ナラティブ内部監査の実践例2として、「困りごと検出方式」の説明をしています。

最初は、被監査者にとっての困りごとの一般的な例を掲げてみましたが、具体的な事例の方が分かり易いので、その後から、一つひとつ実践に際してのポイントについて話しを進めています。

4.一つひとつ実践に際してのポイント
(11) 交代する人がいなくて休みが取れない。
 一つの業務に一人しか「きちんとできる人」がいない、という状況は中小企業ではよくあります。さすがに、全くいないということはなくて、見よう 見まねでその仕事をする人はいるという状況が正しい表現かもしれません。しかし、きちんと訓練されていないので、心配で休みも取れないという環境に置かれて人からのこの困りごとだと思います。

  • ポイント1:ジョブローテーション
  • いろいろな職種を経験して多様な力量を持つ人を育成しようとする人事制度である。大手企業では、3~5年位で担当業務を変えることにより、次のような利点を得ることが出来るとされている。
    • 交代要員を育成できる。
    • 人々の能力に幅が出来る。
    • 人々が成長する。
    • 人々のやりがいが増す。
  • 会社の仕事は大きく分けると、事務職、技術職、技能職に分かれるが、事務職は一番ローテーションがし易く、次が技術職、一番ローテーションが難しいのが技能職という事になる。
  • ポイント2:交叉訓練をすること
  • 技能職はジョブローテーションすることが困難であるが、技能の近い範囲で交叉訓練をすることが有用であるとされている。交叉訓練とは、交叉(交じり合う)という言葉が意味するように、該当仕事の前後と交じり合うという意味である。例えば、「機械作業」を例にとると、次のような交叉訓練があり得る。
    • 研磨作業
    • 押し込み作業
    • 穴明作業
    • 旋盤作業
    • フライス盤作業
    • ミーリング作業
    • 歯割り作業 など
  • 以上のような機械仕事には被加工物と刃工具が接触して設計どおりの形状を作り出すという共通性がある。上に上げた作業のそれぞれは、被加工物と刃工具の接触の仕方に違いがあるので、そのスキルを交叉させて多能工を育成しようとする方法、考え方が交叉訓練である。
  • ポイント3:OJTの実施
  • OJT(On the Job Training)は、技能職だけでなく、事務職、技術職のいずれにおいても有用である。OJTの良い所は、trainingが実際の作業環境において行われることである。現実に行う仕事をベテランの人の指導で行うことは、何事にも代えがたいことであり、業務のカンコツは机上での知識の積め込みでは出来ないことである。

(つづく)