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■欧州との政治会談、協議など
(EU 関係)
欧州連合(EU)は、27か国が加盟、人口約5億人、GDPは世界全体の2割近くを占める政治・経済統合体である。EUは、域外に対する統一的な通商政策を実施する世界最大の単一市場であり、単一通貨のユーロには、19か国が参加している。また、国際秩序が液状化する中にあって、自由、民主主義、法の支配、人権といった基本的価値や原則を共有するという意味で我が国にとって重要なパートナーである。
また、欧州委員会は、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(ドイツ出身)、ミシェル欧州理事会議長(ベルギー出身)の下、気候変動(グリーン)分野、デジタル分野を中心に意欲的な政策の打ち出しを図っており、新型コロナウイルス感染症からの復興においても、復興基金「次世代のEU」の活用等を通じた大規模な投資の促進に加え、グローバルなルールメイキングの主導を一層推進する姿勢を示している。
気候変動(グリーン)分野については、2021年7月、「欧州気候法」が成立し、2030年までに温室効果ガス55%削減(90年比)を法的拘束力のある目標とすることを正式決定した。また、同年7月と12月に「Fit for 55パッケージ」を発表し、既存法の改正、新法を含む17の法案を提案した。その中で、EU排出権取引制度指令(EU-ETS)の改正案においては、海上輸送、建築、陸上輸送など対象セクターが拡大されると共に、既存対象セクターの更なる排出削減が求められた。また、自動車CO2排出規則も改正案が提案され、その中で2035年内燃機関車の販売の禁止が打ち出された。加えて、新たに発表された炭素国境調整措置(CBAM)では、セメント、肥料、鉄鋼、アルミ、電気の輸入を対象に国境でCO2排出量に基づき課税することとなっている。また、気候変動分野を含むサステイナブルファイナンスの基準となる「EUタクソノミー」については、持続可能な活動経済の6類型が示され、2020年11月に第1弾として、6類型のうちの2類型である気候変動の緩和と気候変動への適応をカバーする委任規則案が公表され、2022年1月1日から適用を開始している。
天然ガスと原子力については、2022年2月、一定条件下でグリーンと位置づける方針を公表した。さらに、2022年3月、今般のウクライナ情勢を踏まえ、エネルギー価格高騰及び需給ひっ迫への対応策、ロシア化石燃料依存からの脱却を2本柱とし、ガス供給源の多様化、再エネ、省エネ、水素促進等を方針とする政策文書「RePowerEU」を公表した。デジタル分野では、2021年3月に今後10年間の欧州のデジタル変革のビジョンと道筋を示した「デジタルコンパス2030」を公表した。また、欧州におけるデジタル単一市場の構築を目的とした「欧州データ戦略」に基づき、2020年11月に「データガバナンス規則案」、2022年2月に「データ規則案」が公表され、前者については2021年11月に欧州委員会、欧州議会、欧州理事会の間で政治的合意がなされた。2020年末には、プラットフォーマーへの規制措置等を盛り込んだ「デジタルサービス法案」、「デジタル市場法案」が公表され、後者については2022年3月に欧州委員会、欧州議会、欧州理事会の間で政治的合意がなされ、10月に発効見込みとなっている。
また、2021年9月に公表した「インド太平洋における協力のためのEU戦略」において、日本、韓国、シンガポールとのデジタル・パートナーシップの締結を模索するとした。EUの貿易政策においては、「開かれた戦略的自律」を柱として掲げており、2021年5月に公表した「2020年産業戦略アップデート」の中でも、コロナ危機の影響・教訓も踏まえ、半導体や原材料等の戦略分野の特定国への依存低減を推進していくとしている。
2022年2月に、近年の半導体不足による自動車や医療機器製造への影響や、国際的な半導体振興政策動向を踏まえて、「欧州半導体規則案」を公表。2030年にEUの半導体市場シェアを20%以上(現在10%)とすることを目標としている。また、人権デュー・ディリジェンス(DD)についてEUレベルでの議論も加速しており、欧州委員会は人権DDを義務化する「人権DD指令案」を2022年2月に公表した。それに先立ち、欧州委員会はEU企業による活動・サプライチェーンにおける強制労働のリスク対処に関するデュー・ディリジェンス・ガイダンスを2021年7月に公表した。2019年2月の発効後、着実に実行が進められている日EU経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)を含む、これまでの協力を基礎に、日EU、あるいは米国を含む三極の枠組みで、グローバルな議論をリードしていくことが重要である。
2021年5月、菅前総理とミシェル議長、フォン・デア・ライエン委員長との間で第27回日EU定期首脳協議をオンライン開催した。双方は、「日EUグリーン・アライアンス」の立上げを発表し、このアライアンスの下、有望なグリーン関連企業を擁し、ルール策定に強みを持つEUとの協力を推進していく。また、岸田総理は、2021年11月、2022年3月にミシェル議長と、2021年12月、2022年2月、3月にフォン・デア・ライエン委員長と会談を行った。梶山前経済産業大臣は、2021年9月に訪日したブルトン委員(域内市場担当)と会談した。また、萩生田経済産業大臣も2021年11月にはドンブロフスキス上級副委員長(貿易担当)、ブルトン委員(域内市場担当)とそれぞれテレビ会談を行い、2022年3月にはベルギーのブリュッセルを訪問し、ドンブロフスキス上級副委員長、ブルトン委員、ティマーマンス上級副委員長(グリーンディール担当)、シムソン委員(エネルギー担当)と会談を行うなど、コロナ禍においても首脳・閣僚レベルでも密接な連携が持続している。
(英国)
英国は、基本的価値を共有するグローバルな戦略的パートナーであり、日本とは経済的な結びつきが強いだけでなく、近年は安全保障・防衛協力を含め、関係を強化している。EU離脱後、英国は欧州域外への関与を強化する姿勢を強めており、中でもインド太平洋地域は、英国政府が2021年3月に発表した統合レビュー文章「競争時代におけるグローバル・ブリテン」において、英国の国際戦略における重要な地域と位置づけられている。CPTPP加入への強い意欲はその一端であり、2021年6月には加入手続開始が決定された。
また、英国は2021年のG7と国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の議長国を務めており、G7は6月に首脳会議がコーンウォールにて、COP26は10月から11月にかけてグラスゴーにて開催された。菅前総理はジョンソン首相と2021年5月に電話会談で、6月のG7首脳会合の場では対面で会談を行った。岸田総理は2021年11月のCOP26や、2022年3月のG7首脳会合(ベルギー)の場でジョンソン首相と対面で会談を行い、2022年2月には電話会談を実施した。また、梶山前経済産業大臣は2021年5月、クワーテンビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)大臣とテレビ会談を行った。萩生田経済産業大臣は2022年2月にトレビリアン国際貿易大臣と東京で会談。2022年3月にクワーテンBEIS大臣とテレビ会談と対面での会談を行った。このように、首脳・閣僚レベルでも日英関係を一層強固にするため、密接に連携している。
(ドイツ)
ドイツとは、2017年3月に世耕経済産業大臣(当時)と高市総務大臣(当時)が独経済エネルギー大臣と署名した「ハノーバー宣言」に基づき、IoT/インダストリー4.0等の分野で二国間協力を進めている。また、日独間の産業協力の深化・発展について意見交換を行う経済産業省と独経済エネルギー省(現在の独経済・気候保護省)との間の対話である「日独次官級定期協議」を2021年2月に実施した。
2021年11月、社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党が連立に合意し、12月ショルツ元財務相が首相として選出された。3党の連立協定でも自由で開かれたインド太平洋地域の実現について言及があり、多国間主義、法の支配及び民主主義の強化、気候保護、貿易及びデジタル化の分野において協力を進展させたいとしている。また、豪州、日本、ニュージーランド及び韓国といった価値を共有するパートナーとの関係を強化するとともに、日本との定期的な政府間協議を開始したいとしている。2021年12月、2022年2月に岸田総理はショルツ首相と電話会談を行うなど、日独関係の更なる緊密化に向けて連携している。
(フランス)
フランスとは、2019年6月にマクロン大統領が訪日した際に発出した「『特別なパートナーシップ』の下で両国間に新たな地平を開く日仏協力のロードマップ(2019~2023年)」に基づき、協力を進めている。2021年7月、菅前総理はマクロン大統領と日仏首脳会談を行い、インド太平洋、気候変動、経済等の協力につき共同声明を発出した。また、11月、岸田総理はマクロン大統領と電話会談を行った。2022年2月、フランス・EU共催「インド太平洋閣僚会合」が開催され、安全保障、デジタル化、気候変動対策など、幅広い分野での連携強化が確認された。
日仏間の産業協力に関しては、経済産業省と仏経済財務省との間で「日仏産業協力委員会」を設け、日仏における産業政策の展望や産業活動などについて意見交換を行っている。引き続き、本委員会を通じて日仏間の産業協力の強化を図っていく。また、航空機、エネルギー、原子力といった分野では、分野ごとの日仏間の対話の場を設け二国間協力の進展を図っている。
(EU域外)
東欧地域のウクライナ、ベラルーシは、ソ連時代から宇宙・航空機、鉄鋼、化学といった製造業が盛んだったこともあり、伝統的に高度な技術を有する企業が所在している。近年は、IT産業が伸長しており、高度なIT技術者やスタートアップ企業を多く生み出していた。2021年10月後半以降、ウクライナ国境付近においてロシア軍の増強が確認されるなどウクライナ情勢は不安定化し、2022年2月24日にはロシアによるウクライナへの侵攻が開始された。ロシアによるウクライナ侵略を受けて、日本はウクライナ国民への支援、金融措置、貿易措置を実施するなど、G7を始めとする国際社会と連携して対応している。
(つづく)Y.H
(出典)経済産業省 通商白書2022
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/index.html