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平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第21回
このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。
4.1.3 経営者による見直し
☆品質システムの見直しの方法,見直しの間隔,記録の保管について記述する。
- 品質システムの見直しの方法は次の通りである。
- ① この品質システムの維持のため,各部長はおのおのが責任を負う部署の品質システムの見直しを毎月の部門長会議に議事として挙げることができる。
- ② 年に2回実施される内部品質監査の結果を品質保証部がまとめ,品質システムの見直しを実施する。品質保証部長は,この見直し会議の議長として会議の開催,運営を行う。
- 品質システム見直しの間隔
品質システム見直しの間隔は年に2回とする。 - 記録の保管
品質システム見直しの記録の保管は品質保証部が行う。
記録の保管期間は5年とする。
☆関係標準名と登録番号を記載する。
組織標準 KHR 101
分課分掌標準 KHR 102
設計審査標準 KDR 105
品質システム監査標準 KQM 102
品質システム見直し標準 KQM 103
部品受入検査標準 KQM 107
工程内検査標準 KQM 108
製品出荷検査標準 KQM 109
外注品質監査標準 KQM 111
内部品質監査標準 KQM 123
品質マニュアル
4.2 品質システム
4.2.1 一般
☆品質システムを頂点とする社内文書体系について記述する。
- B事業部はISO9001(JISZ9901)に基づき,その規定要求事項を満足する品質システムを構築し,企業活動における最も重要な品質保証を確実に行う。
- B事業部の品質システムは文書化されており,この品質マニュアルを最上位の文書として,以下部門マニュアル,標準害(手順書,指示書),各種図面,データ,ファイル類を主管部門が制定し,管理・運営する。
これら文書類を一括して社内標準書と呼び,その主なものはこの品質マニュアルの巻末に付録として一覧にしてある。 - B事業部の品質マニュアルはISO 10013“品質マニュアル作成の指針”に準じて作成されている。
- 社内文書体系は次の通りである。
第1次文書
第2次文書
第3次文書
第4次文書
部門
登録記号
品質マニュアル
部門マニュアル
企画室 KPN
総務部 KAS
人事部 KHR
開発部 KDP
生産管理部 KPC
購買部 KBJ
設計部 KDR
技術部 KTM
品質保証部 KQM
第1次製造部 KPT
……
標準書(手順書,指示書)
図面
データ
通知
諸帳票
ファイルなど
120
品質マニュアル
4.2.2 品質システムの手順
☆品質マニュアルおよび他の社内標準書類作成の手順と効果的な実行について記述する。
- 品質マニュアルは品質保証部長が起案し,事業部長の承認後,制定・配布される。
以降の品質マニュアルの改訂管理は品質保証部長が行う。 - その他の標準書類は,付録に示された主管部門長が関係部門長と協議・調整の上,制定,管理する。
- 品質システムの体系的な見直しは,前項4.1.3に基づき,定例的に実施される。
4.2.3 品質計画
☆新製品,新プロジェクトについて,品質を満足させる方法を明確にし,それを文書化することを記述する。
- 品質保証部は企画・設計~出荷までの品質計画書を作成,制定する。
- 品質保証部は,品質計画書の作成について主要新製品,新プロジェクトごとにその作成の有無を決定し,作成の手順を品質計画書標準(KQM126)に定める。
- 文書間に矛盾が生じた場合は,上位文書を優先するものとし,関係部門長のあいだで調整する。
☆品質記録の保管年数を記述する。
品質記録の保管は最低5年とし,品質記録それぞれの性格(法的規制,顧客要求など)から主管部門によって定められた標準により個別に制定し管理する。
☆関係標準書名と登録番号を記載する。
- 品質記録管理標準 KQM 105
- 品質標準書制定標準 KQM 106
- 品質計画書標準 KQM 126
品質マニュアル
4.3 契約内容の確認
4.3.1 一般
☆契約内容の確認について文書化した手順に言及することがあれば記述する。
4.3.2 内容の確認
☆顧客と契約を結ぶ部門,その手順並びに関係部門との確認の仕方・ルートについて記述する。
- B事業部は「顧客満足度の向上は顧客の真のニーズの把握に始まる」ことを肝に銘じ,口頭での受注を含めて文書化し,契約内容の確認を確実に行う。
- 顧客との契約は本社営業部(以下営業部という)が,事業部関係部門(設計部,技術部,生産管理部)と調整,検討の上行う。
- 契約の中身に問題がある場合は,営業部と事業部関係部門とが一体となって顧客と調整する。
☆製品仕様,数量,納期,価格の確認の仕方について記述する。
- 製品仕様は営業部と事業部関係部門が検討,調整の上,設計部門が主管部門となって決定する。
- 数量,納期については営業部と生産管理部が検討,調整の上,生産管理部が主管部門となって決定する。
- 価格については営業部と事業部関係部門とが合議の上,事業部長の承認を受けて決定する。
4.3.3 契約内容の修正
☆4.3.2項で確認した項目が変更となる場合には,必ず主管部門が制定時と同様のルートで変更手続きをとる。
4.3.4 記録
☆記録の保管について記述する。
- 契約の実施に伴う記録は生産管理部が5年間保管する。
契約上または法令上,定めがある場合にはその定めに従う。 - 対象となる記録は以下の通りである。
- 契約書。
- 注文書。
- 仕様検討会議録。
- 仕様制定書。
☆関係標準名と登録番号を記載する。
- 契約管理標準 KPC 101
- 注文書管理標準 KPC 102
- 使用制定標準 KDR 101
品質マニュアル
4.4 設計管理
4.4.1 一般
☆設計業務の手順を,製品企画から図面制定に至るまでのステップごとに主管部門,関係部門がどの部門かを記述する。
設計業務の業務ステップ,主管部門,関係部門,主管部門の役割は次の通りである。
業務ステップ
1.製品企画書作成
主管部門
1.設計部
関係部門
1.企画室
開発部
生産管理部
技術部
品質保証部
営業部
主管部門の役割
1.企画室,開発部との検討と市場調査から製品企画案を作成し,生産管理部,技術部,品質保証部,営業部を加えて製品企画書を作成する
業務ステップ
2.製品仕様書作成
主管部門
2.設計部
関係部門
2.営業部
生産管理部
技術部
品質保証部
主管部門の役割
2.顧客との契約または製品企画書に基づき製品仕様書を作成する
業務ステップ
3.製品試作設計
主管部門
3.設計部
関係部門
3.技術部
品質保証部
主管部門の役割
3.仕様書に基づき詳細仕様を検討し,試作図面を設計する
業務ステップ
4.試作および評価
主管部署
4.設計部
関係部門
4.技術部
品質保証部
主観部門の役割
4.試作図面により試作品を製作し,その性能の評価を行う
業務ステップ
5.設計審査
主管部門
5.設計部
関係部門
5.企画室
開発部
生産技術部
品質保証部
営業部
主管部門の役割
5.試作品の性能評価結果をまとめ,
① 顧客のニーズに適合しているか
② 量産は可能か
③ コストパフォーマンスは
の3点について審査を行う
業務ステップ
6.製品仕様書制定
主管部門
6.設計部
関係部門
(空白)
主管部門の役割
6.設計審査結果を反映させた製品仕様書を正式に制定する
業務ステップ
7.量産設計
主管部門
7.設計部
関係部門
7.技術部
品質保証部
製造部
主管部門の役割
7.正式に制定された製品仕様書に基づき量産図面を設計して制定・配布する。これを受けて,次の部門でそれぞれ標準書を制定する。
技術部:技術標準
品質保証部:部品受入検査標準
製品出荷検査標準
製造部:作業指示書
業務ステップ
8.量産試作評価
主管部門
8.技術部
8.設計部
品質保証部
製造部
主管部門の役割
8.量産設計に基づき量産試作を行い,設計部,品質保証部,製造部と共同でその評価を実施する。
業務ステップ
9.量産認定
主管部門
9.技術部
関係部門
9.設計部
品質保証部
生産管理部
購買部
製造部
主管部門の役割
9.量産試作評価に基づき関係部門と協議の上,技術部長が量産認定の決定を下す。以降,生産管理部の生産計画に従って購買部,製造部において量産を推進する
4.4.2 設計及び開発の計画
☆設計計画の制定について記述する。
- 設計計画は設計部長が,企画室の制定する新商品推進計画に基づき年間計画として事業年度当初に制定する。
- 設計計画には,新商品である製品の特性ごとに活動テーマ,担当,スケジュールが含まれ,開発部長と技術部長の合議を必要とする。
- 設計部長は技術部長と協議の上,設計計画に基づいて新製品商品化計画を制定して,関係部門に連絡する。
☆設計のテーマに的確な人の割当てについて記述する。
- 設計計画に制定された活動テーマには,そのテーマを推進するにふさわしい力量のある設計担当者を割り当てる。
- テーマにふさわしい力量は,設計課長が教育訓練標準(KHR103)に定められた資格能力から見て判断する。
品質マニュアル
4.4.3 組織上及び技術上のインタフェース
☆特に技術部,製造部,品質保証部との相互関連について記述する。
- 技術部との相互関連:設計活動は設計部のリーダーシップのもと技術部と協働して推進される。設計部は,製品企画書制定,製品仕様書制定,設計,設計試作を担当する。技術部は技術標準書制定(加工図面,整備仕様書など),量産試作を担当する。
- 製造部との相互関連:設計部は,新製品の設計を推進するにあたり,過去の類似製品の問題点を製造部と協働して拾い上げる。
- 品質保証部との相互関連:品質保証部は,新製品の市場における安全性,法規対応を調査し,設計部にレポートする。また製品仕様書,技術標準書に基づき部品受入検査標準(KQM107),工程内検査標準(KQM108),製品出荷検査標準(KQM109)を制定する。
4.4.4 設計へのインプット
☆設計にインプットする事項は明確に記述する。
設計へのインプットは次のものである。
- ① 性能特性。たとえば環境条件,使用条件,信頼性など。
- ② 官能特性。たとえばスタイル,色,味,匂いなど。
- ③ 据付特性。たとえば大きさ,重さ,取扱いやすさなど。
- ④ 法的規制。
- ⑤ その他。
①~③については設計部が企画室,開発部と協働して製品企画書にまとめる。
④は品質保証部が製品企画書に基づき調査を行い,設計部にレポートする。
4.4.5 設計からのアウトプット
☆設計からのアウトプットする事項を明確に記述する。
設計からのアウトプットは次のものである。
- ① 製品仕様書。
- ② 設計図面(試作図面,量産図面)。
- ③ 設計計算書。
- ④ 試作品。
品質マニュアル
4.4.6 設計審査
☆設計審査の実施について記述する。
設計審査は次の4段階の設計過程で実施する。
- ① DR1:構想設計審査。
- ② DR2:試作設計審査。
- ③ DR3:量産試作設計審査。
- ④ DR4:量産移行審査。
設計審査の要素として次のものを審査する。
- ① 顧客ニーズと製品仕様書との比較。
- ② 試作品。
- ③ 使用条件,環境条件。
- ④ 誤用への配慮。
- ⑤ 安全性。
- ⑥ 法的規制,国家・国際規格。
- ⑦ 競合する設計との比較。
- ⑧ 過去の問題の解析。
- ⑨ 信頼性,サービス性,保全性。
- ⑩ 公差,工程能力。
- ⑪ 合否判定基準。
- ⑫ 据付性,組立性,廃棄性。
- ⑬ 故障影響緩和。
- ⑭ 外観。
- ⑮ 故障モード影響解析。
- ⑯ ラベル,警告,識別,トレーサビリティ,取扱説明書。
- ⑰ 作りやすさ,機械化,自動化。
- ⑱ 検査および試験。
- ⑲ 材料構成部品。
- ⑳ 包装,取扱い,保存,保管。
設計審査の主催責任部門,参加部門,および運営の手順は設計審査標準(KDR 105)による。