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ISO審査員及びISO内部監査員に経産省の白書を参考にした製造業における有用な情報をお届けします。
■産業振興の諸施策
(1)電動車普及目標・長期ゴール
我が国は、カーボンニュートラルに向けた多様な選択肢を見出し、2050 年に自動車の生産、利用、廃棄を通じたCO2 ゼロを目指すこととし、2035 年までに、乗用車新車販売で電動車100%を実現する目標を掲げた。その実現に向け、2030 年の新車販売台数に占める次世代自動車の割合を5~7割(ハイブリッド自動車30 ~ 40%、電気自動車・プラグインハイブリッド自動車は20 ~ 30%、燃料電池自動車は3%程度、クリーンディーゼル自動車は5~ 10%)にすることを目指している。
(2) 環境性能に優れた自動車に対する自動車関係諸税
2021 年度税制改正において、自動車重量税のエコカー減税については、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、目標年度が到来した2020年度燃費基準を達成していることを条件に、2030 年度燃費基準の達成度に応じて減免する仕組みに切り替えた上で、適用期限が2年間延長された(2021 年5月から2023 年4月末まで)。その際、2回目車検時の免税対象について電気自動車等やこれらと同等の燃費性能を有するハイブリッド車等に重点化が図られた。また、クリーンディーゼル車の取扱いについても、見直しを行った。自動車税及び軽自動車税の環境性能割については、燃費性能に応じた税率区分を設定し、その区分を2年ごとに見直すことにより燃費性能がより優れた自動車の普及を促進するものであり、2020 年度末が見直しの時期に当たることから、目標年度が到来した2020年度燃費基準の達成状況も考慮しながら、2030 年度燃費基準の下で税率区分が見直された。自動車税・軽自動車税の軽減措置( グリーン化特例(軽課)) については、クリーンディーゼル車を対象から除くとともに、適用対象を電気自動車等に限定した上で2年間延長された。
(3) 電動車普及に向けた取組(155億円(当初)、116億97百万円(経済産業省36億97百万円、環境省80億円)(2020年度第3次補正)
運輸部門における低炭素化に貢献するだけでなく、災害時に非常用電源として活用することが可能な次世代自動車の普及を促進するため、車両や外部給電器等の購入支援を行った。2020 年度第3次補正予算においては、グリーン社会の実現を進めるため、電気自動車・燃料電池自動車等の導入拡大と同時に、日常・非常時ともに活用できる充放電設備/外部給電器の普及や、再エネ電力を使ったゼロカーボンのライフ・ワークスタイルの普及促進を図った。また、電気自動車等の普及に必要な充電インフラの整備を促進するため、充電設備及び設置工事費の一部補助を通じて高速道路のサービスエリア、パーキングエリアや道の駅、マンション等への整備を進めた。
さらに、2022 年2月末までに約166 か所の水素ステーションを整備し、燃料電池自動車や水素ステーションの低コスト化に向けた技術開発や規制の見直しなどを進めた。
(4) 高性能建材等の実証・普及に向けた支援(83億90百万円の内数)
既存住宅の断熱・省エネ性能の向上を図るため、工期短縮可能な高性能断熱建材や蓄熱、調湿等の付加価値を有する省エネ建材の導入の実証を支援した。
(5)J-クレジット制度(3億80百万円)
J-クレジット制度は、省エネ・再エネ設備の導入や森林管理等による温室効果ガスの排出削減量・吸収量をクレジットとして認証する制度である。本事業を利用した省エネ・再エネ設備の導入、森林整備等を促進するため、2030 年度以降の制度の永続性確保や排出削減算定方法やそのモニタリング方法を規定した方法論の改定、森林小委員会の設置を行った。また、地球温暖化対策計画では、J-クレジットの認証量の目標設定を行っており、2020 年度の認証量が目標を上回ったため、2030 年度の目標を1,300 万t-CO2 から1,500 万t-CO2 へと目標の引き上げを実施した。
(6) 伝統的工芸品産業の振興対策事業(10億82百万円)
「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(昭和49 年法律第57 号)」に基づき、( 一財) 伝統的工芸品産業振興協会及び伝統的工芸品の各産地の特定製造協同組合等に対し、後継者育成事業や需要開拓事業等に対する補助を行った。具体的には、初心者に対する技術継承研修や中級者に対する実技指導研修などの人材育成の取組及び各産地における課題解決に向けた専門家派遣事業、広報活動の強化などの需要開拓の取組を支援した。
(7)インフラシステム海外展開
経協インフラ戦略会議を3回(第50 回~第52 回)開催し、「インフラシステム海外展開戦略2025」(2020年12 月経協インフラ戦略会議決定)に掲げた2025年のインフラシステム受注額34 兆円の目標達成に向けて、「ポストコロナを見据えた新戦略の着実な推進に向けた取組方針」(2021 年6月経協インフラ戦略会議決定)を策定した。同取組方針では、新型コロナウイルス感染症対策のための重点政策課題に対応するための施策の追加や「分野別アクションプラン」等を決定した。2021 年12 月には「インフラシステム海外展開戦略2025 の推進に関する懇談会」を開催し、民間有識者を中心に、①ポストコロナを見据えたより良い回復、②脱炭素社会に向けたトランジションの加速、③自由で開かれたインド太平洋を踏まえたパートナーシップの推進に向けたインフラ海外展開の方向性について議論を行った。
(8) レアアース・レアメタルの安定供給確保<経産省、文科省>
高付加価値産業に必要不可欠なレアアース・レアメタルについては、特定供給国の政策に左右されない産業構造の確立を目指して、代替材料・使用量削減技術開発やリサイクル等を推進している。2012 年度から実施している「次世代自動車向け高効率モータ用磁性材料開発」を新たに「輸送機器の抜本的な軽量化に資する新構造材料等の技術開発事業」と名称を変更し、モータの高効率化・小型化を実現するため、従来以上に強力かつ希少金属の使用を大幅に削減した磁石材料の開発を行っている。また、「資源循環システム高度化促進事業」により、我が国の都市鉱山の有効利用を促進し、資源の安定供給及び省資源・省エネルギー化を実現するため、廃製品・廃部品の自動選別技術、高効率製錬技術及び動静脈情報連携システムの開発を行っている。さらに、「サプライチェーン強靱化に資する技術開発・実証」により、供給途絶リスクの高いレアアースのサプライチェーン強靱化につなげるため、レアアースの使用を極力減らす、又は使用しない高性能磁石の開発や不純物等が多く利用が難しい低品位レアアースを利用するための技術開発等を行っている。加えて、日米欧豪加の政策当局者及び技術専門家が、レアメタル供給を取り巻く世界的な問題について共通理解を深め、レアメタル代替技術やリサイクル技術などといった将来の安定供給を目指した情報交換を行うため、クリティカルマテリアル・ミネラル会合(2020 年度までは日米欧三極クリティカルマテリアル会合と呼称)を毎年開催している。2021 年度は6、12 月にオンラインで第11、12 回目の会合を開催した。
(9)医療機器産業の振興
日本の優れた「ものづくり技術」を活用した医療機関等との「医工連携」による開発・事業化事業及び医療上の価値が高く、競争力のポテンシャルが高い分野における医療機器の開発を推進した。2021 年度は、近年注目されている人工知能や機械学習を搭載したプログラム医療機器(SaMD)や遠隔・在宅診断・治療への対応に関する医療機器の開発・事業化を特に注力して支援している。推進にあたり、研究開発に対する補助金のみならず、医療機器ごとの特性や開発段階に応じて課題が大きく異なるとの声を受け、地域毎に医療機器の実用化の明確な成果を出口とする拠点作りを行うこと、各拠点のコアとなり、全体を見通す知識とネットワークを有する事業化人材を確保すること、それにより各地域拠点で不足するリソースを広域で連携することにより互いに共有し、効率的に医療機器開発を行うことが重要と考え、2021 年度より、地域の特色を活かした独自性のある拠点整備を進めるとともに、事業化人材を中心とした企業等への支援により、地域に医療機器開発エコシステムの構築を目的とする「地域連携拠点自立化推進事業」を実施し、2021 年度は5つの拠点を採択した。また、開発の指針となる開発ガイドライン(手引き)の策定を実施した。
(10) サポカーの普及啓発(1,127億円(2019年度補正))
高齢運転者による事故を踏まえ、高齢運転者の交通安全対策として、65 歳以上の高齢者を対象に、安全運転支援装置を搭載した安全運転サポート車(サポカー)の購入等を補助するサポカー補助金を、2020年3月から2021 年11 月まで実施した。具体的には、対歩行者衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置を搭載したサポカーの購入に対しては最大10 万円、後付けのペダル踏み間違い急発進抑制装置の購入・設置に対しては最大4万円の補助を行い、計140 万台の導入を支援した。また、サポカーの機能や関連する制度等の情報を掲載したサポカーポータルサイトの運営等を実施した。
(11) サイバーセキュリティ経済基盤構築事業(19億26百万円)
(独)情報処理推進機構サイバーレスキュー隊が、高度標的型サイバー攻撃を受けた企業等に対し、被害状況の把握や被害拡大を防ぐための初動対応支援(被害状況の把握や再発防止策策定)を実施した。また、(一社)JPCERT コーディネーションセンターを通じ、深刻なサイバー攻撃の温床となっている複数の国にまたがったサイバー攻撃基盤を駆除するため、標的型攻撃に関する情報を収集するとともに、各国のサイバー攻撃対応連絡調整窓口の間で情報を共有し、共同対処を行った。
(12) IT人材育成の戦略的推進((独)情報処理推進機構運営費交付金の内数)
(独)情報処理推進機構において、IT を駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイデア・技術を有する人材の発掘・育成を実施した。また、若手情報セキュリティ人材を発掘・育成するため、第一線の技術者から倫理面も含めたセキュリティ技術と最新ノウハウを修得する場として「セキュリティ・キャンプ」を開催した。
(13)模倣品・海賊版対策について
2004 年8月に経済産業省に設置された政府模倣品・海賊版対策総合窓口(一元的相談窓口)において、権利者等からの模倣品・海賊版に関する相談や情報提供を受け付け、関係省庁と連携して解決への対応を行うとともに、必要に応じて外国政府等への働きかけを実施した。
(14)知的資産経営の推進
我が国企業における自主的な知的資産経営報告書の作成による無形資産の「見える化」の促進に資するため、「知的資産経営WEEK2021」の開催を支援し、各セミナー等において講演を通じ情報提供を行うことで、知的資産経営の更なる普及・啓発を図った。
(15)営業秘密及び限定提供データ
①営業秘密管理に関する普及啓発
官民の実務者間において企業情報の漏えいに関する最新の手口やその対応策に関する情報交換を緊密に行う場である「営業秘密官民フォーラム」を2020 年6月に開催するとともに、判例分析や逮捕情報等に関する情報を掲載した営業秘密に関するメールマガジン「営業秘密のツボ」を毎月配信している。また、秘密情報の漏えいを未然に防止するための様々な対策を取りまとめた「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に向けて~」(2016 年2月公表)やその簡易版となる小冊子「秘密情報の保護ハンドブックのてびき~情報管理も企業力~」(2016 年12 月公表)、「不正競争防止法(平成5年法律第47 号)」による保護を受けるために必要となる最低限の水準の対策を示す「営業秘密管理指針」(2019 年1月改訂)等の周知活動を、HP や講演において引き続き行った。また、「秘密情報の保護ハンドブック~情報管理も企業力~」について、営業秘密に関係する法制度や情報環境等の変化を踏まえて、産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会にて改訂を検討した。
さらに、グローバル化により海外進出する日系企業が増加する中で、海外での意図しない営業秘密・技術流出防止を目指すべく、在外日系中堅・中小企業を主なターゲットにすえて、現地専門家によるハンズオン支援と情報提供活動を通じて、営業秘密管理体制の整備・強化を支援するための「中小企業アウトリーチ事業」を2019 年度から中国で実施しており、2021 年度は中国、タイ及びベトナムで実施した。また、現地制度や裁判例の動向と個別支援から得られた知見等を踏まえて、現地における営業秘密の管理に必要な留意点や契約ひな形等を盛り込んだ「営業秘密管理マニュアル」を取りまとめた。
②限定提供データに関する取組
IoT、ビッグデータ、AI 等の活用が進展する第4次産業革命を背景に、データの利活用を促進するための環境整備を目的として、「限定提供データ」の制度の創設等を盛り込んだ不正競争防止法の改正を行った(2018 年5月公布、限定提供データに関する規定等は2019 年7月施行)。さらに、データ利活用を進めるための事前対策のポイントをフェーズごとに取りまとめた「データ利活用のポイント集」やその簡易版となる小冊子「データ利活用のてびき」を2020 年6月に策定・公表、ポイント集を基に企業のデータ利活用の事例を詳細に記載した「データ利活用の事例集」を2021 年2月に策定・公表し、限定提供データの要件の考え方や不正競争行為に該当する事例などを盛り込んだ「限定提供データに関する指針」(2019 年1月公表)と併せてHP や講演において周知活動を行った。また、「限定提供データ」制度に係る規律の見直し要請や施行後の運用状況等を踏まえ、産業構造審議会知的財産分科会不正競争防止小委員会にて、同制度に係る規律の見直し及び「限定提供データに関する指針」の改訂を検討した。
(出典)経済産業省 2022年版ものづくり白書
・https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2022/index.html
(つづく)Y.H