平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第31回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

8.測定,分析及び改善

  • 8.1 一般
    • 品質管理費任者は,当社の提供する建造物の適合性の保証,品質マネジメントシステムの適合性の確実化,品質マネジメントシステムの有効性の継続的改善に向けて,監視,測定,分析及び改善のプロセスを計画する。(図-5.4.2「品質マネジメントプロセス」参照)
      このプロセスの計画には,統計的手法の使用を含む。
  • 8.2 監視及び測定
    • 8.2.1 顧客満足
      品質環境安全部長は,当社の提供した建造物が顧客要求事項を満たしているかどうかに関して,顧客の受け止め方を監視するため,顧客満足度調査を実施する。
      • (1)適用範囲
        • 当社が設計又は施工した建造物の内,竣工3年以内の建造物。
      • (2)実施事項
        • 1) 顧客満足度は,竣工後半年,1年,2年点検時の顧客からヒアリング調査と顧客からのクレーム情報ではかる。調査及びヒアリングの具体的な進め方は「顧客満足度調査要領」による。
        • 2) 竣工後の点検時の立会者は,営業部担当者,設計責任者,現場責任者,品質環境安全の担当者とする。
        • 3) 顧客満足度調査の結果は,マネジメントレビューにて品質環境安全部長よりインプット情報として提供する。
    • 8.2.2 内部監査
      • (1)適用範囲
        • 当社の品質マネジメントシステムが製品実現計画,ISO 9001の規格及び当社の品質マネジメントシステムの要求事項に適合しているかを決定するため,実施する内部品質監査に適用する。
      • (2)責任者
        • 内部品質監査の実施責任者は品質管理責任者とする。
      • (3)実施事項
        • 1) 品質管理責任者は,「内部品質監査規定」に基づき内部監査員を選定し,社長が任命する。
        • 2) 品質管理責任者は,年度の「内部品質監査計画書」を策定し,社長の承認を得る。「内部品質監査計画書」には監査の基準,監査範囲と共に,品質監査の年度方針,監査チームの編成,監査実施スケジュール,監査場所,監査方法等を明記する。内部品質監査チームの編成は,被監査部門・部署のメンバー以外で 構成する。
        • 3) 内部監査員チームは「内部品質監査規定」により監査を実施する。
        • 4) 内部監査員チームのリーダーは「内部品質監査終了報告書」に内部品質監査の結果をまとめ,被監査部門・部署及び品質管理責任者に報告する。
        • 5) 品質管理責任者は,年度の内部監査結果の報告を「年度内部品質監査報告書」にまとめ,社長に提出し承認を得る。
          内部監査の結果は,マネジメントレビューにて品質管理責任者より,インプット情報として報告する。
        • 6) 内部監査で発見された不適合事項については,不適合原因,是正方法,是正時期を明記した是正計画を被監査部門長は部署長にて立案し,監査チームリーダーに提出し確認を得る。
        • 7) 内部監査チームは、是正処置について実施後確認する。また,不適合の内容により必要に応じ,フォローアップ監査を実施する。
        • 8) 内部品質監査の計画・実施・報告の記録は,品質管理責任者が品質管理記録として保管する。
    • 8.2.3 プロセスの監視及び測定
      • 品質管理責任者は,次頁表の通りプロセスの監視及び測定が実施され,プロセスが計画通りの結果を出せているか確認する。
        計画通りの結果が出ていない場合には,建造物の適合性の保証のため,是正処置を講じる。
      • 監視・測定するプロセス 実施責任者 計画されたプロセスの結果 監視項目 監視方法
        1.品質マネジメントシステム 社長 品質方針,品質目標の策定及び実施状況 品質目標の達成率 半期ごとの実施計画
        管理表の集計
        マネジメントレビュー
        2.








        顧客関連プロセス 営業部長
        建築部長
        土木部長
        顧客ニーズと期待を正確に捉え,関連部門・部署との連携で具体化しえ契約出来ている状況 プロジェクト会議の実施率成約率 半期ごとの実施状況報告書
        内部品質監査
        設計プロセス 建築部
        設計課長
        顧客満足度の高い建築物を適正な工事費で設計できている状況 DR,設計検証妥当性確認の実施率 半期ごとの実施状況報告書
        内部品質監査
        購買プロセス 建築部
        設計課長
        設計からの要求事項に対し適切な下請業者,資機材を適正なコストで選定できている状況 供給者評価実施率下請け業者不具合シート記入回収率 半期ごとの実施状況報告書
        内部品質監査
        工事管理プロセス 建築部
        設計課長
        「工事管理品質計画書」の作成と工事管理の実施状況 配筋検査
        鉄骨検査
        工程内検査立会率
        半期ごとの実施状況報告書
        内部品質監査
        施工プロセス 建築部
        設計課長
        建設の技術基準に基づいた施工による完成度の高い建造物 中間検査,完成検査,引渡し検査での指摘重要度及び件数 随時実施される品質環境安全部の現場巡回報告書半期ごとの実施状況報告書
        内部品質監査
        維持管理プロセス 建築部
        土木部長
        「維持管理品質計画書」に基づく定期点検の実施状況 竣工後半年,1年2根経過後定期的検査実施率 半期ごとの実施状況報告書
        内部品質監査
        3.測定・分析プロセス
        4.改善のプロセス
        品質管理責任者 製品の適合性品質マネジメントシステムの適合性の確保,有効性の改善 各プロセスの監視測定
        是正,予防処置状況処置データの分析
        内部品質監査
        マネジメントレビュー
    • 8.2.4 製品の監視及び測定
      • (1)適用範囲
        建造物が,製品要求事項を満たしていることを検証するため,施工段階で実施する検査及び試験に適用する。
      • (2)検査及び試験の実施責任者及び実施担当者
        検査・試験の実施責任者及び実施担当者は下表による。
      • 検査・試験の種類 実施責任者 実施担当者
        受入検査 現場責任者 検査担当者
        工程内検査
        (中間検査を含む)
        工事管理者,検査担当者 検査担当者、工事管理担当者
        完了検査 工事管理者,検査担当者 検査担当者,工事管理担当者
        引渡し検査 品質環境安全部長,建築部長,土木部長 品質環境安全部担当者,現場責任者
      • (3) 実施事項
        検査及び試験は下記の項目に対し該当する項目を実施する。
        検査方法は「検査・試験要領書」にて実施する。
        • 1) 受入検査・試験
          • ① 既製杭         ② 生コンクリート(強度試験,スランプ)
          • ③ 鉄筋          ④ 鉄骨
          • ⑤ PC板          ⑥ 建具
          • ⑦ 石,タイル等の仕上げ材 ⑧ 設備機器
          • ⑨ 外構材,植栽      ⑩ その他
        • 2)工程内検査・試験
          • ① 杭(深礎等の場所打杭) ② 鉄骨建方精度
          • ③ 配筋状態        ④ 型枠の設置状態
          • ⑤ スラブのレベル     ⑥ 防水性能
          • ⑦ 各種仕上材(目視検査) ⑧ 各種設備機器取付状態
        • 3) 完了検査及び引渡し検査
          • ①建築及び土木部門における自主完了検査
          • ②設計責任者及び工事管理者による竣工検査
          • ③地方公共団体・検査確認機関及び消防署における中間検査及び完了検査
          • ④顧客による引渡し検査
  • 8.3 不適合製品の管理
    • (1)適用範囲
      前項(8.2.4「製品の監視及び測定」)の実施による製品要求事項に適合しない不適合製品を,誤って使用したり引渡すことを防止するための管理について適用する。
    • (2)責任者
      不適合製品の管理の実施責任者及び実施担当者は,前項(8.2.4「製品の監視及び測定」)の実施責任者及び実施担当者とする。
    • (3)実施事項
      不適合製品の管理は図-8.3「不適合製品の管理」のフローに従い実施する。
      不適合の性質及び特別採用を含む不適合品の管理記録は,品質記録として維持する。引渡し後又は使用開始後に不適合製品がみつかった場合は,その不適合による不具合・影響に対して速やかに適切な処置(手直し,交換等)を実施する。詳細は「不適合製品の管理規定」に定める。
    • 図-8.3 不適合製品の管理
  • 8.4 データ分析
    • (1) 適用範囲
      当社の品質マネジメントシステムの適切性及び有効性を実証し,継続的な改善の可能性を評価するための,データの収集,分析に適用する。
    • (2) 実施事項
      データの分析について実施事項は,下表による。
    • 分析項目 データ収集分析
      担当部門・部署
      分析データ 分析結果の報告先
      顧客満足度 品質環境安全 8.2.1 「顧客満足」による実施 社長
      各部門長及び部署長
      後請保証
      (クレーム)
      品質環境安全 後請情報シートの原因及び対策の内容 社長
      各部門長及び部署長
      コストデータ 建築部及び土木部
      工事課
      取極単価の収集 建築部設計課
      建築部及び土木部
      工事課
      建造物の性能データ 建築部工事課設計課
      土木部工事課技術科
      品質環境安全部品質管理課
      各種要求性能に対する検証データ 建築部設計課
      土木部技術科
      供給者評価(購買品の評価及び供給者の評価) 建築部及び土木部工事課 購買品の評価シート
      供給者の評価シート
      建築部及び土木部工事課
      建築部及び土木部の作業所