品質不祥事は組織の中に長年くすぶり続け、組織の中で何が起きているのか、外部からはなかなか分かりません。近年、多くの有名な企業で不祥事が発覚し、その実態が分かってきました。スイスのIMD(国際経営開発研究所:International Institute for Management Development)によると、日本の国際競争力ランキングは、1989年の1位から2022年にはなんと34まで落ちてしまいました。品質不祥事が要因だとは言いませんが、品質立国日本の地位は完全に失墜してしまいました。

品質不祥事が組織の中でどのように広がっていくのかを幾つかの組織の実態から一般化してみた説明が次のものです。

①第1ステージ 始まり<違反>
個人あるいはグループが、仕事がきつい、資源が足りない、前任者にはできたが自分にはできない、良品を生み出す条件が欠けている、成果への過信(マージンがあるから使用には大丈夫)などから抜け道的な違反行為をする段階である。周りに相談せず、自分だけで解決しようとしての標準の不順守、違反な行為を行う段階である。どのくらいの期間第1ステージに留まるのかは個別事象ごとに異なるが、ある時間の経過とともにその違反は周囲に広まっていく。

②第2ステージ 拡大<隠蔽>
第1ステージの段階で周りから咎められずかつ自分にメリットがあると確信できると、個人からグループに違反行為は拡大する。限られた範囲に自分たちの違反行為を閉じ込めるために、外に対しては嘘をいう。違反に関係する組織内の人、グループは、特に社外に対して不正行為を隠した虚偽の発信をする。組織内においては、グループの規模で明確に不正なことをしているという認識をもつに至った段階である。

③第3ステージ 拡大2<改ざん>
顧客、社会に対して単に隠すだけでなく、客観的に良いと見える嘘のデータ、事実でない事柄を示す段階である。このステージは単なる隠蔽ではなく、より積極的に顧客、社会を誤魔化そうとする行為を伴う品質不正である。積極的及び意図的に組織に存在しているデータや事実を変質させる、或いは捻じ曲げる行為を行い、質的、量的に組織内に品質不正が拡大した状態である。

④第4ステージ 拡大3<捏造>
不正行為がなお質的に高度になり、組織に存在していないデータや事実(具合の悪いこと)を自分たちに都合の良いように作り出す行為を行う品質不正の段階である。

⑤社会に品質不正が知れ渡る。

注)ステージごと品質不正を引き起こす行為の端的な説明は以下の通りである。
(第1ステージ) 違反:標準を逸脱する。
(第2ステージ) 隠蔽:標準から逸脱したことを隠し、顧客・社会を欺く。
(第3ステージ) 改ざん:組織に存在するデータ、事柄を変造、偽造して顧客・社会を欺く。
(第4ステージ) 捏造:組織に存在しないデータ、事柄を作り出し、顧客・社会を欺く。

(つづく)