平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第4回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

1.5 ISO 14001 規定との両立性
ISO 9001:2000規格の特徴の1つであるISO 14001:1996規格との両立性について,特に類似性の高い条項について表1.5にまとめた。左欄のそれぞれの条項のタイトル(太字)はISO 9001:2000規格から,右欄の文章はISO 14001:1996規格から抜粋した,組織が品質と環境の2つのマネジメントシステムを構築しようとする場合には,少なくとも下記条項の要求事項は同一の文書で(文書を作成する場合)システム構築できるはずである。

表1.5 ISO9001:2000規格と類似性の高いISO14001:1996規格

ISO 9001:2000 ISO 14001:1996
4.2.1
一般
  • (1) 「4.4.4環境マネジメントシステム文書」は“環境マネジメントシステムの核となる要素及びそれらの相互作用を記述する”と要求している。
  • (2) 次の文書は,ISO9001:2000規格で要求されているものなので別々に作成する必要はなく,共通に使用できる。
    • 1) 文書管理の手順書
    • 2) 記録の手順書
    • 3) 内部監査の手順書
    • 4) 不適合管理の手順書
    • 5) 是正処置の手順書
    • 6) 予防処置の手順書
4.2.3
文書管理
  • (1) 「4.4.5文書管理」と表現がほとんど一致している(下線に異点)。
    “組織は,次のことを確実にするために,この規格が要求するすべての文書を管理する手順を確立し,維持しなければならない。
    • a) 文書の所在が分かること,
    • b) 文書が定期的にレビューされ,必要に応じて改訂され,かつ所定の責任者によって妥当性が承認されること,
    • c) 環境マネジメントシステムが効果的に機能するために不可欠な業務が行われているすべての場所で,関連文書の最新版が利用できること,
    • d) 廃止文書は,すべての発行部署及び使用部署から速やかに撤去されること,そうでなければ意図されない使用がないように保証すること,
    • e) 法律上及び/又は情報保存の目的で保管されるあらゆる廃止文責は適切に識別されること
      文書は,読みやすく,日付が(改訂の日付とともに)あって容易に識別でき,順序よく維持されて指定の期間保持されなければならない。種々のタイプの文書の作成及び改訂に関する手順と責任を確立し,推持しなければならない。」”
4.2.4
記録の管理
  • (1) 「4.5.3記録」と非常に類似性が高い。
    “組織は,環境記録の識別,維持及び廃棄のための手順を確立し,維持しなければならない。これらの記録は,訓練記録,並びに監査及び見直しの結果を含まなければならない。環境記録は,読みやすく,識別可能であり,かつ,関連した活動,製品又はサービスに対して追跡可能でなければならない。環境記録は,容易に検索でき,かつ,損傷,劣化又は紛失を防ぐような方法で,保管され,維持されなければならない。保管期限が定められ記録されなければならない。”
5.1
経営のコミットメント
  • (1) a) 顧客要求事項及び法令・規制要求事項を満たすことの重要性をその組織内に伝える。
    これは「4.2環境方針」のc)の“関連する環境の法規制及び組織が同意するその他の要求事項を遵守する約束を含む”に類似している。
  • (2) b) 品質方針を設定する。
    これは「4.2環境方針」の“最高経営層は,組織の環境方針を定め,その方針について……”に類似している。
  • (3) c) 品質目標が設定されていることを確実にする。
    これは「4.3.3目的及び目標」の“組織は,組織内の関連する各部門及び階層で,文書化された環境目的及び目標を設定し維持しなければならない”に類似している。
  • (4) d) マネジメントレビューを実施する。
    これは「4.6経営層による見直し」の“組織の最高経営層は,環境マネジメントシステムが継続する適切性,妥当性,かつ有効性を確実にするために,自ら定めた間隔で,環境マネジメントシステムを見直さなければならない”に類似している。
  • (5) e) 必要な資源を使用できることを確実にする。
    これは「4.4.1体制及び責任」の“経営層は,環境マネジメントシステムの実施及び管理に不可欠な資源を用意しなければならない”に類似している。
5.3
品質方針
  • (1) 「4.2環境方針」には,“その方針について次の事項を確実にしなければならない”と規定されており,以下類似性が高い。
    • “a) 組織の活動,製品又はサービスの,性質,規模及び環境影響に対して適切である。
    • b) 継続的改善及び汚染の予防に関する約束を含む,
    • c) 関連する環境の法規制,及び組織が同意するその他の要求事項を遵守する約束を含む,
    • d) 環境目的及び目標を設定し,見直す枠組みを与える,
    • e) 文書化され,実行され,維持され,かつ全従業員に周知される,
    • f) 一般の人が人手可能である。”
5.4
計画
  • (1)「4.3.3目的及び目標」における次の2点と類似性が高い。
    • “a)組織は,組織内の関連する各部門及び階層で,文書化された環境目的及び目標を設定し維持しなければならない。
    • b)目的及び目標は環境方針と整合させなければならない。”
5.4.2
品質マネジメントシステムの計画
  • (1)「4.3.4環境マネジメントプログラム」と類似性がある。
    “組織は,その目的及び目標を達成するためのプログラムを策定し,維持しなければならない.プログラムは次の項を含まなければならない。
    • a)組織の関連する各部門及び階層における,目的及び目標を達成するための責任の明示。
    • b)目的及び目標達成のための手段及び日程。
      プロジェクトが,新規開発及び新規若しくは変更された活動,製品又はサービスに関する場合には,環境マネジメントがそのようなプロジェクトにも確実に適用されるように,プログラムの該当部分を改訂しなければならない“
5.5.1
責任及び権限
  • (1)「4.4.1体制及び責任」と類似性がある。
    “効果的な環境マネジメントを実施するために,役割,責任及び権限を定め,文書化し,かつ伝達しなければならない。”
5.5.2
管理責任者
  • (1)「4.4.1体制及び責任」の一部に規定されている管理責任者と一致している。
    “組織の最高経営層は,特定の管理責任者(複数も可)を指名しなければならない,かつ,その責任者は,次に示す役割,責任及び権限を,他の責任にかかわりなく,与えられていなければならない。
    • a)この規格に従って,環境マネジメントシステムの要求事項が確立され,実施され,かつ維持されることを確実にすること,
    • b)見直しのため及び環境マネジメントシステムの改善の基礎として,最高経営層に環境マネジメントシステムの実績を報告すること”
5.5.3
内部コミュニケーション
  • (1)「4.4.3コミュニケーション」と類似性がある。
    “組織は,環境側面及び環境マネジメントシステムに関して次の手順を確立し,維持しなければならない。
    • a)組織の種々の階層及び部門間での内部コミュニケーション”
5.6
マネジメントレビュー
  • (1)「4.6 経営層による見直し」と非常に類似している。
    “組織の最高経営層は,環境マネジメントシステムが継続する適切性,妥当性,かつ有効性を確実にするために,自ら定めた間隔で,環境マネジメントシステムを見直さなければならない。経営層による見直しのプロセスでは,経営層がこの評価を実施できるように,必要な情報が確実に収集されなければならない。この見直しは,文書化されなければならない。
    経営層による見直しは,環境マネジメントシステム監査の結果,変化している周囲の状況,及び継続的改善への約束に照らして,方針,目的,及び環境マネジメントシステムのその他の要素の変更の必要性に言及しなければならない。”
6.2.2
力量,認識及び教育・訓練
  • (1)「4.4.2訓練,自覚及び能力」と高い類似性がある。
    “組織は,訓練のニーズを明確にしなければならない。組織は,環境に著しい影響を生じる可能性のある作業を行うすべての要員が,適切な訓練を受けていることを要求しなければならない。
    組織は,関連する各部門及び階層においてその従業員又は構成員に,次の事項を自覚させる手順を確立し,維持しなければならない。
    • a)環境方針及び手順並びに環境マネジメントシステムの要求事項に適合することの重要性,
    • b)作業活動による顕在又は潜在の著しい環境影響,及び各人の作業改善による環境上の利点,
    • c)環境方針及び手順との適合,並びに緊急事態への準備及び対応の要求事項を含む環境マネジメントシステムの要求事項との適合を達成するための役割及び責任,
    • d)規定された運用手順から逸脱した際に予想される結果。
      著しい環境影響の原因となりうる作業を行う要員は,適切な教育,訓練及び/又は経験に基づく能力をもたなければならない。”
7.6
監視機器及び測定機器の管理
  • (1)「4.5.1 監視及び測定」と類似性がある。
    “組織は,環境に著しい影響を及ぼす可能性がある運用及び活動のかぎ(鍵)となる特性を定常的に監視及び測定するために文書化した手順を確立し,維持しなければならない。これには,パフォーマンス,関連の運用管理並びに組織の環境目的及び目標との適合を追跡するための情報を記録することを含まなければならない。
    監視機器は,校(較)正され維持されなければならず,かつ,このプロセスの記録は,組織の手順に従って保持されなければならない。”
8.2.2
内部監査

  • (1)「4.5.4環境マネジメントシステム監査」と非常に類似している。
    “組織は,次のことを行うために,実施すべき定期的環境マネジメントシステム監査のプログラム(複数も可)及び手順を確立し,維持しなければならない。
    • a)環境マネジメントシステムが,
      • 1)この規格の要求事項を含めて,環境マネジメントのために計画された取決めに合致しているか,
      • 2)適切に実施され,維持されているか否かを決定する,
    • b)監査の結果に関する情報を経営層に提供する。
      組織の監査プログラムは,あらゆるスケジュールを含めて,当該活動か環境上の重要性,及び前回監査の結果に基づいていなければならない.包括的なものとするために,監査手順は,監査の範囲,頻度及び方法を,監査を実施し及び結果を報告するための責任及び要求事項とともに,含まなければならない。”
      しかし,次の2点が異なっている。
      • ①ISO 9001では内部監査の目的に「システムが効果的に実行・維持されているか否かを明確にする」が含まれるが,ISO 14001にはなく,「システムの有効性の判断」は最高経営層の役割であることが強調されていると解釈すべきである(ISO 14001の4.6項。
      • ②ISO 9001では「監査員は自らの仕事は監査しないこと」とされているが,ISO 14001の4.5.4項にはこの要求事項はない。
8.5.2
是正処置
  • (1)「4.5.2不適合並びに是正及び予防処置」と類似性がある。
    “組織は,不適合を取り扱い調査し,それによって生じるあらゆる影響を緩和する処置をとり,並びに是正及び予防処置に着手して完了する責任と権限を定める手順を確立し,維持しなければならない。
    顕在及び潜在する不適合の原因を除去するためにとられるあらゆる是正処置又は予防処置は,問題の大きさに対応し,かつ,生じた環境影響に釣り合わなければならない。
      組織は,是正及び予防処置に伴う文書化した手順のあらゆる変更を実施に移し,記録しなければならない。”
8.5.3
予防処置
  • (1)「4.5.2不適合並びに是正及び予防処置」と類似性がある。
    “組織は,不適合を取り扱い調査し,それによって生じるあらゆる影響を緩和する処置をとり,並びに是正及び予防処置に着手して完了する責任と権限を定める手順を確立し,維持しなければならない。
    顕在及び潜在する不適合の原因を除去するためにとられるあらゆる是正処置又は予防処置は,問題の大きさに対応し,かつ,生じた環境影響に釣り合わなければならない。
    組織は,是正及び予防処置に伴う文書化した手順のあらゆる変更を実施に移し,記録しなければならない。”