量
技術部 設計(補助業務は除く) 5年以上の業務経験,社内資格試験合格者
製造部 設備管理(補助業務は除く) 3年以上の業務経験
品質管理部 官能検査(補助業務は除く) 3年以上業務経験,社内資格試験合格者
検査機器管理(補助業務は除く) 3年以上業務経験,社内資格試験合格者
内部品質監査 内部品質監査研修修了者

6.2.2 力量,認識及び教育・訓練
 担当部長は,品質に影響を及ぼす要員について,下記の教育訓練計画を定める。

  1. 適用範囲
    品質に影響する活動に従事する要員について適用する。
  2. 責任者は,各担当部長とする。
  3. 実施内容
    • ① 担当部長は,力量に不足のある要員の一覧表を作成する。
    • ② 各部にて一年間の教育計画(教育内容,方法)を立案し実施する。
    • ③ 各部にて,評価選定基準を定め,未達の要員は再教育する。
    • ④ 詳細は部内文書による。
    • (例)

      担当部 教育内容 方法
      購買部 調達ルート 社外研修,調査
      営業部 顧客調査 OJT教育
      技術部 酵母調査 社外研修,調査
      製造部 設備調査(ろ過設備) 社外研修,調査
      品質管理部 内部監査 社外研修
  4. その他
    • ① 特に下記業務に従事する者に関しては,教育・訓練及び職場経歴に基づいて資格認定する。
    • 種別 認定者 資格 備考
      内部品質監査員 品質管理部長 指定された講習修了者 部内文書
      設計・開発責任者 技術部長 社内資格合格者(公的資格合格者) 部内文書
      計測器校正員 品質管理部長 社内資格合格者(公的資格合格者) 部内文書
      特殊工程作業員
      (ビールの味の官能検査)
      品質管理部長 社内資格合格者 部内文書
    • ② 詳細は部内文書による。
  5. 従業員1人1人がどんな品質目標に関与しているか,及び貢献しているか「個人目標カード」を作成して認識を深めさせる。
  6. 教育訓練・認識及び力量(特定業務資格認定策)の記録は品質記録として管理する。