平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第12回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

ISO 9001:2000規格の要求事項
6. 資源の運用管理

6.1 資源の提供

  • (1) 組織は,次の事項に必要な資源を:
    • 明確にする。
    • 提供する。
  • a) 品質マネジメントシステムを実施し,維持する。また,その有効性を継続的に改善する。
  • b) 顧客満足を,顧客要求事項を満たすことによって向上する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がa),b)の事項に必要な資源を明確にし,提供するのか決め,記述する。その帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。資源とは,人,もの(設備,材料など),金である。
    • “a),b)の事項に必要な資源を明確にし,提供する”ことは品質マニュアルに記述しなくてもよい。
    • 関連する要求は,a)は8.5.1項に,b:は8.2.1項でされている。

ISO 9001:2000規格の要求事項
6.2 人的資源

6.2.1 一般

  • (1) 製品品質に影響がある仕事に従事する要因は,関連する教育、訓練,技能及び経験を判断の根拠として力量がある。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰が要員に力量があるようにするかを決め,記述する。

ISO 9001:2000規格の要求事項
6.2.2 力量,認識及び教育・訓練

  • (1) 組織は,次の事項を実施する。
    • a) 製品品質に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
    • b) 必要な力量が持てるように教育・訓練をし,または他の処置をとる。
    • c) 教育・訓練又は他の処置の有効性を評価する。
    • d) ・組織の要員が,自らの活動の持つ意味と重要性を認識する。
        ・品質目標の達成に向けて自らどのように貢献できるのかを認識することを確実にする。
    • e) 教育,訓練,技能及び経験について該当する記録を維持する。

  • 品質マニュアル記述のポイント
    • a)については,「製品品質に影響がある仕事」と「必要な力量」を一覧にするとよい。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • b)では,教育・訓練,または他の処置の計画を作成する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。6.2.2項のa)と同じ帳票でもよい。
    • c)では,計画に基づいて実行した結果の評価をする。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。6.2.2項のa)と同じ帳票でもよい。
    • d)を実行するための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • e)は,「4.2.4 記録の管理」の一覧に示す。この一覧表には,誰が記録をとり,誰が承認するのかが示されていることがよい。記録のフォーマットを品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • a)~e)について,誰かが何かを行うのかを記述する。

ISO 9001:2000規格の要求事項
6.3 インフラストラクチャー

  • (1) 組織は,製品要求事項への適合を達成するうえで必要とされるインフラストラクチャーを:
    • 明確にする。
    • 提供する。
    • 維持する。

  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がインフラストラクチャーを明確にし,提供し,維持するのか決め,記述する。明確にするための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (2)インフラストラクチャーには次のようなものがある(この一文は要求事項ではない。説明文である。)
    • a)建物,作業場所及び関連するユーティリティー(電気,ガス,水など)
    • b)設備(ハードウェアとソフトウェアとを含む)。
    • c)支援業務(輸送,通信など)
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • “インフラストラクチャーを提供し,維持する”ことは,品質マニュアルに記述しなくてもよい(上記帳票に記載されていればわかる)。
      ただし,大型の施設で個別に記載できるものがあれば,例示することは推奨できる(例:クリーンルーム,LANなど)。

ISO 9001:2000規格の要求事項
6.4 作業管理

  • (1)組織は、製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を:
    • 明確にする。
    • 運営管理する。

  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰が必要な作業環境を明確にし,運営管理をするのか決め記述する。明確にするための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • “作業環境を明確にし,運営管理する”ことはマニュアルに記述しなくてもよい

ISO 9001:2000規格の要求事項
7. 製品実現
7.1 製品実現の計画

  • (1) 組織は,製品実現のために必要なプロセスを計画して,構築する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰が製品実現のために必要なプロセスを計画して,構築するのかを決め,記述する。計画するための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。QC工程図,施工計画書,業務フローチャートなど,いろいろな帳票が考えられる。

  • (2) 製品実現の計画は,品質マネジメントシステムのその他のプロセスの要求事項と整合性がとれている。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 品質マニュアルの4章,5章,6章,8章のプロセスの要求事項と食い違いがないように(総合性がとれているように)する。
    • 総合性がとれていればよいが,活動した結果の状況を規格要求事項の表現をそのまま使用して記述してもよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (3) 製品実現の計画にあたっては,組織は次の事項について該当するものを明確にする。
    • a) 製品に対する品質目標及び要求事項。
    • b) ・製品に特有な,プロセスと文書の確立の必要性。
      ・製品に特有な資源の提供の必要性。
    • c) ・その製品のための検証,妥当性の確認,監視,検査及び試験活動。
      ・製品合否判定基準
    • d) 製品実現のプロセス及びその結果としての製品が要求事項を見たしていることを実証するために必要な記録。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 7.1項の(1)において作成した帳票にa)~ d)にある項目を記述するとよい。
    • a)~d)は組織の製品実現の実態に合わせて計画とする(規格は,“次の事項について該当するもの”となっている)。現実と離れた計画を作成しても,システムは動かない。
    • “該当するものを明確する”ことは品質マニュアルに記述しなくてもよい(帳票の一覧表からわかる)。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (4) この計画のアウトプットは,組織の計画の実行に適した様式である。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 7.1項の(1)において作成した帳票を使用するとよい。

ISO 9001:2000規格の要求事項
7.2 顧客関連のプロセス

7.2.1 製品に関連する要求事項の明確化

  • (1) 組織は,次の事項を明確にする。
  • a) 顧客が規定した要求事項.これには引渡し及び引渡し後の活動に関する要求事項を含む。
  • b) 顧客が明示してはいないが,指定された用途又は意図された用途が既知である場合,それらの用途に応じた要求事項。
  • c) 製品に関連する法令・規制要求事項。
  • d) 組織が必要と判断する追加要求事項。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がa)~d)の事項を明確にするのかを決め,記述する。明確にするための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • a)~d)の事項は組織の実態によって決める。
    • a)~d)が明確になっていればよく,要求事項そのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい(a)~d)そのものは帳票をみればわかる)。

ISO 9001:2000規格の要求事項
7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー

  • (1) 組織は,製品に関連する要求事項をレビューする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がレビューするのかを決め,記述する。レビューするための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (2) このレビューは,組織が顧客に製品を提供することについてのコミットメント(例:提案書の提出,契約又は注文の受託,契約又は注文への変更の受託)をする前に実施する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • レビューする時を決める.7.2.2項の(1)の帳票に記入できるようにしておく。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (3) レビューでは次の事項を確実にする。
  • a) 製品の要求事項が定められている。
  • b) 契約又は注文の要求事項が以前に提示されたものと異なっている場合には,それについて解決されている。
  • c) 組織が,定められた要求事項を満たす能力を持っている。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • a)~c)が確実にできるよう,7.2.2項の(1)の帳票を設計しておき,定められた者が行う。
    • a)~c)が確実にされていればよく,要求事項そのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい(a)~c)そのものは帳票をみればわかる)。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (4)このレビューの結果の記録及びそのレビューを受けて取られた処置の記録を維持する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 「4.2.4記録の管理」の一覧に示す.一覧には,誰が記録をとり,誰が承認するのかが示されていることがよい。記録のフォーマットを品質マニュアルの付録に付けるとよい。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (5)顧客がその要求事項を書面で示さない場合には,組織は顧客要求事項を受託前に確認する。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がどのように確認するかを決めて,記述する。
  • ISO 9001:2000規格の要求事項
  • (6)・製品要求事項が変更された場合には,組織は,関連する文書を修正する。
  •   ・変更後の要求事項が関連する要員に理解されることを確実にする。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 製品要求事項が記載されている文書は,文書管理手順書に従うものとし,4.2.3項(3)に従う。しかし,顧客要求事項を記載した一過性の文書の扱いを決めてないならば,この項で具体的に決めることになる。

ISO 9001:2000規格の要求事項
7.2.3 顧客とのコミュニケーション

  • (1) 組織は,次の事項に関して顧客とのコミュニケーションを図るための効果的な方法を:
    • 明確にする。
    • 実施する
  • a) 製品情報
  • b) 引き合い,契約もしくは注文,またはそれらの変更。
  • c) 苦情を含む顧客からのフィードバック。
  • 品質マニュアル記述のポイント
    • 誰がコミュニケーションを図るための効果的な方法を明確にし,実施するのかを決め,記述する。効果的な方法を明確にするための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
    • “a)~c)を明確にし,実施する”ことは品質マニュアルに記述しなくてもよい(帳票をみればわかる)。