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平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第23回
このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。
品質マニュアル
4.10 検査・試験
4.10.1 一般
☆製品の全工程を通じての検査,試験の手順の文書化について一般事項を記述する。
4.10.2 購入検査・試験
☆受入製品の検査及び試験について記述する。
4.10.2.1
- 品質保証部は購買要求書発行標準(KBJ101)によって外部から購入した製品(部品,サブ組立ユニット,市販品など)の購入検査を部品受入検査標準(KQM107)に基づいて実施する。
- 外部から購入した製品は,受入検査が終了するまで製造工程には投入しない。
4.10.2.2
受入検査および試験は,検査実績,下請負契約者工程管理,製造工程品質実績などから判断して無検査に移行できる。この無検査移行への判定は品質保証部が行う。
4.10.2.3
生産管理部は,緊急に製造するためにやむなく製造部へ製品を投入する場合は,その部品名,コードナンバー,ロットナンバーを明確に記録してから製造部に製品を移行する。
この場合,品質保証部では並行検査を行い,不合格の場合には直ちに回収の手続きをとる
4.10.3 工程内の検査・試験
☆工程内の検査,試験について記述する。
- 製造部は,工程品質管理標準(KPT101)に基づき工程内の検査,試験を実施する。
- 製造部は,定められた工程内検査が終了するまで製品を後工程に流動させない。
- 工程内で発見された不適合品は,その不良内容を「工程流動票」に明示の上,確実に隔離をし,記録として残す。
☆関係標準書名と登録番号を記載する。
購買要求書発行標準 KBJ 101
部品受入検査標準 KQM 107
工程品質管理標準 KPT 101
品質マニュアル
4.10.4 最終検査・試験
☆工程内の最終検査,試験について記述する。
- 製造部は,製造工程の最後に位置する完成品検査を“最終検査・試験”と位置付け,品質保証部制定の製品出荷検査標準(KQM 109)に基づいた全数検査を行う。
- 製造部は,最終検査,試験が終了するまで製品を後工程に流動させない。
- 最終検査で発見された不適合品は「工程流動票」に明記の上,現品に識別表示をして,隔離する。
- 品質保証部は,製造部とは独立して製品の出荷検査を行う。
これは製品出荷検査標準(KQM 109)に基づくもので,抜取検査である。 - 出荷検査は全ロットを対象とするが,検査実績によって,製造部の実施した最終検査のデータを監査する監査検査へと移行することができる。この決定は品質保証部が行う。
- 出荷検査終了後,品質保証担当課長またはその代理者が出荷可否の判定を行う。
4.10.5 検査・試験の記録
☆受入検査,工程内検査,最終検査の記録について言記述する。
- 購入検査結果は,部品受入検査標準(KQM 107)に定められた「購入検査結果表」に記録し,品質保証部が3年間,保管する。
- 工程内検査結果は,作業指示書制定標準(KPT 102)に定められた「工程流動表集計票」に集計記録し,製造部が3年間,保管する。
- 最終検査結果は,製品出荷検査標準(KQM 109)に定められた「工程流動表集計票」に集計記録し,製造部が3年間,保管する。
出荷検査結果は,製品出荷検査標準(KQM 109)に定められた「出荷検査結果表」に記録し,品質保証部が3年間,保管する。 - これら品質記録の保管は,品質記録管理標準(KQM 105)に従うものとする。
☆検査責任者を明確にしておく。
- 品質保証部は,購入検査における検査担当者,検査責任者(課長または代行者)の名前を「購入検査記録表」に記入する。
- 製造部は,工程内検査,最終検査における検査担当者,検査責任者(課長または代行者)の名前を「工程流動表」に記入する。
- 品質保証部は,出荷検査における検査担当者,検査責任者(課長または代行者)の名前を「合格証」に記入する。
☆関係標準書名と登録番号を記載する。
製品監査標準 KQM 116
製品出荷検査標準 KQM 109
部品受入検査標準 KQM 107
作業指示書制定標準 KPT 102
品質記録管理標準 KQM 105
品質マニュアル
4.11 検査,測定および試験装置の管理
4.11.1 一般
☆検査,測定および試験の装置の管理について一般事項を記述する。
- 検査,測定および試験の装置(以下,計測器類と呼ぶ)の定義
B事業部が管理対象とする計測器類は次のものである。 - ① 製造工程で用いられるすべての計測器類。
- ② 購入検査,出荷検査で用いられるすべての計測器類。
- ③ 設計,技術で用いられる評価用計測器類。
- ④ 開発で用いられている指定された計測器類。
- 以上の計測器類には,リース品,OEM客先からの借用品が含まれる。
- 計測器類の管理台帳
- ① 寿命または老朽化のために廃却される計測器類は,使用部門の管理台帳から抹消される。
- ② 品質保証部は,計測器類の総合管理部門としてB事業部管轄の「計測器類総合台帳」を管理する。
- ③ 「総合管理台帳」には,使用部門ごとに計測器類管理責任者が登録されている。
- ④ 使用部門管理責任者は,計測器類の員数,校正管理を行う。
- 試験用ソフトウェア
試験用ソフトウェアを検査の手段として使用する場合は管理標準に従って行う。
また,試験用ハードウェアも含めて,使用前,規定の期間ごとに再点検する。
4.11.2 管理手順
☆計測器類の選定,登録,トレーサビリティ,識別表示,校正,点検,校正不良,取扱い,試験用ソフトウェアなどについて記述する。
- 計測器類の選定および登録
- ① 計測器類の選定は,開発部長,設計部長,技術部長,品質保証部長が,使用目的,仕様,適合性を審査し,決定する。
- ② 技術部が事務局として,使用部門からの申請書の受付けをする。申請書は,選定後,登録のため,品質保証部に回付される。
- ③ 使用部門は,計測器類選定後,直ちに管理台帳に登録する。
- トレーサビリティ,識別表示
- ① B事業部管理対象のすべての計測器類は,定められた周期(間隔)で校正される。
個々の計測器類には計測器類管理ラベルが貼付され,識別表示を行う。 - ② 校正に用いられる標準器は,国家標準につながることが証明できる標準器でなければならない。
- ③ 社外に校正を依頼する場合は,国家標準につながるトレーサビリティを証明できる機関に委託する。
- ④ 品質保証部は,国家標準につながらない計測器については,校正の根拠を文書で明確にしておく。
- ① B事業部管理対象のすべての計測器類は,定められた周期(間隔)で校正される。
- 校正,点検
- ① 計測器類の校正の周期は,計測器ごとにその使用目的,使用頻度,精度によってそれぞれ定められるが,1年を超えないものとする。
- ② 社内の校正担当者は,基準に基づく有資格者とする。
- ③ 品質保証部は,計測器ごとに校正手順書を制定して(計測器類校正標準KQM118)合否の判定をする。
- ④ 校正記録は,品質保証部が原本を保管し,コピーを使用部門が保管する。
- ⑤ 校正後は,次の校正まで計測器類の校正設定箇所(ダイヤル,つまみ類)をカバーなどによって保護し,誤って調整されないようにする。
- 校正不良
- ① 計測器類の処置:使用部門の管理責任者は,直ちに該当計測器類の使用を中止し,「計測器類異常処理票」に記録する。
- ② 製品の処置:
- a) 使用部門の管理責任者は,当該計測器類の過去の校正記録を調査し,その計測器類によって測定された製品の対象範囲をロット番号によって特定する。
- b) 品質保証担当課長は,対象となる製品への処置を決定する。
- c) これらの処置は「計測器類異常処理票」に記録される。
- ③ 品質保証部は「計測器類異常処理票」を3年間,保管する。
- 計測器類の取扱い
- ① 計測器類の校正,検査,測定および試験における環境条件は,計測器類管理標準(KQM117)に従う。
- ② 計測器類の使用環境は,計測器個々の動作保証範囲内とする。
- ③ 計測器類の保管は,防錆,防塵などの必要精度維持の対策を施して行う。
☆関係標準名と登録番号を記載する。
開発計測器管理標準 KDP 101
計測器類選定標準 KTM 108
計測器類管理標準 KQM 117
計測器類校正標準 KQM 118
品質マニュアル
4.12 検査・試験の状態
☆製品の良・不良の識別について,製造の全段階において,どのように行うかを記述する。
- 部品倉庫における製品の検査および試験の状態の識別(以下,識別という)生産管理部(倉庫)は,取引先から搬入された製品について,納入伝票によりロットごとに検査必要と無 検査の区分をし,現品にその表示をするとともにコンピュータに入力する。
- 購入検査における識別
- ① 現品の検査前のロットと検査後のロットは,現品に表示するとともに,保管場所により識別する。
- ② 現品の検査中のロットは,検査前のロットと同じ場所に保管されるが「検査中」の表示により識別される。
- ③ 検査後のロットで合格品は検査部門が「合格証」を発行し,倉庫部門ではその合格証を現品に検査サンプルとともに添付して,良品置き場に保管する。
- ④ 検査後のロットで不合格品は,検査部門が「不合格証」を発行し,倉庫部門では不合格証を現品に検査サンプルとともに添付して,不良品置き場に保管する。
- ⑤ 生産管理部は,その結果をコンピュータに入力する。
- 製造工程における識別(最終検査を含む)
- ① 製造部は,工程外に存在する製品には「良品」「不適合品」の荷札(タグ)を添付して識別する。
- ② 製造部は,不適合品に「品質不良票」を添付して生産管理部へ返品する。
- 出荷検査における識別
- ① 検査前のロットと検査後のロットは,現品に表示するとともに保管場所により識別する。
- ② 検査中のロットは,検査前のロットと同じ場所に保管されるが,「検査中」の表示により識別される。
- ③ 検査後のロットで合格品は検査部門が「合格証」を発行し,倉庫部門ではその合格証を現品に検査サンプルとともに添付して,良品置き場に保管する。
- ④ 検査後のロットで不合格品は,検査部門が「不合格証」を発行し,製造部に検査サンプルとともに返品される。
- 製品倉庫での識別
- ① 生産管理部(倉庫)は,出荷検査で合格になったロットのみを入庫する。
- ② 出荷検査が監査検査に移行した場合は,品質保証担当課長か,その代行者が送品可能と判断したロットのみを入庫する。
☆関係標準書名と登録番号を記載する。
製品識別管理標準 KQM 119
品質マニュアル
4.13 不適合晶の管理
4.13.1 一般
☆不適合品が工程内で使用されたり,顧客のもとに出荷されたりしないよう防止する手順を記述する。
- 製造部,品質保証部は,不適合品を識別し,隔離する。
- 製造部,品質保証部は,定められた標準,購入製品特別採用処理標準(KBJ 105)および製品特別採用処理標準(KQM 120)にしたがって不適合品の処置ならびに関係者への報告を実施する。
4.13.2 不適合品の内容確認及び処置
☆不適合品の処置と再検査,記録について記述する。
- 不適合購入製品の処置について
- ① 再加工の場合:購買部は,不適合購入製品に「品質不良票」を添付して,再加工のため購入先に返品する。
- ② 特別採用の場合:購買部は,不適合購入製品の購入先に「特別採用申請書」を提出させる。
- ③ 不採用,廃棄の場合:購買部は,不適合購入製品に「品質不良票」と「返品票」を添付して購入先に返品する。
- 不適合品の処置について
- ① 再加工の場合:製造部は技術部と協議の上,再加工内容を決め,処置をする。
- ② 特別採用の場合:製造部は,標準に基づき品質保証部に「製品特別採用申請書」を提出し,品質保証担当課長は,特別採用の可否を決定する。
- ③ 不採用,廃棄の場合:製造部は,生産管理部に「製品廃棄申請書」を提出し,生産管理担当課長は,廃棄の可否を決定する。
- 再検査の実施
- ① 不適合購入品が再加工後に再納入されてきた場合,品質保証部は購入検査を実施する。
- ② 不適合製品が再加工後,最終検査が終了した場合,品質保証部は出荷検査を再度行う。
- 記録の保管
- ① 購買部は,購入製品の特別採用処理結果の記録を5年間,保管する。
- ② 品質保証部は,製品の特別採用処理結果の記録を5年間,保管する。
☆関係標準書名と登録番号を記載する。
購入製品特別採用処理標準 KBJ 105
製品特別採用処理標準 KQM120