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平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第16回
◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。
ISO 9001:2000規格の要求事項
8.2.3 プロセスの監視及び測定
- (1)組織は,品質マネジメントシステムのプロセスを適正な方法で監視し,適用可能な場合には,測定する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が品質マネジメントシステムのプロセスを監視し,測定するのか決め,記述する。監視し,測定するための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- 帳票には,監視の対象とするプロセス,測定項目,方法の欄を入れておくとよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (2)これらの方法は,プロセスが計画とおりの結果を達成する能力がある事を実証するものである。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が,何をして能力の実証をするのかを決め,記述する。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (3)計画どおりの結果が達成できない場合には,製品の適合性の保証のために,適宜,修正及び是正処置をとる。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が修正及び是正処置をとるのかを決め,記述する。修正及び是正処置をとるための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。8.2.3項の(1)と同じ帳票でもよい。
ISO 9001:2000規格の要求事項
8.2.4 製品の監視及び測定
- (1)組織は,製品要求事項が満たされていることを検証するために,製品の特性を:
- 監視する
- 測定する
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が製品の特性を監視し,測定するのか決め,記述する。製品の特性を監視し,測定するための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (2)監視及び測定は,個別製品の実現の計画に従って,製品実現の適切な段階で実施する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 特に,品質マネジメントに記述しなくてもよいが,“適切な段階”について記述できればさらに良い。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (3) 合否判定基準への適合の証拠を維持する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が証拠を維持するのかを決め,記述する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (4)記録には,製品のリリース(次工程への引き渡し又は出荷)を正式に許可した人を明記する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が記録に“正式に許可した人を”明記するか決めて,8.2.4項の(3)の帳票に製品のリリースを許可する人の欄を設けておけばよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (5)個別製品の実現計画で決めたことが問題なく完了するまでは,製品のリリース(出荷)及びサービス提供は行わない。
- ただし,当該の権限を持つものが承認したとき,及び該当する場合に顧客が承認したときは,この限りではない。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 製品,サービスのリリースは,何が完了したら行うのかを具体的に記述する。
- さらに,当該に権限を持つ者は誰なのか,対象品によって異なるなら,これも記述するとよい。
ISO 9001:2000規格の要求事項
8.3 不適合製品の管理
- (1) 組織は,製品欲求事項に適合しない製品が誤って使用されたり,又は引き渡されることを防ぐために:
- 識別することを確実にする。
- 管理することを確実にする。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が,不適合製品をどんな方法で識別するのか,管理するのかを決め,記述する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- 単に,“識別する,管理する”だけでなく,どのようにして確実にするのかも書くとなおよい
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (2)不適合製品の処理に関する管理及びそれに関連する責任と権限を“文書化された手順”に規定する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 不適合製品を管理する手順(specified way ;規定されたやり方)として文書化する。手順書には,不適合製品の処理に関する管理及びそれに関する責任と権限を規定する。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (3)組織は,次のいずれかの方法で,不適合製品を処理する。
- a)発見された不適合を除去するための処置をとる。
- b)当該の権限を持つ者,及び該当する場合に顧客が,特別採用によって,その使用,リリース(次工程への引渡し)若しくは出荷,又は合格判定を正式に許可する。
- c)本来意図された使用又は適用が出来ないような処置をとる。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 手順書に,a)~c)の不適合製品の処理の方法を規定する。
しかし,a)~c)にどう対応するか,その概要を品質マニュアルに記述すれば,処理の方法が明確になってさらによい。概要には,不適合品の処置方法を決める権限は誰が持っているか,特別採用を決める(合否判定を許可する)のは誰かなどが含まれる。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (4)不適合の性質及び,不適合に対してとられた特別採用を含む処置の記録を維持する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 「4.2.4 記録の管理」の一覧に示す。一覧には,誰が記録をとり,誰が承認するのかが示されていることがよい。記録のフォーマットを品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (5)不適合製品に修正を施した場合には,要求事項への適合性を実証するための再検証を行う。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が再検証を行うのかを決め,記述する。8.3項の(4)の記録に残す。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (6) 引渡し後又は使用開始後に不適合製品が検出された場合には,組織は,その不適合による影響又は起こり得る影響に対して適切な処置をとる。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が適切な処置をとるのかを決め,記述する。8.3項の(4)の記録に残す。
ISO 9001:2000規格の要求事項
8.4 データの分析
- (1) 組織は,品質マネジメントシステムの適正性及び有効性を実証するため,また,品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善の可能性を評価するために,適切なデータを:
- 明確にする。
- 収集する。
- 分析する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が適切なデータを明らかにし,収集し,分析するのかを決め,記述する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- “データを明確にし,収集し,分析する”ことそのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (2)上記データの中には:
- 監視及び測定の結果から得られたデータを含める。
- それ以外の該当する情報源からのデータを含める。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 要求事項通りにQMSを構築すればよく,要求事項そのものを品質マニュアルに記述しなくてもよい。しかし,明確にするための説明としての記述ならばあってもよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (3) データの分析によって,次の事項に関連する情報を提供する。
- a)顧客満足。
- b)製品要求事項への適合性。
- c)予防処置の機会を得ることを含む,プロセスと製品の特性および傾向。
- d)供給者
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰がa)~d)の情報を提供するのかを決め,記述する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
ISO 9001:2000規格の要求事項
8.5 改善
8.5.1 継続的改善
- (1) 組織は,品質方針,品質目標,監査結果,データの分析,是正処置,予防処置及びマネジメントレビューを通じて,品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が何をして品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善するのかを決め,記述する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- ここでいう誰は,この要求事項は多くの活動を通して実現するものなので,組織の代表者になる場合が多いであろう。
ISO 9001:2000規格の要求事項
8.5.2 是正処置
- (1)組織は,再発防止のため,不適合の原因を除去する処置をとる。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が再発防止のため,不適合の原因を除去する処置をとるのかを決め,記述する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (2)是正処置は,発見された不適合の持つ影響に見合うものである。
- 品質マニュアル記述のポイント
- “是正処置は,……見合うものである”ことは品質マニュアルに記述しなくてもよい。しかし,説明として記述したければしてもよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (3)次の事項に関する要求事項を規定するために,“文書化された手順”を確立する。
- a) 不適合(顧客からの苦情を含む)の内容確認。
- b) 不適合の原因の特定。
- c) 不適合の再発防止を確実にするための処置の必要性の特定。
- d) 必要な処置の決定及び実施。
- e) とった処置の結果の記録
- f) 是正処置において実施した活動のレビュー
- 品質マニュアル記述のポイント
- 是正処置を管理する手順(specified way;規定されたやり方)として文書化する。
手順書には,a)~f)に関する要求事項を規定する。
しかし,ポイントは品質マニュアルにも記述するとよい。たとえば,誰が不適合の内容を確認し,誰が原因を特定し,誰が是正処置を実施するのか,誰がレビューを行うかを不適合の種類に応じて決め,記述する。
ISO 9001:2000規格の要求事項
8.5.3 予防処置
- (1) 組織は,起こり得る不適合が発生することを防止するために,その原因を除去する処置を決める。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 誰が起こり得る不適合が発生することを防止するために,その原因を除去する処置をとるのかを決め,記述する。そのための帳票を品質マニュアルの付録に付けるとよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (2) 予防処置は,起こり得る問題の影響に見合ったものである。
- 品質マニュアル記述のポイント
- “予防処置は,……見合った者である”ことは品質マニュアルに記述しなくてもよい。しかし,説明として記述したければしてもよい。
- ISO 9001:2000規格の要求事項
- (3)次の事項に関する要求事項を規定するために“文書化された手順”を確立する。
- a)起こり得る不適合及びその原因の特定。
- b)不適合の発生を予防するための処置の必要性の評価。
- c)必要な処置の決定及び実施。
- d)とった処置の結果の記録。
- e)予防処置において実施した活動のレビュー。
- 品質マニュアル記述のポイント
- 予防処置を管理する手順(specified way;規定されたやり方)として文書化する。手順書には,a)~e)に関する要求事項を規定する。
しかし,ポイントは品質マニュアルにも記述するとよい。たとえば,誰が起こり得る不適合を特定し予防の仕掛けをするか,誰が予防処置を実施するか,誰がレビューを行うかを,起こり得る不適合の種類に応じて決め,記述する。