平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第4回

1.5.2 一貫性,システム的

品質マニュアルは,その最初のページ(表紙)から最後のページまでが一貫しており,システム的に編集されていなければならない。

  • (1) 一貫性とは
    • ここでいう一貫性には,
      • ① 体裁上からの一貫性と,
      • ② 内容上からの一貫性,

      の2つの意味がある。品質マニュアルを利用する人々が,一読して頭の整理ができ,意味が理解できるよう編集されていなければならない。
      1) 体裁上からの一貫性
      注意事項としては次のようなことが挙げられる。

      • ① 品質マニュアルの構成要素ごとに整理番号をつける。たとえば次のようにする。
      • 0.表紙
      • 1.目次
      • 2.品質マニュアルの配布先と管理について
      • 3.一般(会社の紹介または背景などについて)
      • 4. ISO9000シリーズ規格の品質システム構成事項
      • 4.1 経営者の責任
      • 4.2 品質システム
      • 4.3 契約内容の見直し
      • ② 使用する用紙は(A4判が普通である)品質マニュアル全体を通して共通とし,本書第 3章で述べる要点をすべて盛り込んだものでなければならない。
        発行日(Issue date),版数(Issue No.)など。
      • ③ 品質マニュアルで引用する他の文書類(たとえば部門手順書,指示書,図面など)との関係を明確にしておくとともに,これら引用文書類の一覧を付録として載せておくと便利である。なお,これら社内文書類の呼称番号についても社内の文書システムとして確立しておくことが望ましい。番号が一貫したシステム的な呼称を持つことが,品質マニュアルの読者に一貫性のイメージを与えるからである。
    • 2) 内容上からの一貫性
      品質マニュアルがISO9000シリーズ規格にそって編集されているかぎり,最低限の一貫性は確保することができる。しかし先にも述べたように条項のなかには全部門に関係するものと特定部門のみに関係するものがある。お互いに縦と横の関係があり,それぞれが補完的な影響を与え合っているので,互いに矛盾しないように気をつけなければならない。表1.3に全部門共通条項とその他の条項の関係を示した。なお表中の条項番号はISO9001の場合であって,ISO9002, ISO9003の場合は同じ内容であっても番号が異なるので注意いただきたい。各規格の相互関係は前掲の表1.1の通りである。

    (2) システム的とは
    品質マニュアル作成にあたりシステム的に検討を要するのが企業内で使用されている文書類の相互位置関係である。企業内には,品質マニュアルを初めとする数多くの標準書,手順書, 指示書類が存在する。製品あるいはサービスの品質を確立し,維持していくという観点から, 設計図面(組立図,部品図)および各種データ類も文書システムのなかに位置づけていかなければならない。
    そういう意味で品質に関する文書類のストラクチャーを,品質マニュアルを頂点として,図 1.1のように位置づけしておくと,品質マニュアルの編集時に,標準書類と呼ばれる各種文書類の相互関係がはっきりして理解しやすくなる。品質マニュアルの記述にあたっても,統一した考え方で各文書類の位置づけを述べることができるようになり,読者から見て,一貫したシステマティックな文書構造が目前に想像できることになる。
    注〕品質マニュアル:社内文書ストラクチャーで一番上位に位置する品質文書。
    部門マニュアル:品質マニュアルの下位に位置し,会社組織上の職務単位ごとに(会社の規模によって部であったり,課であったりする)存在する文書である。その部門の職務記述書である。
    標準書:ある個別のテーマについて,その業務の進め方を順序を追って記述したもの。また,業務を進めるにあたっての判断基準を示したものである。基準書, 手順書,指示書などもここに分類される。
    図面,データ,ファイル類:一番下位に位置する文書類で,業務を進めるにあたって直接的に必要となる文書類である。これらがupdateに改訂されないと具体的な弊害が即,起きることになる。