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ISO審査員に経産省の白書を参考にした有用な情報をお届けします。
■外国人労働者と人材雇用
製造業における外国人労働者数は、2014 年以降増加傾向で推移し、2019 年には48.3 万人と、2008年に比べ約30 万人増加した。新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2020 年には48.2 万人、2021年には46.6 万人と前年と比べそれぞれ減少となったが、引き続き高い水準となっている。全産業に占める製造業における外国人労働者の構成比は、2008 年以降一貫して低下しており、直近の2021 年においては、全産業の外国人労働者(172.7万人)の27.0%となっている。製造業における2021 年の外国人労働者数の内訳は、技能実習生は18 万人、特定技能を含む専門的・技術的分野の在留資格を持つ外国人は7.6 万人となるなど、製造の現場で多くの外国人労働者が活躍している。
新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る水際対策の影響により、全産業計の外国人労働者数の増加傾向は鈍化していたが、2022 年3 月より、外国人の新規入国制限が一部緩和されたことから、今後は技能実習生等の外国人労働者の受入れが再び進むことが見込まれる。技能実習生等の外国人労働者の円滑な入国に向けた対応や外国人材の受入れ環境整備に政府全体として積極的に取り組む必要がある。製造業における外国人労働者受入れに関する政府の新たな取り組みである「特定技能制度」について事例を述べる。
(外国人材受け入れ)
我が国では、深刻化する人手不足への対応として、生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行った上で、なお、人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野に限り、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れるために、出入国管理及び難民認定法の改正により、2019 年4月に在留資格「特定技能」が新設され、特定技能外国人の受入れが開始された。経済産業省が所管する産業分野では、素形材産業分野、産業機械製造業分野及び電気・電子情報関連産業分野の製造3分野が対象となり、2022 年2月末時点で、素形材産業分野で3,482 人、産業機械製造業分野で5,400 人、電気・電子情報関連産業分野で2,876 人の計11,758 人の特定技能外国人が在留している。
即戦力である特定技能外国人として従事するためには、従事しようとする業務区分に対応する製造分野特定技能1号評価試験への合格が必要である。製造分野特定技能1号評価試験については、2019 年4月から2022 年3 月末までに2,465 人が受験し、315 人が合格している。
特定技能外国人を受け入れている企業では、外国人材の能力向上に向けた技能や日本語能力に関する勉強会の開催、外国人材の定着に向けた地域のイベントへの参加や外国人材同士の交流会を設けるなどの取組がみられる。以下では、受入れ企業による特定技能外国人の活用の状況について紹介する。
- 1.(株)真岡製作所
栃木県真岡市に本社を置く(株)真岡製作所は、鋳造鋳物製造業を行う素形材産業分野の企業である。従業員数は277 名であり、そのうち外国人材58 名(内、特定技能外国人29 名)を受け入れている(2022年3月現在)。
同社では、外国人材の鋳造技能や日本語能力の向上に加え、製造現場で安全に業務に従事できるよう危機管理能力の育成にも力を入れている。具体的には、機械への巻き込まれ事故などを疑似体験できる「安全体感技塾」を定期的に開催し、外国人材に製造現場に潜む危険を学ばせている。また、安全知識に係る習熟度テストを母国語に翻訳して実施し、製造業の現場で身を守るための知識の定着を図っている。 - 2.大澤工業(株)
富山県富山市に本社を置く、大澤工業(株)は、昇降機の設計・製造等を行う産業機械製造業分野の企業である。従業員数は29 名であり、そのうち外国人材は7名(内、特定技能外国人4名)を受け入れている(2022 年3月現在)。
同社に従事する特定技能外国人には、製造分野特定技能1号評価試験に合格した技能を有し、複数の業務区分で多能工として活躍する者がいる(図2)。当該特定技能外国人は、技能の習得や業務への取組が認められたことで昇進し、複数の工程において他の外国人材の手本となるなど、同社にとってなくてはならない存在となっている。 - 3.(株)府中テンパール
広島県広島市に本社を置く、(株)府中テンパールは、開閉制御器具及び配分電盤の設計・製作を行う電気・電子情報関連産業分野の企業である。従業員数は161 名であり、そのうち外国人材は13 名(内、特定技能外国人6名)を受け入れている。
同社では、外国人材の定着に向けた取組に力を入れており、日本での業務にやりがいを感じることができるよう、外国人材の給与明細に日本語と母国語での労いのメッセージを送っている。また、外国人材が孤立することがないように、特定技能外国人が中心となり技能実習生を対象とした勉強会を実施するなど、外国人材同士の結びつきを強固にするような機会も設けている。
(就業者の構成)
我が国の全産業の就業者数は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響もあり、直近においては、2020 年が6,710 万人、2021 年が6,713 万人と感染拡大前の2019 年と比べ減少している。一方、製造業の就業者数について、2020 年が1,051 万人、2021 年が1,045 万人と2年連続で減少している。
全産業に占める製造業の就業者の割合は、低下傾向で推移しており、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた直近の2年間においても、その傾向に変化はみられない。直近の2021 年においては、15.6%となっている。
製造業の若年就業者数は、2002 年から2012 年頃まで減少基調が続き、以降はほぼ横ばいで推移しており、直近の2021 年は263 万人となっている。また、若年就業者の割合をみると、2002 年には製造業・非製造業ともに30%を超える水準であったが、2021年には、製造業・非製造業ともに25%程度となっている。一方、製造業における高齢就業者数は、2002 年以降、リーマン・ショックなどにより一時的に減少した時期を除いて、増加傾向で推移していたが、2018 年以降は、ほぼ横ばいとなっており、直近の2021 年は91 万人となった。製造業における高齢就業者の割合は、2002 年には4.7%であったが、直近の2021年は8.7%となっている。非製造業の高齢就業者の割合の推移と比べると、非製造業では一貫して上昇傾向で推移している一方、製造業においては、この数年は横ばいで推移しているとの違いから、2021 年では、5.7 ポイントまで差が広がっている。
製造業における女性就業者数は、2012 年の305万人から2018 年の323 万人にまで増加するなど、近年は増加基調にあったが、2019 年から減少に転じ、2021 年は313 万人となった。また、産業別の女性就業者の割合をみると、全産業の女性就業者の割合が2003 年の41.1%から2021 年の44.7%へと上昇傾向で推移しているのに対し、製造業の女性就業者の割合は、2009 年頃から30%前後の横ばいで推移しており、直近の2021 年も30.0%となった。
製造業における正規及び非正規の職員・従業員の割合は、いずれも2013 年以降ほぼ横ばいで推移しており、直近の2021 年は正規の職員・従業員が68.7%、非正規の職員・従業員が23.0%となっている。また、同年の製造業と全産業における正規の職員・従業員の割合は、全産業に比べて15.1ポイント高く、製造業の非正規の職員・従業員の割合は、全産業に比べて7.9 ポイント低くなっている(図412-5)。このように、製造業は、全産業に比べて正規の職員・従業員の割合が高くなっていることがわかる。
製造業における新規学卒者数は、2013 年には、13 万人であったが、その後増加傾向で推移し、直近の2020 年は前年より約1万人増の16.6 万人となっている。製造業における新規学卒入職者の企業規模別の内訳をみると、特に2013 年から2019 年までは、千人以上の企業への入職者の割合は上昇傾向にあった。しかしながら、直近の2020 年では千人以上の企業への入職者(7.95 万人)が2019 年に比べて1万人以上減少したのに対し、千人未満の企業への入職者(8.6 万人)が2万人以上増加し、千人以上の企業の割合は低下した。また、新規学卒者の製造業への入職割合は、2014年に10.6%と過去最低を記録して以降は上下を繰り返しており、2019 年は11.0%、直近の2020 年は12.5%となっている。
(労働環境・就労条件の動向)
国内の製造業の労働時間の推移をみると、製造業の事業所規模5人以上の事業所における労働者(一般労働者)1人当たりの総実労働時間は、2010 年の168.1 時間から徐々に増加し、2018 年には170.8時間に上った。その後、2019 年4月に働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30 年法律第71 号))が施行され、全業種での年5日の有給休暇取得の義務化や、大企業における残業時間の上限規制導入により減少に転じ、2021 年の総実労働時間は163.5 時間となっている。これには、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるシフトの減少や休業を余儀なくされる方の増加などの影響もあったものと考えられる。
製造業における完全週休2日制適用労働者の割合は、2013 年以降、一貫して6割を超えており、直近の2021 年は、64.3%となっている。また、全産業と比較しても製造業において完全週休2日制を適用している労働者の割合は高くなっている。製造業における平均年次有給休暇の取得日数は、直近の2021 年においては、11.4 日となっている。2015 年以降を経年でみても、毎年10 日以上となっており、他の産業と比べても平均年次有給休暇の取得日数は多くなっている。これらのことから、製造業において、休暇については、全産業の中でも、比較的取得しやすい状況であることがうかがえる。
備考: 調査時点は毎年1月1日時点。「全産業」(調査産業計)とは、日本標準産業分類(平成25 年10 月改定)に基づく16 大産業。なお、平成26 年以前は、調査対象を「常用労働者が30 人以上の会社組織の民営企業」としており、また、「複合サービス事業」を含まなかったが、平成27 年より「常用労働者が30 人以上の民営法人」とし、さらに「複合サービス事業」を含めることとした。
全産業及び製造業における一般労働者の賃金(所定内給与額)の推移をみると、2014 年以降は、それぞれ上昇傾向で推移し、直近の2021 年には、全産業における賃金は約30 万7千円であるのに対し、製造業の賃金は約29 万5千円となっている。
全産業と製造業の賃金の差に着目すると、製造業の賃金は、全産業の賃金を一貫して下回っている。加えて、両者の賃金の差額は2006 年時点で2,200 円であったが、2021 年においては1万2,500 円となっている。
製造業における男女間の賃金格差指数をみると、男性の賃金指数を100とした場合の女性の賃金指数は、2005 年から上昇基調にあるものの、直近の2021 年は69.5 と、依然として男女間に賃金格差がみられる。 また、全産業と比べると、製造業における女性の賃金指数が一貫して低くなっており、直近の2021 年においても、5.7 ポイント下回っている。
(製造業の雇用情勢)
完全失業者数(季節調整値)は、リーマン・ショック後の2009 年7月に過去最高水準の364 万人を記録して以降、減少基調に転じ、2019 年12 月に156万人となった。2020 年1月からは増加し、その後、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響もあり、2020 年8月から2021 年2月まで及び同年5月・6月には200 万人を超えたものの、直近の2022 年2月時点では188 万人と減少傾向で推移している。また、完全失業率(季節調整値)は、リーマンショック後の2009 年7月の5.5%から一貫して低下傾向で推移し、2019 年12 月には2.2%まで低下したが、2020 年に入って上昇に転じ、同年8月にはおよそ3年ぶりに3.0%を超えた。その後、3.0%前後と横ばいで推移し、直近の2022 年2月は2.7%となっている。なお、完全失業率の年平均をみると、2021 年は2.8%であり、2020 年の2.8%から横ばいで推移している。
雇用のミスマッチの状況をみるため、完全失業率を、需要不足失業率注6と均衡失業率注7に分けてそれぞれの動向をみると、需要不足失業率は、リーマン・ショック後の2009 年第4四半期以降低下し、2015年第4四半期以降はマイナス圏で推移するなど、低い水準が続いた。2020 年には一時的に上昇し、同年第3四半期に0.05%と5年ぶりにプラスとなったが、2021 年第1四半期以降再び低下し、直近の2021 年第4四半期にはマイナス0.16%となっている。また、均衡失業率についても、2012 年以降は低下基調で推移し、2020 年に一時上昇したが、再び低下傾向に転じた。完全失業者のうち、企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢)などが異なることにより生じる構造的失業と、企業と求職者の互いの情報が不完全であるため、両者が相手を探すのに時間が掛かることによる摩擦的失業から構成される失業者の割合を指す。
有効求人倍率(季節調整値)は、2010 年以降上昇し、2018 年9月に1.64 倍を記録したが、同年後半から激化した米中貿易摩擦、2020 年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う製造業、宿泊業、飲食サービス業等の業況悪化も影響し、2019 年から2020 年にかけて低下し、同年9月には1.04 倍となった。しかし、同月以降再び上昇基調に転じ、直近の2022 年2 月は1.21 倍と、求人が求職を上回って推移する状況となっている(図411-3)。主要産業別の新規求人数をみると、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の影響を受けた2020 年の上半期には、宿泊業・飲食サービス業を始めとする幅広い産業で落ち込みが顕著に表れ、同年4月・5月には一時、産業全体として対前年同月比でマイナス30%となった。しかし、2020 年下半期以降はマイナス幅が減少基調に転じ、2021 年4月には全ての産業において前年同月を上回る新規求人数となっている。とりわけ製造業においては、2020 年5月のマイナス42.8%を底に、同年下半期からマイナス幅が縮小し、2021 年3月にプラスに転じた。その後、プラス幅が急速に拡大し、直近の2022 年2月には対前年同月比で27.6%となっている。
次に、中小企業における産業別の従業員数における過不足状況(従業員数過不足DI)をみると、全産業は、2017 年第4四半期から2019 年第4四半期までマイナス20%台の不足で推移していたが、2020 年第1四半期からマイナス幅が縮小し、2020 年第2 四半期にはマイナス1.1 と不足感が弱まった。その後一転してマイナス幅が拡大に転じ、直近の2022 年第1四半期ではマイナス16.0 の不足となっている。製造業をみると、2017 年第4四半期から2019年第1四半期までマイナス20%台の不足で推移していたが、同年第2四半期からマイナス幅が縮小し、2020 年第2四半期から第4四半期には一時プラスとなって過剰に転じた。その後、2021 年第1四半期にはマイナス3.7 と再び不足となり、直近の2022 年第1四半期はマイナス16.9 と、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する以前の水準まで低下している。
(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html
(つづく)Y.H