平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第19回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

3.3.2 編集のポイント
以下,条項4.1から順次,編集のポイントとなるべき事項を簡単に解説しておく。

  • 条項4.1“経営者の責任”
    • 4.1.1“品質方針”
      • 経営者が自分の言葉で起草する。
      • 品質に関する会社の方針,目標,責務をできるだけ具体的に記述する。
      • 社長や事業部長などの組織体のトップがサインする。
    • 4.1.2 “組織”
    • 組織図を簡略化して掲載し,どのような単位で企業が構成されているかが理解きるようにする。
    • 掲載する組織は部単位まででよい(課編成の場合は課でよい)。それ以下はここには掲載しない。
      • 4.1.2.1“責任及び権限”
      • 社長をはじめ組織図に記載した部門長(または課長)の主たる職務内容を記述する。主たる責任と権限について記述し,特に関係部門との相互関係に曖昧さを残さない。
      • 4.1.2.2“経営資源”
      • 設計審査,製造段階における検査(受入検査,工程内検査,最終検査,出荷検査),内部品質監査,工程監査(外注会社監査)を含め,品質への管理責任を果たす訓練された人員を割り当てる。
      • 4.1.2.3“管理責任者”
      • 管理責任者について明確に記述する。
      • 4.1.3 “マネジメント・レビュー(経営者による見直し)”
      • 品質システム見直しの方法,間隔,記録の保管について記述する。
  • 条項 4.2 “品質システム”
    • 4.2.1“一般”
    • 品質マニュアルを頂点とする社内標準書類について,その発行部門と内容について記述する。
    • 4.2.2 “品質システムの手順”
    • ここには本章3.2.2節“既存標準書類の整理”で述べた,標準書を見直したものを整理して記述する。
    • 4.2.3 “品質計画”
    • 品質計画書についても述べる。
  • 条項4.3 “契約内容の確認”
    • 4.3.1“一般”
    • 顧客と契約を結ぶ部門,その手順ならびに関係部門との確認の方法,そのルートについて記述する。
    • 4.3.2 “内容の確認”
    • 仕様,数量,納期,価格の確認の仕方について記述する。
    • 4.3.3 “契約内容の修正”
    • 契約の改訂の方法を明確にする。
    • 4.3.4 “記録”
    • 契約内容の確認記録について記述する。
  • 条項4.4 “設計管理”
    • 4.4.1“一般”
    • 設計業務の手順を製品企画から図面制定までのステップごとに主管部門,関係部門などがどの部門かを記述する。
    • 4.4.2 “設計及び開発の計画”
    • 設計計画の制定について記述する。
    • 設計テーマに適格な人の割当てについても記述する。
    • 4.4.3 “組織上及び技術上のインタフェース”
    • 特に技術,製造,品質保証との相互関係について記述する。
    • 4.4.4 “設計へのインプット”
    • 設計にインプットする事項を明確に記述する。
    • 4.4.5 “設計からのアウトプット”
    • 設計からアウトプットする事項を明確に記述する。
    • 4.4.6 “デザイン・レビュー(設計審査)”
    • 正式の文書化された設計審査について記述する。
    • 4.4.7 “設計検証”
    • 設計審査に加えて試作品評価,計算確認などの設計アウトプットを検証する手段を記述する。
    • 4.4.8 “設計の妥当性確認”
    • 顧客の要求事項に合致しているかの妥当性の確認について記述する。
    • 4.4.9 “設計変更”
    • 設計変更する方法を明確に記述する。
  • 条項4.5 “文書及びデータの管理”
    • 4.5.1“一般”
    • 規格の要求事項に関連するすべての文書およびデータの管理について記述する。
    • 4.5.2 “文書及びデータの承認及び発行”
    • 文書類の作成,承認,発行,廃止の手続きについて記述する。会社の文書体系についてもここで説明,記述する。
    • 4.5.3 “文書及びデータの変更”
    • 文書類変更時の作成,承認,発行,改訂の手続きについて記述する。
  • 条項4.6 “購買”
    • 4.6.1“一般”
    • 購買品の品質確保に関しての一般事項を記述する。
    • 4.6.2 “下請負契約者の評価”
    • 下請業者の能力を評価し,その記録の保管について記述する。
    • 4.6.3 “購買データ”
    • 購買時に必要とする承認図,技術標準類,検査規格,限度見本について記述する。
    • 4.6.4 “購買品の検証”
    • 4.6.4.1“下請負契約者先での供給者による検証”
    • 購買品の検証についての検証方式および製品の出荷方式について記述する。
    • 4.6.4.2 “下請負契約された製品の顧客による検証”
    • 顧客による検証について記述する。
  • 条項4.7 “顧客支給品の管理”
  • 顧客から支給される物品の確認,保管,維持について記述する。
  • 条項4.8 “製品の識別及びトレーサビリティ”
  • 製品のすべての段階における現品の識別および完成した現品の識別について記述する。
  • 条項4.9 “工程管理”
  • 作業指示書,設備仕様書,品質計画書,出来映え基準,設備メンテナンスなどについて記述する。
  • 特殊工程の存在の有無と,存在する場合にはその工程管理について記述する。
  • 条項4.10 “検査・試験”
    • 4.10.1“一般”
    • 文書化した検査および試験について記述する。
    • 4.10.2 “購入検査・試験”
    • 4.10.2.1,4.10.2.2,4.10.2.3
    • 受入物品の検査および試験について記述する。
    • 4.10.3 “工程内の検査・試験”
    • 工程内での最終検査,試験について記述する。
    • 4.10.4 “最終検査・試験”
    • 工程内の最終検査,試験について記述する。
    • 4.10.5 “検査・試験の記録”
    • 受入検査,工程内検査,最終検査の記録について記述する。
  • 条項4.11“検査,測定及び試験装置の管理”
    • 4.11.1“一般”
    • 供給者の用いる検査,測定および試験の装置(ソフトウェアを含む)の管理,校正,維持について記述する。
    • 4.11.2 “管理手順”
    • 計測器類の購入,検収,登録,廃却および台帳の管理,トレーサビリティ,校正,点検,取扱い,試験用ソフトウェアなどについて記述する。
  • 条項4.12 “検査・試験の状態”
  • 物品の良・不良の識別について,製造の全段階において,どのように行うかを記述する。検査責任者を明確にしておく。
  • 条項4.13 “不適合品の管理”
    • 4.13.1“一般”
    • 不適合品が不注意に使用されないことについて記述する。
    • 4.13.2 “不適合品の内容確認及び処置”
    • 不適合品の処置と再検査,記録について記述する。
  • 条項4.14 “是正処置及び予防処置”
    • 4.14.1“一般”
    • 供給者の是正および予防処置の実施と文書化した手順について記述する。
    • 4.14.2 “是正処置”
    • 再発防止,潜在的原因の検出,報告書の分析,記録などについて記述する。
    • 4.14.3 “予防処置”
    • 予防処置の手順について記述する。社内に業務改善提案制度があれば,それについても記述する。
  • 条項4.15 “取扱い,保管,包装,保存及び引渡し”
    • 4.15.1“一般”
    • 製品,部品の取扱い,保管,包装,保存,引渡しに関する基準書について記述する。
    • 4.15.2“取扱い”
    • 取扱いによる損傷,劣化の防止について記述する。
    • 4.15.3“保管”
    • 保管の方法,保管中のチェック,搬入・搬出管理について記述する。
    • 4.15.4“包装”
    • 包装,表示の方法について記述する。
    • 4.15.5“保存”
    • 保存と隔離について記述する。
    • 4.15.6“引渡し”
    • 顧客引渡しまでの品質保護について記述する。
  • 条項4.16“品質記録の管理”
  • 品質記録の識別,収集,見出し付け,ファイリング,保管,維持および廃棄について記述する。品質記録の保管期間を明確にしておく。
  • 条項4.17“内部品質監査”
  • 包括的内部品質監査の進め方について,資格者,実施回数,フォローアップ,是正処置について記述する。
  • 条項4.18
  • 教育・訓練計画,資格制度などについて記述する。
  • 条項4.19“付帯サービス”
  • 付帯サービスとして具体的に実施している事項を記述する。
  • 条項4.20“統計的手法”
    • 4.20.1“必要性の明確化”
    • 社内で活用されている統計的手法の必要性を明確にする。QCサークル活動などについても記述し,4.14項の“是正処置および予防処置”とともに,製造現場や事務職場で行われているボトムアップ活動について記述する。
    • 〔例〕QCサークル活動の理念,そこで活用される統計的手法,たとえばパレート図,ヒストグラム,管理図,層別,特性要因図,散布図,グラフなど。
    • 4.20.2“手順”
    • 実施と管理のための文書化した手順について記述する。

以上,編集ポイントについて述べてきたが,これらに加えて,表紙,配布先,改訂歴,会社概要,対象範囲,付録についても,そのポイントを簡単に説明しておく。

  • 1)表紙:タイトル(品質保証マニュアル),会社名,事業所名,管理番号,発行日,版数,発行者,発行先,コピー番号,管理/非管理区分(管理コピーとは改廃管理をしていくコピー,非管理コピーとは配布後の管理をしないコピー)などを記載する。用紙はA4判を推奨する。
  • 2)目次:項目とページNo.を記載する。
  • 3)配布先:内・外部配布先,管理コピーの保持部門を記載する。
  • 4)改訂歴:品質保証マニュアルの改訂の手順と改訂歴を記載する。
  • 5)会社概要:会社概要の記述。また品質保証マニュアルが対象としている製品名,工程名を記す。
  • 6)付録:このマニュアル内に引用された標準書一覧を付録として記載する。