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■エビデンスに基づく戦略策定、未来社会を具体化した政策の立案・推進
未来社会像の検討に向けた長期的な変化の探索・分析の一環として、文部科学省科学技術・学術政策研究所は、5年ごとに科学技術予測調査(昭和46年当初は科学技術庁にて実施)を行っている。次回の第12回調査の実施に向けて、令和2年度からは、科学技術や社会の早期の兆しを捉えるホライズン・スキャニングとして、毎年、専門家に注目する科学技術等をアンケートし、専門家の知見を幅広く収集・蓄積している。令和3年度からは、人文・社会科学分野の専門家が第12回調査に参加できる体制の構築を始めている。内閣府は、重要科学技術領域の探索・特定に資するよう、論文情報等を活用した分析ツールを開発し、研究動向の試行的な分析を実施している。
分析ツールで作成した科学技術領域の俯瞰図等に有識者の専門的知見を加え、政策検討に活用する仕組みの構築を進めている。また、府省共通研究開発管理システム(e-Rad)を通じて分析に必要となる各種データを収集している。これらのデータも活用し、エビデンスシステム(e-CSTI)において、研究費と研究アウトプットに関する分析、研究設備・機器の共用や外部資金の獲得状況に関する分析、産業界の人材育成ニーズと学生の履修状況に関する分析等を実施している。文部科学省科学技術・学術政策研究所は、科学技術・イノベーションに関する政策形成及び調査・分析・研究に活用するデータ等を体系的かつ継続的に整備・蓄積していくためのデータ・情報基盤を構築し、また、調査・分析・研究を行っている。当該基盤を活用した調査研究の成果は、科学技術・イノベーション基本計画の検討をはじめ、内閣府及び文部科学省の各種政策審議会等に提供・活用されている。
また、科学技術振興機構研究開発戦略センターは、国内外の科学技術・イノベーションや関連する社会の動向の把握・俯瞰・分析を行い、研究開発成果の最大化に向けた研究開発戦略を検討し、科学技術・イノベーション政策立案に資する提言等を行っている。技術の高度化・複雑化の進展に伴い技術革新の重要性が増す中、限られたリソースを戦略的に投じていくことが一層求められている。こうした観点から、新エネルギー・産業技術総合開発機構技術戦略研究センターは、産業技術政策の策定に必要なエビデンスや知見を提供する重要なプレイヤーとして、グローバルかつ多様な視点で技術・産業・政策動向を把握・分析し、産業技術やエネルギー・環境技術分野の技術戦略の策定及びこれに基づく重要なプロジェクトの構想に政策当局と一体となって取り組んでいる。
(半導体の技術的優位性確保と安定供給に向けた取組)
半導体は、デジタル化や脱炭素化、経済安全保障の確保を支えるキーテクノロジーであり、その技術的優位性の確保と安定供給体制の構築に向け、諸外国に比肩する国策としての取組が必要である。経済産業省としては、半導体・デジタル産業戦略検討会議を開催し、令和3年6月には半導体・デジタル産業戦略を打ち出している。さらに、同年11月には、「我が国の半導体産業の復活に向けた基本戦略」として更なる具体化を行っている。基本戦略においては、3段階にわたる取組方針を示しており、具体的には、ステップ1として、半導体の国内製造基盤の整備に取り組み、ステップ2として、令和7年以降に実用化が見込まれる次世代半導体の製造技術開発を国際連携にて進めるとともに、ステップ3として、令和12年以降を睨みゲームチェンジとなり得る光電融合などの将来技術の開発などにも着手していくことを掲げている。この戦略に基づき、令和3年度の補正予算においては、ステップ1の実現に向けて、先端半導体の製造基盤整備に6,170億円、サプライチェーン上の不可欠性の高い半導体の生産設備刷新を推進するために470億円の予算を計上した。また、ステップ2、ステップ3の実現に向けて、①日米連携による超微細な次世代半導体の製造技術や、②電気配線を光配線化することで多量のデータを高速かつ低消費電力で処理する光電融合などの将来技術について研究開発を行うべく、同補正予算において1,100億円の予算を計上している。さらに、この基本戦略を実現していく上で不可欠な半導体産業を担う人材の育成・確保についても、官民連携による具体施策の推進を行っている。引き続き、戦略に基づき、必要な施策を講じていく。
(ロボット開発に関する取組等)
経済産業省では、令和元年7月にロボットによる社会変革推進会議が取りまとめた「ロボットによる社会変革推進計画」に基づき、「①ロボットフレンドリーな環境の構築」、「②人材育成の枠組みの構築」、「③中長期的課題に対応する研究開発体制の構築」、「④社会実装を加速するオープンイノベーション」に関する取組を進めている。「ロボットフレンドリーな環境の構築」については、施設管理、小売、食品製造、物流倉庫の分野での研究開発を進め、ユーザー視点のロボット開発や、データ連携、通信、施設設計等に係る規格化・標準化を推進しており、具体的な一例としては、施設管理分野において、令和3年6月にメーカーを問わずロボットとエレベーターが通信連携するための統一規格を策定したところである。
「人材育成の枠組みの構築」については、ロボットメーカー・システムインテグレーターといった産業界と教育機関が参画するかたちで令和2年6月に設立した「未来ロボティクスエンジニア育成協議会(CHERSI)」が、教員や学生を対象とする現場実習や教育カリキュラム等の策定に関する支援を実施している。「中長期的課題に対応する研究開発体制の構築」については、中長期的な視点で次世代産業用ロボットの実現に向けて、異分野の技術シーズをも取り込みつつ基礎・応用研究を実施している。「社会実装を加速するオープンイノベーション」については、世界のロボットの叡智を集めて開催する競演会として、令和3年度に「World Robot Summit 2020」を開催した(愛知大会(9月)、福島大会(10月))。
(地理空間情報の整備)
内閣官房地理空間情報活用推進室は、産学官民が協調して高精度で利用価値の高い地理空間情報を利用できる環境を整備し、これら高度に活用する「G空間社会」を実現するため、令和4年3月18日に第4期地理空間情報活用推進基本計画を策定した。
(つづく)Y.H
(出典)
文部科学省 令和4年版科学技術・イノベーション白書
科学技術・イノベーション白書