平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第27回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

4.4.7 設計検証

  1. 設計部は,設計の適切な段階において設計検証を行い,設計アウトプットが期待通りになっているかどうかのチェックを行う。
    設計検証の結果は,設計部で記録し保管する。
  2. 設計検証は次の手順で行う。
    • 1)類似設計図面との比較を行い,設計計算の理論検証を行う。
      • ① 過去の実験データを新規設計に活用する。
      • ② ユニットごとの部分的試作実験を活用する。
    • 2)試作品を製作し評価する。
    • 3)別法による計算,寸法および公差などの検図を行う。

4.4.8 設計の妥当性確認

  1. 設計部は,製品がユーザーのニーズおよび要求事項に適合していることを確認するため,製品を用いて設計の妥当性確認のための製品実用試験を行う。
  2. 設計妥当性確認のための製品実用試験は次の方法で実施し,その状況は記録する。
    • 1)設計部は,量産品の初回品を用いて製品実用試験を行う。
      実施する台数は設計部が決める。
    • 2)設計部は製品実用試験のための運転条件を決める。
      • ① 国内顧客が使用すると思われる通常の規定条件。
      • ② 海外顧客が使用すると思われる通常の規定条件。
      • ③ 顧客が意図するしないにかかわらず,さまざまな用途が考えられる場合はその条件下。
  3. 確認にあたっては明確に規定された動作条件を守って実施し,客観的証拠を残す。

サポート文書類
設計妥当性確認標準 QM0604

4.4.9 設計変更

  1. 設計部は,次の場合に設計変更を実施する。
    • 1)当社の理由によるもの。
      • ① 原価低減,工数低減,性能改善,仕様変更によるもの。
      • ② クレーム,不良対策によるもの。
      • ③ その他。
    • 2)顧客の要望によるもの。
      • ① 仕様変更によるもの。
      • ② クレーム,不良対策によるもの。
  2. 設計者は,設計変更の内容を設計変更通知書に明記し,設計図,部品表を添えて上司に提出する。
  3. 確認者(上司)は,次のことを確認の上,変更内容を検図・照査する。
    • 1)設計変更理由は明確になっているか。
    • 2)設計変更方法は適切か。
    • 3)設計変更が与える影響は検討されているか。
    • 4)設計変更通知の配布先は適切か。
  4. 設計承認者は,変更内容の妥当性を確認の上,承認する。
  5. 設計部は設計変更の記録を保管する。
  6. 生産管理部は,在庫品の調整および変更の実施時期を決定する。

サポート文書類
設計変更標準 QM 0605

条項4.5 文書及びデータの管理
文書には,電子情報媒体も含むとし,全体の体系を群述している。

4.5.1 一般

  1. 会社は,品質システムが効果的に機能するために必要な文書が各部門において適切に利用できることを目的として,文書および記録の作成・承認,取扱い,整理全般についての手順を設定し,管理する。
  2. 文書の管理,取扱いには,フロッピーディスクなどの電子情報媒体も含む。
  3.   品質システムに関する品質文書およびデータとは,以下のものをいう。

    • 1)全社管理文書:品質管理部で管理する文書。
      • ① 標準類。
      • ② 品質マニュアル。
      • ③ 業務マニュアル(品質システムの標準的実行手順を明確にしたもの)。
      • ④ 品質にかかわる規程類。
    • 2)部門管理文書:各担当部門で管理を行う文書。
      • ① 規格類(規格,判断基準など業務の具体的な基準を明確にしたもの)。
      • ② 標準類(作業標準書,手順書,要領書など業務の具体的な手順を明確にしたもの)。
      • ③ 品質データ(作業指示書,図面,部品表,仕様書,記録など。フロッピーディスクなどの電子情報媒体を含む)。
      • ④ 管理台帳類(文書を管理するために必要な台帳など)。

4.5.2 文書及びデータの承認及び発行

  1. 会社は,JIS Z9901;1994(ISO 9001;1994)の要求事項に関連するすべての文書およびデータの承認および発行を管理する手順を設定し,維持する。
    発行部門は,品質システムにかかわる各部門の管理書類を管理台帳を作り,登録,管理する。
  2. これらの文書は,その発行に先立ち,権限を与えられた者が,その適切性について審査し,承認する。
  3. この管理には次の事項を含む。
    • 1)最新の版が部門において利用できているか。
    • 2)廃止された文書は速やかにすべての部門から撤去されているか。
    • 3)管理文書には「管理版」または「コントロール」を明示する。
      管理しない文書は,必要時に「非管理版」または「アンコントロール」を明示する。特に廃止されたが保存を目的に持ち続ける文書にはこの識別を明確にする。

4.5.3 文書及びデータの変更

  1. 最初に審査および承認をした同一機能・組織は,すべての文書の変更について審査し,承認する。大きな変更については「仕様書/設計図/手順書変更要求」によって指示される。
  2. 文書変更を担当する組織は変更指示書を発行する。
  3. 文書変更を担当する組織は,すべての変更に先立ち,それぞれ固有の認識番号をつけ,変更指示書を発行し,管理台帳に登録,記録する。
  4. 担当する機能・組織はすべての変更について,その変更理由を記録する。
  5. 文書変更を担当する組織は,廃止または変更された管理文書を回収する。

管理下にある文書類

  • ① 品質マニュアル。
  • ② 標準書。
  • ③ JIS規格(IEC規格)。
  • ④ 製造・工程仕様書。
  • ⑤ 技術図面。
  • ⑥ 認定仕様書/証明書。
  • ⑦ 変更指示書。
  • ⑧ 特別採用書。
  • ⑨ 顧客図面。

サポート文書類
特別採用標準    QM 0702
変更指示書標準   QM 0606
仕様書管理標準   QM 0601
技術図面管理標準  QM 0701
品質マニュアル標準 QM 0808
文書管理標準    QM 0103

条項4.6 購買
外部から調達する部品,材料,外部へ発注する仕事はすべてこの条項で扱っている。

4.6.1 一般

  1. 会社の製品品質の多くの部分は外注会社の品質によっており,会社の品質システム維持のためには,これらの外注会社の選択と管理が非常に重要である。
  2. 会社は次の製品をこの条項で扱う購買品と定義する。
    • 1) 部品,たとえば電子部品。
    • 2) 主資材,たとえば製品の主要材料(基板)。
    • 3) 副資材,たとえば油,塗料,雑品(ボルト,ナット類)。
    • 4) 外注加工製品,たとえばサブアッセンブル。
      詳細は購買管理標準による。
  3. 購買品の品質は,会社の品質システムに不可欠である。
       会社は,購買品が会社の品質要求事項に適合していることを確認できるまでは使用しない。

4.6.2 下請負契約者の評価

  1. 購買部長はすべての外注会社の活用に関しての承認の責任を有する。
  2. 品質管理部長はすべての外注会社の評価に関しての責任を有する。
  3. 会社の承認したすべての外注会社は「承認外注会社一覧」に記録,登録される。
  4. 購買部は購買管理標準と外注会社評価標準を基本に購買品を管理する。
  5. 品質管理部長および購買部長は,外注会社を最初に活用する場合には,会社品質規格に適合する能力を有しているかどうかを評価するために,外注会社へ担当者を派遣して,評価することを基本とする。
  6. 外注会社が会社の基準に合致した場合は,購買部長の承認のもと,「承認外注会社一覧」の名簿に掲載する。
  7. 外部からの購買品が会社の要求事項に継続して合致しているかどうかは,受入検査標準によって検査・記録され,加えて定期的な訪問によって評価される。
    外注会社の品質が会社の要求事項に適合しない場合には,外注会社評価標準に基づき,公式に通告がなされる。
  8. 外注会社評価標準における主たる評価項目は次のようなものである。
    • ① スペース。
    • ② 環境(整理整頓清潔)。
    • ③ スタッフと監督者。
    • ④ 保管場所(倉庫)。
    • ⑤ 分離場所(倉庫)。
    • ⑥ 品質管理活動,その他。

4.6.3 購買データ

  1. 購買部は外部からの物品の購入に際しては,発注製品を明確に記述した次のようなデータを含む購買文書によって発注する。
    • 1)型式,種類,等級またはその他の明確な識別。
    • 2)表題または他の確実な識別,および適用する版を次のデータについて記載すること。
      仕様書,図面,工程要求事項,検査指示書,その他の関連技術データなど。
      これには製品,手順,工程設備および要員の承認または資格認定に対する要求事項を含むこと。
    • 3)適用される品質システム規格の表題,番号および版。
  2. 購買担当者は,購買文書の規定要求事項が適切かどうかを,文書の発行前に審査して承認すること。
  3. 購買先への発注に際して必要とする文書および処理の方法の詳細については購買管理標準に基づく。
  4. 購買データは審査・承認の証しとして押印後,発注を行う。

4.6.4 購買品の検証
4.6.4.1 下請負契約者先での供給者による検証

  1. 購買部は,外注会社を新規に活用する場合には,取引基本契約書を締結することとし,契約書には「必要な場合には立入調査する」旨の記述を記載する。
  2. 購買部は,必要な場合には,品質管理部の協力を得て,外注会社(下請負契約者)を立入調査する。
    購買部は,外注会社の品質が会社の要求事項に適合しない場合には,外注会社評価標準に基づき,公式に通告を行う.
  3. 購買担当者が購買品を下請負契約者の構内で検証する場合,検証手順および製品の引渡しの方法を購買文書のなかに指定する。

4.6.4.2 下請負契約された製品の顧客による検証

  1. 会社と顧客とのあいだで契約が定められている場合,顧客またはその代理人は,必要があれば外注会社の構内に立入調査することができる。
    また,当社の構内で,外注会社の製品が規定要求事項に適合していることを検証する権利も与えられる。
  2. 会社は,顧客が実施した立入調査の結果を,外注会社が効果的な品質管理を行っているどうかの証拠とはしない。
  3. 会社は,顧客による検証があっても,外注会社への品質管理は計画通り実施し,合格製品を購入するという責任を全うする。

サポート文書類
受入検査標準   QM 0809
購買管理標準   QM 0401
外注会社評価標準 QM 0402
取引基本契約   QM 0403

条項4.7 顧客支給品の管理
顧客の資産である(無償の場合)支給品の管理についてポイントを述べている。

  1. 会社は,顧客が会社に支給する部品について,購買品と同じ受入検査を実施し,合格・不合格結果を記録する。
    紛失,損傷または使用に不適な支給品は記録し,顧客に報告する。
  2. 品質管理部は,顧客による支給品管理標準を設定・維持して,顧客から支給を受けた製品の検査・保管・維持を行う。
  3. 購買部は,顧客より製品,部品,材料などの支給を受ける場合は,特に要求事項がないかぎり,会社の管理手順に従い,部品の確認,保管,保存,取扱いを行い,紛失損傷,劣化が生じないようにする。

サポート文書類
顧客支給品管理標準 QM 0404