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平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第26回
このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。
条項4.2 品質システム
品質システムを,特に品質マニュアルと品質計画書について述べている。
4.2.1 一般
- 会社は,その製品を品質要求事項に適合させるための手段として,文書化した品質システムを確立し,維持する。
- この文書化された品質システムは,JIS Z 9901;1994(ISO9001;1994)にそって作成さ れた品質マニュアルの形となっており,品質管理部長の管理下におかれている。
- この品質マニュアルは,次のことを実施する意図で作られている。
- 1)社内全従業員への品質の委託。
- 2)監査を実施するため。
- 3)活用による品質経験の向上。
- 4)顧客と経営が特定している品質レベルの達成。
- 5)標準書,手段・方法,規格のスムーズな変更管理。
- 6)従業員教育訓練の有効な実施。
- 7)品質が十分に確保されているという顧客または外部機関からの認証。
- 品質マニュアルだけでは品質システムを説明するのに十分ではない。会社ではこの品質マニュアルを補強する「サポート文書」類を発行している。
サポート文書類
作業標準書標準 QM 0201
計測器構成標準 QM 0806
工程管理標 QM 0501
教育訓練標準 QM 0102
品質書管理標準 QM 0807
仕様書管理標準 QM 0601
技術図面管理標準 QM 0701
4.2.2 品質システムの手順
1. 会社の業務フロー(生産工程)を下記に示す。
工程 | 主管部門 | 備考 |
1)引合い | 営業部 | |
2)見積り | 生産管理部(技術部) | |
3)受注・契約 | 営業部 | |
4)出図依頼 | 生産管理部(技術部) | |
5)設計・出図 | 設計部 | |
6)手配 | 生産管理部 | |
7)発注・調達 | 技術部 | |
8)製造 | 工場 | |
9)製造検査 | 工場 | |
10)出荷検査 | 品質管理部 | |
11)梱包・出荷 | 工場 | |
12)サービス | 品質管理部 |
2. 顧客の要求事項および品質方針に合致した手順を作成し,実行する。
3. 文書化した品質システムを効果的に実行する。
- 1) 活動をする要員の技能,教育訓練の程度によって文書化の程度を決める。
- 2) 品質マニュアルと各種標準書に従って標準的な作業が行われる。
- 3) 各部門における業務の進め方の詳細は,各部門の作業標準書に従うものとする。
4.2.3 品質計画
- 会社は,顧客の品質に対する要求事項を満たすために,またはプロジェクトごとに会社の業務が品質システムの要求事項に適合したやり方になるように,必要に応じて「品質計画書」を作成する。
なお,品質計画書に規定されたもの以外は各種標準書に従うものとする。 - 品質管理部長は次の判断を行う。
- 1) 新規プロジェクトにおいて,新しい生産フローや新規材料調達,OEM発注などが新たに必要になる場合,または各種標準書のみの活用では品質の確保に不安がある場合は「品質計画書」を作成する。
- 2) 開発プロジェクトの品質要素が,品質マニュアルまたは各種標準書の標準的なフローにより十分確保できるならば「品質計画書」は作成しない。
- 品質管理部は,品質計画書の作成にあたっては,以下の要領にそって実行し,新製品プロジェクトなどに対して規定要求事項を満たすよう万全を期す。
- 品質計画書の作成要領は次の通りである。
- 1)何が新しい要素なのかを明確にする。
- 2)達成すべき要求項目,品質目標を定める。
- 3)要求事項を達成するために必要なすべての設計,製造工程,付帯サービス,検査と験の手順と関連文書を確認する。
- 4)上記各段階での責任と権限を割り当てる。
- 5)すべての管理手段,工程,設備機械,検査装置,治工具,技能を明確にして確保する。
- 6)品質管理や検査と試験の技法は,新しい計測方法の開発を含めて,必要に応じて更新する。
- 7)製品実現化の適切な段階において,適当な検証の手段を明確にする。
- 8)すべての特徴および要求事項は,主観的要素をもつものも含めて,その合否基準を明確にする。
- 9)プロジェクトの変更につれて必要となる品質計画書の変更と修正の方法を明確にしておく。
- 10)品質記録の収集,保管および責任部署を定める。
サポート文書類
品質計画書標準 QM 0807
条項4.3 契約内容の確認
“契約内容の確認”についてポイントを述べている。
4.3.1 一般
- 営業部は,顧客との商談に基づき「打合議事録」を作成し,これを基に社内外に対し適切に情報提供を行う。
- 契約の中身に問題がある場合は,営業部と関係部門とが一体となって対応策を協議し,顧客と調整する。
- 契約内容の確認は,まず顧客の要求内容を明確にし,どのように社内の能力を発揮すれば顧客の要求内容に対応できるかを関係者で調整する。
4.3.2 内容の確認
1.会社は,各契約内容を確認して,次の事項を確実に行う。
- 1)要求事項は適切に定められ,文書化されていること。
- 2)見積仕様書と異なる要求事項は,すべて解決されていること。
- 3)会社は,契約上の要求事項を満たす能力を保有していること。
4.3.3 契約内容の修正
- 契約内容の修正がある場合は,定められた手順に従って社内の関係部署へ連絡を徹底する。
- 営業部は社内調整後,顧客との打合議事録を作成し,契約稟議書を再発行する。
4.3.4 記録
- 契約の実施,変更,確認にともなう記録は,営業部が定められた期間保管する。
- 保管期間については,契約上または法令條定めがある場合には,その定めに従う。
サポート文書類
契約見直し標準 QM 0301
条項4.4 設計管理
製品設計の実務にまで入り込んだ若干専門的な説目をしている。
ここでは係のレベルまでの組織図を提示して説明している。
4.4.1 一般
- 会社は,製品の設計を管理・検証する手段を設定し,維持する。
製品品質確保の第1の方法は,製造前の設計の段階で品質を十分に作り込んでおくことである。 - この目的のために会社の設計部門は,顧客の要求事項を実際の設計,仕様書に翻訳し,製造,試験,メンテナンス,サービス部門のそれぞれが具体的に活動できるよう,技術的また経済的に適切な基準を提示する。
- 該当するすべての安全基準に適合しなければならない。
- 設計部門が作成する仕様書は,明確に記載され,十分に文書化される。
これらに引き続く文書類のすべての改訂は,設計部門の責任で実施され,必要と思われる場合には,顧客の承認を受ける。
4.4.2 設計及び開発の計画
- 設計/開発計画書の立案
- 1) 顧客の要求事項は,営業部から設計部に文書で伝えられる。新材料など品質に関しての新しい要素を要求される場合は,品質管理部と相談して品質計画書を作成するかどうか協議する。
- 2) 顧客からの要求事項に基づき設計/開発計画書を作成する。
設計/開発計画書には,- ① 仕様書の作成,それに基づく材料・部品の購買,試作品の製作,試験と報告,製造などの管理ポイントを定める。
- ② 設計部門がその業務を遂行する上で調査・チェックしなくてはならない管理ポイントを示す。
- 3)設計部長は設計/開発計画書の立案に責任を持ち,制定前に社長の承認を受ける。
- 4)設計部は設計の進展に応じて計画書を更新する。
- 新製品設計/開発の割当て
- 1)新製品の設計/開発業務は,業務ステップごとに分割され,それぞれの難易度に応じて設計担当者に割り振られる。
- 2)設計部長は,設計担当者の力量をその経験年数,職務歴から判断する。
設計担当者の経験年数,職務歴は通常,その職務資格と連動している。
サポート文書類
設計計画標準 QM 0602
4.4.3 組織上及び技術上のインタフェース
- 設計部は,新製品の設計/開発を推進するに際して,工場,生産管理部,購買部,技術部,品質管理部などの関係部門を,設計/開発過程の必要に応じて会議に招集する。
- 設計部が招集する会議では,新製品開発に関する計画の是非,設計過程中に生ずる諸問題などについて調整を行う。
必要な情報は文書(議事録など)に記録し,定められた期間保管する。 - 設計部は,新製品の設計を推進するにあたり,設計のさまざまな段階で過去の類似製品の問題点を技術部および品質管理部と協議して対策を検討する。
4.4.4 設計へのインプット
- 設計におけるインプット事項は次の通りである。
- 1)安全規格
- ① 安全に関しての要求事項は極めて重要であり,これらはJIS規格および国際安全規格に設計の基準となる規格を定めている。
- ② 既に設計済みの事例を参考に,新製品の安全への検証を実施し,今までの事例からの欠陥データなどのフィードバックに特別の注意を払う。
- 2)顧客の要求事項
- ① 出力値。
- ② 入力値。
- ③ 個々の電圧と電流値。
- ④ 許容温度差。
- ⑤ 許容規定値。
- ⑥ 稼働周波数と変動値。
- ⑦ 負荷サイクル。
- ⑧ 負荷の種類。
- 3)文献
- ① 設計データシート,機械・電気特性のカタログ。
- ② 設計理論論文集。
- ③ 専門ジャーナル紙。
- ④ JIS規格。
- ⑤ 現流設計図。
- インプット事項に矛盾が生じた場合には,4.4.3“組織上及び技術上の相互関連”における会議において調整する。
- 契約内容の見直しがあった場合には設計へのインプットの見直しも実施する。
4.4.5 設計からのアウトプット
- 設計部は,設計からのアウトプットについて以下の要件を満たし,文書にして検証できるようにする。
- 1)設計に入力された要求事項(インプット項目)を満たしていること。
- 2)合否判定の基準を明示するか,または引用していること。
- 3)設計が安全かつ適切に機能するために必要な設計上の特性(たとえば作動・保管・取扱い・保守などの要求事項)を明確にしていること。
- 4)発行前の設計のアウトプット文書の見直しを含んでいること。
- 発行前の設計のアウトプット文書の主なものは次の通りである。
- ① 製品仕様書,性能仕様書。
- ② 設計図面(部品図,組立図,木型用図面,電気図面など)。
- ③ 部品リスト(部品表,手配リストなど)。
- ④ 設計計算書。
- ⑤ 説明書(取扱説明書,保守説明書,パーツリスト原紙など)。
- ⑥ サービスブリテン(サービス手順書など)。
- ⑦ 設計通知書。
- ⑧ 設計関係書類(設計/開発計画書,出図日程表など)。
4.4.6 デザイン・レビュー(設計審査)
- 設計部は,設計の適切な段階において,設計結果を書類に基づき関係者で評価する設計審査を計画し,実施する。
- それぞれの設計審査には,審査される設計段階に関係するすべての部門の代表者が参加する。必要な場合には,その他の専門家も参加する。
設計審査の記録は設計部で保管する。 - 設計審査は,次の段階ごとに実施し,記録する。
- 1) 製品企画段階:計画を取り上げるかどうか,修正するかどうか。
- 2) 基本設計段階:基本設計の結果は顧客仕様・特性を満たしているか。
- 3) 試作設計段階:試作設計の結果は顧客の要求事項を満たしているか。
- 4) 量産設計段階:量産設計の結果は顧客の要求事項を満たしているか。アウトプットはインプットに一致しているか。
サポート文書類
設計審査標準 QM0603