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■日本とロシア・ウクライナとの貿易
前回は世界のロシア・ウクライナとの貿易動向を見たが、本項では我が国と両国との貿易動向を見ていく。我が国と両国との貿易額を見ると、両国は、我が国にとって主要な貿易相手国とはなっていない。具体的には、2021年の輸出においては、我が国の輸出総額の83.1兆円に対して、対ロシアへの輸出は8,624億円と割合としては1.0%であり、対ウクライナへの輸出は640億円と割合としては0.1%である。また、2021年の輸入においては、我が国の輸入総額84.8兆円に対して、ロシアからの輸入は1兆5,489億円と割合としては1.8%であり、ウクライナからの輸入は798億円と0.1%である。また、我が国の対世界での主要な輸出品目を見ると、両国はそれらの品目について、大きな輸出市場ではない。具体的には、2021年における我が国の輸出額の上位10品目(HS4桁ベース)について両国への輸出動向を確認すればわかるが、ロシアは乗用車等や貨物自動車等と物品によっては輸出先の順位として上位になる品目はあるものの、総じて、我が国の主要な輸出品目について両国が占める割合は大きくはない。
両国が我が国に対して輸入を通してどのような品目を供給しているのかを見ると、ロシアからのエネルギー関連の輸入割合が比較的高いことが示されている。欧州諸国ほどではないものの、商品市況での原油価格の上昇や供給不安を通じた影響は、我が国でも留意する必要があることが示唆されている。上述のとおり、我が国の主要な輸出品目について両国は必ずしも大きな市場とはなっておらず、ロシアからのエネルギー関連品目の輸入を除けば、両国は我が国にとって主要な輸入品の大きな供給源とはなっていない。
しかしながら、我が国と世界の貿易において必ずしも主要な品目ではなくとも、両国が我が国にとって重要な輸出市場もしくは、輸入の供給源となっている品目がある。我が国と両国での主要な貿易品目が、世界貿易額に占める割合をみると、我が国からの輸出においては、対ロシアへの輸出は、乗用車と同部品が世界輸出全体に占めるシェアは3%前後と高くはないものの、タイヤが世界輸出全体の7.3%と比較的高いシェアとなっている。また、我が国の輸入においては、ロシアは、エネルギー関連だけではなく、白金や海産物において主要な供給源となっており、ウクライナは葉巻たばこ等の主要な供給源である。更に詳細に品目を見ていくと、我が国は、一部の特定品目についてロシアからの輸入割合が高く、海産物ではうに(2021年の輸入金額の40.3%)等でロシアの輸入割合が高く、前項で触れたパラジウムについては、我が国は2021年の輸入数量の35.3%をロシアに依存している。他方、ウクライナからの輸入では、我が国は2021年のたばこの輸入金額の19.2%をウクライナに依存している。
(我が国のロシアとウクライナ進出企業の動向)
外務省が行っている海外進出日系企業拠点数調査によると、2020年10月時点において、我が国のロシアの企業拠点数は421とされ、ウクライナの企業拠点数は36とされている。両国における我が国企業の拠点について、製造業と卸・小売業が拠点数の割合が高いということが共通している。ロシアによるウクライナ侵略は現地に進出している日本企業の活動にも深刻な影響をもたらしている。具体的には、JETROによるロシア進出企業アンケート調査によると、同調査に回答があった111社について、製造業と非製造業の両方で撤退(撤退済み/撤退を決定)と事業停止(全面的及び一部)に踏み切った企業の割合が5割を超えている。
(ウクライナ情勢を踏まえた戦略物資・エネルギーサプライチェーンリスクと安定供給確保に向けた取り組み)
総じて、ロシアによるウクライナ侵略については、金融市場と商品市況の動揺がもたらす影響、両国の主要な輸出品目であるエネルギー関連や食料関連の供給混乱がもたらす影響、そして貿易額が多くはなくても両国が保有する希少資源等の供給途絶の可能性には留意が必要である。我が国では、ウクライナ情勢のみならず、中長期的な観点と、国民の生活や安全保障の観点から、重要物資の安全供給に関わるリスクの分析・対応を検討するため、経済産業大臣を本部長とする「戦略物資・エネルギーサプライチェーン対策本部」を開催し、第1回ではウクライナ情勢を踏まえ、早急に対策が必要な物資を特定し、対策の方向性を示した。
(つづく)Y.H
(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html