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平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第24回
◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。
8.2.3 プロセスの監視及び測定
- QMSのプロセスの監視・測定
- ① 管理責任者は,次頁に各プロセスごとの監視・測定項目,責任者を定め,プロセスが計画通りに結果が出ていることを確認する。
- ② プロセスの結果の確認は,内部監査により12カ月おきに実施する。
- ③ プロセスが計画通りに出ていない場合は,各プロセスの責任者へ修正及び是正処置を指示する.詳細は,8.2.2「内部監査」に規定する。
- 製造プロセスの監視・測定
- ① 製造部長は,主要な監視・測定が可能なプロセスを定め,各製造プロセスごとの測定項目,方法,及び製品特性との相関確認項目を下記内容にて規定し,各製造プロセスが計画通りに結果が出ていることを確認する。
- ② また,一部計画通りに結果が出ていない場合については,修正及び是正処置の内容についても記載する。
- プロセスの監視及び測定の記録は,品質記録として管理する.「製造プロセスの検査記録B62」の帳票様式を付録に付ける
プロセス | 責任者 | 監視・測定項目 |
経営方針 | 各担当部長 | ・品質目標の達成率 ・経営資源変更時の運用状況 |
企画 | 各担当部長 | ・教育・訓練計画の実施率 |
契約 | 営業部長 | ・販売実績 ・市場調査情報 |
設計 | 技術部長 | ・設計変更件数 |
・設計検証能力 | ||
購買 | 購買部長 | ・原料購買品の不良率 |
製造 | 製造部長 | ・製品の不良率 ・特別採用件数 |
サービス | 技術部長 | ・顧客評価(クレーム件数等) |
改善 | 各担当部長 | ・是正・予防処置の実施状況 |
主要な製造プロセス | 工程設計(開発)設定項目 | 製造管理 | 製品特性と相関管理事項 | 修正及び是正処置 | ||
測定項目 | 評価方法 | 工程設計(開発)へのインプット | ||||
製麦 | 焙煎 | 温度,時間 | 温度条件バラツキ | ○ | 色調 | 温度条件見直し |
粉砕 | 麦芽粒度 (max値) |
粒度条件バラツキ | ○ | 糖化時間 | 粒度条件見直し | |
仕込み | 糖化 | 温度,時間 | 温度条件バラツキ | ○ | 糖度 | 温度条件見直し |
煮沸 | 温度,時間 | 温度条件バラツキ | ○ | 苦味度,糖度 | 温度条件見直し | |
発酵 | 温度,時間 | 温度条件バラツキ | ○ | 糖度,アルコール濃度,苦味度 | 温度条件見直し | |
貯酒 | 温度,時間 | 温度条件バラツキ | ○ | 糖度,アルコール濃度,苦味度 | 温度条件見直し | |
仕上げろ過 | フィルター形状 | 使用時間 | ○ | にごり | フィルター交換 頻度見直し |
|
保存 | 温度,時間 (MAX値) |
温度条件バラツキ | ○ | 糖度,アルコール濃度,苦味度 | 温度条件見直し |
○印:統計的処理適用項目
8.2.4 製品の監視及び測定
- 製造部長は,製品要求事項を満たすことを検証するために,下記に各プロセスごとの製品の特性の監視及び測定する検査項目及び検査頻度を定め,実行する。
- 検査は受入れ,工程内,最終の段階にて定め,それぞれの製品特性値に適合していることを確認する。上記段階は,品質計画書で定めた段階に従って実行する。
- 合否判定基準に適合している証拠は,維持すること
- 最終検査については,製造部長が各製品特性値に適合していることを確認し,承認する。承認後,製造部長は,出荷を許可する。検査が未完了,または製品特性値に適合しない場合,出荷を許可しない。
- 承認後の最終検査記録の結果は,品質記録として管理する。「製品の検査記録B61」の帳票様式を付録に付ける。
- 詳細内容は,検査・試験文書に規定する。
検査種別 | プロセス | 検査項目(規定値及び範囲も含む) | 検査 頻度 |
|||||||
無機成分(max値) | 糖度(範囲) | アルコール濃度(範囲) | 苦味度(範囲) | 官能苦味度(MIN値) | 色(範囲) | にごり(max値) | その他 | |||
受入れ | 原料 (麦粒度) |
― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 粒度範囲 | バッチ単位 |
工程内 | 原料配合 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | 各原料の比率重量 | バッチ単位 |
水処理 (水質) |
○ | ― | ― | ― | ― | ― | ― | バッチ単位 | ||
仕込み (煮沸) |
― | ○ | ― | ○ | ― | ― | ― | バッチ単位 | ||
発酵 | ― | ○ | ○ | ○ | ○ | ― | ― | バッチ単位 | ||
貯酒 | ― | ― | ○ | ○ | ○ | ― | ― | バッチ単位 | ||
ビン洗浄 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ビン汚れ割れ率(MAX値) | ビン単位 | |
ビン詰 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ビール充填率 | ビン単位 | |
最終検査 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | バッチ単位 |
8.3 不適合製品の管理
- 不適合の種別を下記の2種類に分類する。
- ① 自社内の場合(製品及びプロセス異常)
- ② 顧客の場合 (顧客クレーム)
- 品質管理部長は,下記にそれぞれの不具合製品の手順を規定する。
- 各該当部長は,下記の内容にて不適合の処置をする。
- 各該当部長は,不適合の処理時に下記内容を考慮する。
- ① 不適合製品の除去するための処置を取ること。
- ② 特別採用の場合は,リリース又は出荷前に顧客の承認を得ること。
- ③ 用途変更の場合,変更前の用途に変更できないように識別表示を変更し,管理すること。
- 不適合製品の記録(処置も含む)は,品質記録として管理する。「不適合製品報告書B71」,「クレーム処置依頼書B72」の帳票様式を付録に付ける。
自社内の場合(各プロセス別) | 顧客の場合 | |||||
識別・管理 | 原料受入れ | 製麦 | 仕込み~ビン洗浄 | ビン詰め~保存 | 顧客クレーム | |
処置 | 内容 | 隔離 | 隔離 | タンク保持 | 隔離 | 隔離 |
協議部署 | Ⓑ | Ⓐ~Ⓒ | Ⓐ~Ⓒ | Ⓐ~Ⓓ | Ⓐ,Ⓒ | |
主観部署 | 製造部 | ― | ― | ― | 製造部, 営業部 |
|
決定者 | 購買部 | 製造部 | 製造部 | 製造部 | 技術部 | |
承認 | 購買部長 | 製造部長 | 製造部長 | 製造部長 | 技術部長 | |
記録承認者 | 購買部長 | 製造部長 | 製造部長 | 製造部長 | 営業部長 | |
記録 | 不適合 報告書 |
不適合 報告書 |
不適合 報告書 |
不適合 報告書 |
クレーム処理 依頼書 |
処置 | 内容 | 備考(当社ビールの場合) |
Ⓐ | 廃棄(不合格) | ― |
Ⓑ | 修正手直し→再検証 | 当該プロセス及び次工程プロセスを見直し後再検証する |
Ⓒ | 用途変更 | 別のビールへの変更 |
Ⓓ | 特別採用 | 顧客への相談後決定 |
8.4 データの分析
管理責任者は,QMSの適切性及び有効性を実証するために,及びQMSの継続的改善の可能性を評価するために,下記内容にて具体的なデータ分析の項目,内容,主管部署を規定し,改善活動につなげる。
項 目 | 分析データ | 分析方法 | 改善内容 | 主観部署 | |
顧客満足 | ・味,価格,納期 | 各項目の評価点(レーダーチャート等) | 予防処置 | 技術部 営業部 |
|
顧客不満足(クレーム等) | ・品質:味,その他(ビン割れ等) ・サービス:納期遅れ |
各項目別クレーム件数(棒グラフ等) | 是正処置 | 技術部 製造部 営業部 |
|
顧客要求事項との適合性 | 各種製品特性の製品能力の把握 | ・アルコール濃度,糖度の実績成分状況 | 標準偏差測的 (ヒストグラム等) |
予防処置 | 製造部 |
・上記の成分ハズレ率 | 不良率(月別グラフ) | 是正処置 | |||
プロセスの特性 | 製造プロセスの特性 | ・アルコール濃度と発酵温度との関係等 | 予防処置 | 製造部 | |
・特別採用件数 | 月別件数 | 予防処置 | |||
設計プロセスの特性(設計検証能力等) | ・設計変更件数 | 月別件数 | 予防処置 | 設計部 | |
供給者の評価 | 購入品の検証データ | ・麦粒度の評価 | 標準偏差測的 (ヒストグラム等) |
予防処置 | 購買部 |
供給者 能力評価 |
・価格,納期,品質 | 各項目の評価点(レーダーチャート等) | 予防処置 |
8.5 改善
8.5.1 継続的改善
- 品質管理責任者は右図のようなフローにて品質方針,品質目標,監査結果,データ分析,是正処置,予防処置及びMR(マネジメントレビュー)を通じてQMSの有効性を継続的に改善する。
- A:重大問題(MRから見直し)
- B:軽度の問題(製品実現の計画から見直し)
- A,Bのルート選択は品質情報会議及び監査にて実施する。