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平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第20回
このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。
第4章 標準的品質マニュアル
本章では「標準的品質マニュアル」を掲載する。ここで“標準”とは,共通的な仕様とでもいうべき形式を主体にしたものを意味している。したがって,各ページの中身の記述については第3章で述べた「品質マニュアルの編集」の手順にそって,各企業が魂を入れていかなければならない。「標準的品質マニュアル」の☆印は,企業が自分たちの言葉でそれぞれの記述をしてもらいたい箇所である。☆印の記述量の多寡については,付録の「品質マニュアルのモデル例」を参考に,それぞれの企業の実態に合ったレベルにすればよい。またフォーマット中,墨印刷した部分が筆者の考える標準例であり,カラー表示した部分は,それに対する筆者のコメントである。
「標準的品質マニュアル」の構成は次の通りである。
- 1.0 一般(1.1 表紙/1.2 目次/1.3 配布先)
- 2.0 改訂歴
- 3.0 会社概要,対象範囲
- 4.0 品質システム構成事項
1.0項から3.0項までに総則的な項目,目次,配布先,改訂歴および会社紹介,そしてこの品質マニュアルが対象とする組織体,製品について記述する。4.0項に,この品質マニュアルの中枢ともいうべき品質システム要求事項を記述する。こうしておくと,この品質マニュアルの項目番号とISO 9000シリーズ規格の条項番号とが一致して理解しやすくなる。
この「標準的品質マニュアル」は,ISO9001規格の条項に準じて編集してあるが,もちろんISO 9000規格の8.4.1条項でいうところのTailoring(修整)“しかし,ある場面には,選んだ国際規格の要求する品質システムの要素又はその下位要素の幾つかを削除し,他の場合には追加することがある。”は各企業でぜひ実践していただきたいことである。この「標準的品質マニュアル」を皮袋として,各企業でそれぞれ芳醇な酒を醸造して,中に注いでいただきたい。
KQ-001
品質マニュアル
1.1表紙
管理/非管理:☆どちらかを○で囲む
コピーNo.☆
発 行 先:☆
発 行 者:☆
社 名☆
事業所(部)名☆
承認者(発行者)
確認者
作成者
品質マニュアル
- 1.2 目次
- 1.0 一般
- 1.1 表紙
- 1.2 目次
- 1.3 配布先
- 2.0 改訂歴
- 3.0 会社概要,対象範囲
- 4.0 品質システム構成事項
- 4.1 経営者の責任
- 4.1.1 品質方針
- 4.1.2 組織
- 4.1.2.1 責任及び権限
- 4.1.2.2 経営資源
- 4.1.2.3 管理責任者
- 4.1.3 経営者による見直し
- 4.2 品質システム
- 4.2.1 一般
- 4.2.2 品質システムの手順
- 4.2.3 品質計画
- 4.3 契約内容の確認
- 4.3.1 一般
- 4.3.2 内容の確認
- 4.3.3 契約内容の修正
- 4.3.4 記録
- 4.4 設計管理
- 4.4.1 一般
- 4.4.2 設計及び開発の計画
- 4.4.3 組織上及び技術上のインタフェース
- 4.4.4 設計へのインプット
- 4.4.5 設計からのアウトプット
- 4.4.6 設計審査
- 4.4.7 設計検証
- 4.4.8 設計の妥当性確認
- 4.4.9 設計変更
- 4.5 文書及びデータの管理
- 4.5.1 一般
- 4.5.2 文書及びデータの承認及び発行
- 4.5.3 文書及びデータの変更
- 4.6 購買
- 4.6.1 一般
- 4.6.2 下請負契約者の評価
- 4.6.3 購買データ
- 4.6.4 購買品の検証
- 4.6.4.1 下請負契約者先での供給者による検証
- 4.6.4.2 下請負契約された製品の顧客による検証
- 4.7 顧客支給品の管理
- 4.8 製品の識別及びトレーサビリティ
- 4.9 工程管理
- 4.10 検査・試験
- 4.10.1一般
- 4.10.2 購入検査・試験
- 4.10.2.1.
- 4.10.2.2
- 4.10.2.3
- 4.10.3 工程内の検査・試験
- 4.10.4 最終検査・試験
- 4.10.5 検査・試験の記録
- 4.11 検査,測定及び試験装置の管理
- 4.11.1 一般
- 4.11.2 管理手順
- 4.12 検査・試験の状態
- 4.13 不適合品の管理
- 4.13.1 一般
- 4.13.2 不適合品の内容確認及び処置
- 4.14 是正処置及び予防処置
- 4.14.1 一般
- 4.14.2 是正処置
- 4.14.3 予防処置
- 4.15 取扱い,保管,包装,保存及び引渡し
- 4.15.1一般
- 4.15.2 取扱い
- 4.15.3 保管
- 4.15.4 包装
- 4.15.5 保存
- 4.15.6 引渡し
- 4.16 品質記録の管理
- 4.17 内部品質監査
- 4.18 教育・訓練
- 4.19 付帯サービス
- 4.20 統計的手法
- 4.20.1 必要性の明確化
- 4.20.2 手順
- 5.0 付録
品質マニュアル
1.3 配布先
☆ここでは品質マニュアルの配布先についての一般的な考え方,配布先を記述する。
会社内部へ配布する品質マニュアルはすべて管理コピー★とする。
会社外部への配布については品質保証部長の認可した者に限る。この場合,表紙の非管理★の表示を明確にし,すべてのページに「非管理」の印を押す。
注)管理コピーとは,配布後,品質マニュアルの改訂ごとに差し替えするコピーのことをいい,改訂があっても差し替えの必要がないコピーを非管理という。
☆管理コピーの所有者(部門)の一覧を記載する。
1 取締役事業部長
2 企画室長
3 総務部長
4 人事部長
5 開発部長
6 生産管理部長
7 購買部長
8 設計部長
9 技術部長
10 品質保証部長
11 製造工場長
12 第1製造部長
13 第2製造部長
14 第3製造部長
☆関係標準書名と登録番号を記載する。
品質マニュアル標準 KQM101
品質マニュアル
2.0 改訂歴
☆品質マニュアルの改訂手順を概述する。
- 改訂にあたっては,追番をつけ,改訂暦表にその概要を記述する。
- 改訂部分は品質保証部によって管理コピー保有者全員に配布される。
- ① 改訂コピー受領者は,差し替え後,受領サインをして,旧ページとともに品質保証部へ返却する。
- ② 非管理コピー配布先には改訂手続きは実施しない。
- 品質マニュアル改訂の要求は,品質マニュアル保有者全員の権利であり,「マネジメント・レビュー(経営者による見直し)」会議を主として,他の場合でも「品質マニュアル見直し要求書」を用いて品質保証部長に要求することができる。
- 品質マニュアルの正式な見直しは「4.17 内部品質監査」の後,最低年に1回は実施される。
☆改訂歴表を記載する。
Rev.
改訂年月日
ページNO.
改定内容
担当
☆関係標準と登録番号を記載する。
品質マニュアル標準 KQM101
品質マニュアル
3.0 会社概要,対象範囲
☆会社の歴史,現況,その他バックグラウンドについての概要を記述する。
Ⅹ社は,昭和21年に現在のA社のB製品工場として分離独立した。
B製品の生産を続けるかたわらC製品,D製品を独立開発した結果,その技術の独創性のゆえに市場で飛躍的な発展を遂げ,現在では国内で10事業所,海外に2工場,国内外に30営業拠点を持つまでに至った。
当社の理念は次の通りである。
- 社会に貢献する。
- 社員を大切にする。
- 独創性を伸ばす。
☆この品質マニュアルがカバーする対象組織,対象製品を記述する。
この品質マニュアルは,Ⅹ社B事業部が製造するB製品・C製品の設計からサービスまでの品質保証活動に適用する。
〔対象組織〕 X社B事業部
住所 ・・・・・・
〔対象製品〕 B製品,C製品
品質マニュアル
4.0 品質システム構成事項
4.1 経営者の責任
4.1.1 品質方針
☆ 経営における品質に関する会社方針,目標,責務をできるだけ具体的に記述する。
B事業部はⅩ社の「理念」に基づき,事業部長が品質方針を制定している。この品質方針は,全従業員に徹底するために各部門の部屋に掲示されている。また『社員ノート』にも「理念」とともに記載されており,従業員全員がいろいろな機会に利用できるようになっている。
B事業部品質方針
- 顧客第一優先の徹底
すべての品質は顧客のためにあり常に顧客の品質ニーズに適合する活動を進める。 - 全従業員の品質保証活動への参加
品質は工程で作り込まれる。全従業員が自分自身の持ち場の品質を保証する。 - 最新技術の開発とその応用
当社の独創性尊重の気風を重んじ,常に新しいものへチャレンジしていく。 - B事業部の品質システムはISO 9001(JISZ 9901)に準拠している。
☆組織体のトップがサインする。
社長名
サイン
品質マニュアル
4.12 組織
☆ 部門単位(部門制をとっていない会社では課単位)の組織図を掲載し,会社の指示命令系統を簡潔に示す。
社長
B事業部長
B事業企画室長
B事業部人事部長
B事業部開発部長
B事業部生産管理部長
B事業部購買部長
B事業部設計部長
B事業部技術部長
B事業部品質保証部長
B製造工場長
第1製造部長
第2製造部長
第3製造部長
品質マニュアル
4.1.2 組織
4.1.2.1 責任及び権限
☆組織図に記載された社長以下各部門長の責任・権限を記述する。
- B事業部における職位の責任は次の通りである。
- 事業部長:会社の経営指針,方針に基づき事業部方針を制定し,その実行のすべてに責任を負う。所属する部長を管理・監督することにより目標の達成をはかるとともに人材の育成をはかる。
- 工場長:事業部長方針に基づき工場長方針を定め,所属する部長の管理・監督を通じて工場長方針の達成をはかる。以下の項目に対して責任を負う。
- ① 工場の安全衛生。
- ② 製造で担当している分野に関する製品品質。
- ③ 部下の人材育成。
- 部 長:事業部長方針に基づき部長方針を定め,所属する課長の管理・監督を通じて部門方針の達成をはかる。以下の項目に対して責任を負う。
- ① 部門の安全衛生。
- ② 部門で担当している分野に関する製品品質,サービス品質。
- ③ 部下の人材育成。
- ☆品質に関する会社の分課分掌の一覧を掲載する。
- 品質に関する各部門の業務内容と責任権限は次の通りである。
- 〔企画室〕
- ① 事業展開の企画立案と推進フォロー。
- 〔総務部〕
- ① 福利厚生,安全衛生業務。
- ② 建物営繕,電気などエネルギー管理,施設工事,公害防止業務。
- ③ 業務改善活動事務局。
- 〔人事部〕
- ① 人材採用業務。
- ② 組織変更,人事考課業務。
- ③ 教育訓練業務。
- 〔開発部〕
- ① 商品企画,市場調査業務。
- ② 商品開発業務。
- 〔生産管理部〕
- ① 生産計画の立案とその推進フォロー
- ② 国内外注会社管理業務。
- ③ 海外生産計画の立案とその推進フォロー。
- ④ 倉庫業務。
- 〔購買部〕
- ① 購入先の調査,選定,管理業務。
- ② 購買に関する業務。
- 〔設計部〕
- ① 設計に関する業務。
- ② 設計試作品の製作,評価業務。
- ③ 図面の発行,改訂,管理業務。
- 〔技術部〕
- ① 技術標準類の制定・配布・改訂管理業務。
- ② 新製品大日程計画の制定,推進,フォロー。
- ③ 材料,設備,加工技術の調査,改善業務。
- ④ 外注会社技術指導業務。
- ⑤ 技術試作品の製作,評価業務。
- ⑥ 不良解析,調査業務。
- 〔品質保証部〕
- ① 品質システムの確立,維持改善業務(品質マニュアルの維持管理)。
- ② 市場クレーム対応,調査改善業務。
- ③ 検査標準書の制定・配布・改訂管理業務。
- ④ 受入検査,出荷検査業務。
- ⑤ 安全,環境などの法規制調査,対応実施業務。
- ⑥ 計測器の校正管理業務。
- ⑦ 長期信頼性など製品品質保証業務。
- 〔製造部〕
- ① 製造作業指示書の作成・制定・改訂管理業務。
- ② 工程管理,4M変動管理業務。
- ③ 工程内検査業務。
- ④ 設備・装置のメンテナンス業務。
4.1.2.2 経営資源
☆設計審査,検査,試験,内部品質監査および他品質システムの維持に関する経営資源について記述する。
1. 以下のそれぞれの活動に訓練された人員を割り当て,顧客の要求仕様に合致した製品を設計し,製造する。
- 〔設計審査〕
- 設計部が主管し,関係部門の参加を得て,新製品企画段階,設計段階で行う。また技術部門が主管し,関係部門の参加を得て試作段階,初回量産段階で行う。
- 〔検査〕
- 品質保証部において材料,部品の購入時に受入検査を,また製品出荷時に出荷検査を行う。製造部においては工程内検査を行う。
- 〔試験〕
- 設計部,技術部において新しい材料,技術,設備を使用する場合に行う。
- 〔内部品質監査〕
- 品質マニュアルに規定されたシステムが確実に実行されているかどうかを品質保証部が主管して内部品質監査を行う。
- 〔外注品質監査〕
- 要求品質が確保されているかを確認するために技術部,品質保証部が行う。
4.1.2.3 管理責任者
☆管理責任者を明確に記述する。
1. 品質システムの管理責任者は品質保証部長とする。
2. 管理責任者は次の事項に対して責任を有する。
- ① 製品品質の合格・不合格の最終決定
- ② 市場でクレームが発生した場合の対応,処置,恒久対策。
- ③ 経営者による品質システムの見直し。
- ④ 審査登録機関との折衝。