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平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第50回
付録4 モデルC社(折衷タイプ)
- (1) モデルC社の設定条件
- 英国の企業で,電気部品のアッセンブルを行っており,1990年にISO 9001の認証を受けている。従業員数は約800名で,主にアッセンブルに従事している女性の従業員が多くを占めている。
- (2) モデルC社の品質マニュアルの体裁,特長
- ① 総ページ数40ページ。
- ② 会社のロゴの入った専用の用紙に記述されている。
- ③ Issue, Revision, Date, Pageが各頁に記入されている。
- ④ Amendment record(改訂記録)が掲載されている。品質課長がサインしている。
- ⑤ Quality policy statement(品質方針声明)には社長以下6人の取締役がサインをしている。
- (3) モデルC社の品質マニュアル
条項4.1 経営者の責任
- 4.1.1 品質方針
- 1ページ全体に品質方針が述べられ,社長以下6人の取締役がサインをしている。ここで述べられている品質方針のポイントは以下の通りである。
- 1. ISO 9000の要求に応える責任は経営陣と全従業員にある。
- 2. 顧客の要求に合致させるための品質活動を,ZD活動と再発防止活動を通じて全社に展開する。
- 3. 手順と品質管理システムが制定され,品質課が他部門と協同でこの維持活動にあたる。
- 4. 社長以下取締役経営陣は,この品質方針の実行に絶大な努力を払う。
- 教育・訓練計画の1つとしてこの品質方針は全従業員に説明され,意識付けされる。この品質方針は各々の部門の業務手順書によって実行に移される。
4.1.2 組織
4.1.2.1 責任及び権限
- 社長以下,6人の取締役を含んだ全社の課長までの組織図(略)が掲載されている。製造課と品質課については,他ページに独立に係長までの組織が掲載されている。記述はすべて職制名でなされており,個人名はいっさい使用されていない。
4.1.2.2 検証の手段及び人員
- 付録に,製品の原料から完成に至るまでの流れをフローチャート(略)で示し,工程のどこで検査,製造,試験が行われるかを説明している。
- ポイントは次の通りである。
- 1. すべての課長はそれぞれの所属員の教育・訓陳に全責任をもっている。
- 2. 設計の検証の責任は設計課長にある。設計課長は検証にあたって十分に訓練された,有能な人材を当てなければならない。
- 3. 設計審査は技術担当取締役の責任である。
- 4. 品質システムの監査は,品質課長の責任である。
- 5. 品質課長と技術担当取締役は,これらの審査と監査に十分訓陳された人材を当てなければならない。
4.1.2.3 管理責任者
- 品質課長が,管理責任者として明確に指名されている。
- 1. 品質課長が管理責任者である。
- 品質課長は,ISO 9001 (BS 5750 Part 1)の要求事項の実行に責任と権限をもつ。
- 2. 品質課長の責任は,要求事項の明確化と製品品質の確保ならびに品質改善活動に及ぶ。会社の評価を維持するため,契約でうたわれた要求事項には,すべて適合させなければならない。
- 3. 製品出荷の可否を決定する権限は品質課長にあり,これは特に大きな責任である。
4.1.3 経営者による見直し
- この条項のポイントは次の通りである。
- 1. 品質課長は,品質システムの効率的な運用のため,最低年1回は品質見直しの会議を主催する。
- 2. 品質システムに関係するすべての部門は,この会議に出席しなければならない。
- 3. 品質見直し会議の議事の詳細は,品質手順書による(9.品質手順書を参照)。
- 4. この経営者による見直しのすべての記録は,保管,維持される。
条項4.2 品質システム
- 社長に代わって品質課長が品質マニュアルを発行することを定めている。ポイントは次の通りである。
- 1. 会社は,製品がISO 9001の要求品質に合致するように,品質システムを構築している。品質マニュアルは,品質課長が起案,制定,発行する。
- 2. この品質マニュアルは全部門に配布され,部門同士の仕事の関わり合いは文書で規定されている。
- 3. 全部門のそれぞれの長は,部門手順書の制定と実行を行う責任を有している。 これらの手順書は品質課長が確認の上,原紙を保管する。
- 4. 品質課は,品質の確保された製品を生産するために品質計画書を作成,発行する。
- 5. 品質マニュアル,部門手順書,品質計画書は,管理書類として常に最新版に改訂されている。これらの管理書類のページの差し替えは,保持者の責任である。
- 6. すべての管理書類は,固有の認識番号をもっている。
- 7. 作業指示書は,すべての製造現場で活用されるようになっていなければならない。 作業指示書は,その記述の内容に責任ある課長によって認証される。